物質と反物質とが半々には生じなかったことは、単に「確率的なズレ」と見なしても説明できそうだ。
( ※ 前項の続き。やや専門家向けの話。) ──
物質と反物質とはちょうど半々では生じなかった。このことは、通常、「対称性の破れ」で説明される。
ただ、このこと、単に「確率的なズレ」と見なしても説明できそうだ。
たとえば、コインを投げる。裏と表の確率は、ぴったりと 50%ずつだ。(理論値)
しかし現実には、ぴったりと同数が生じるわけではない。(現実値)
つまり、理論値と現実値とは、同じになるとは限らない。
たとえば、次のようになる。
100 → 51 + 49 (差は 2 )
1000 → 508 + 492 (差は 88 )
10000 → 5072 + 4938 (差は 144 )
このように、現実には、ズレが生じるものだ。たとえ理論値が半々だとしても。
そして、こういうこと(理論値と現実値のズレ)が、宇宙の創生期においても起こった、と考えられる。
そう考えれば、物質と反物質が半々で生じなかったことも、不思議ではない。
──
そもそも、宇宙というものは、ほとんどが空っぽでスカスカなのである。この宇宙では、ほんのごく一部に物質が存在するだけだ。それは、上の数字でいえば、100のうちで 2 だけのズレが生じたようなものだ。
こう考えれば、物質と反物質の量が同じでなくて、わずかにズレが生じたとしても、不思議ではあるまい。もともと理論値と現実値が同じになるはずがないのだ。
( ※ 要するに、「理論値と現実値が同じになる」と考える方がおかしい。それはいわば、「コインを 100回投げれば、表が 50回で裏が 50回になるはずだ。ぴったりそうなるはずだ。51回と49回になるはずがない。理論値はそうならないのだから」と思うような発想だ。……そういうのは、確率というものを根源的に理解していない発想だ。)
[ 付記 ]
念のために言い添えておくと、これは、「CP対称性の破れ」を説明する理屈ではない。「CP対称性の破れ」は、物理現象。一方、本項で述べたのは、ただの数学的な確率論の話。
「CP対称性の破れ」では、非対称性が一定の確率で説明される。一方、本項で述べたことは、理論的な対称性と現実の非対称性とのズレを示す。
「CP対称性の破れ」では、適用範囲は、通常の現象。本項で述べたことでは、適用範囲は、ビッグバンのときのみ。
【 追記 】 ( 2009-03-20 )
改めて考えると、本項は(間違いとは言えないまでも)不足であるようだ。
なるほど、確率的に、バラツキは出るだろう。ただし、それでできたものが物質だけである(反物質がない)ことは、説明がつかない。
確率的なバラツキだけなら、反物質のある銀河系があっていいはずだ。しかし現実には、宇宙はどこもかも物質ばかりである。このことは、本項の説明では足りない。本項以外に、何か別のことが必要だろう。
( ※ 小林・益川理論の両氏によると、CP対称性の破れによっても、反物質がこの宇宙に存在ことは説明できないという。どちらかができることは説明できるかもしれないが、反物質がないことの理由はまったくわからないという。……朝日新聞・朝刊・特集面 2009-03-20 )
《 蛇足 》
以下、仮説。(読まなくてもよい。)
仮説1。
やや局所的には確率的にバラツキが出たあとで、広範な範囲では物質ばかりがつくれるような原理が働いた。
仮説2。
宇宙にはエネルギーがあった。このエネルギーが物質を作る方向に原理を働かせた。(エネルギーがなければ物質も生じなかっただろうが。)
仮説3。
真空には、エネルギーが充ちている。そのエネルギーが、反物質を消滅させる方向に働く。
仮説4。
真空に充ちているエネルギーは、もともと物質を発生しやすくする方向に働くエネルギーである。物質を発生させるためには、エネルギーの量が必要単位に満たないので、局所的に物質を発生させるには不足するが、大局的にはかなり多くのエネルギーがある。だから大局的には、反物質は生じにくい。(もし生じても、真空のエネルギーと相殺されて消滅する。反物質がこの世界に存在できる時間は、真空のエネルギーを吸収するのに必要な時間である。)
この四つ仮説は、すべて成立しそうに思える。
ただし、ここで言う「エネルギー」は、普通の意味のエネルギーとはちょっと違うだろう。というのは、これだと、物質・反物質の消滅がうまく言えないからだ。
はっきりとしたことは、よくわからない。上の仮説は、仮説と言うにも満たないような、ちょっとした思いつきでしかない。宇宙の神秘は、まだまだ謎である。
2008年11月29日
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