2008年11月26日

◆ 太陽光発電とヒトゲノム計画

 太陽光発電のような科学技術に、巨費を投じるべきか? 歴史を見よう。
 ヒトゲノム計画には、かつて莫大な巨費が投じられた。しかし今では、同じことが超少額で可能だ。 ──

 科学技術に巨費を投じることは大切か? これがテーマだ。そして、このテーマのもとで、太陽光発電とヒトゲノム計画を対比しよう。

 今、「太陽光発電に巨費を投じるべし」という意見が世間に出回っている。特に熱心なのは朝日新聞で、ほとんど連日みたいな調子で、「太陽光発電に巨費を投じるべし」という趣旨の記事を掲載している。2008-11-26 の夕刊もそうだ。スペインの太陽光発電の話。
( ※ 同じ趣旨の記事を、前にも書いている。何度も同じことを書くわけ。忘れてしまったのだろうか。痴呆老人並み。 → 10月06日の同趣旨記事

 ──

 さて。朝日はこう書く。
 「スペインのように、太陽光発電を推進するべし。つまり、実際の発電コストの何倍もの値段で、太陽光発電を買い取るべし。そのために、巨費を投入するべし」
 しかし、朝日は一方で、こうも書く。
 「太陽光発電を推進すれば、大量生産の効果で、発電コストは大幅に低下するはずだ」

 これじゃ、自己矛盾だ。次の二つは矛盾する。
  ・ 大幅な補助金投入を続ける
  ・ 大幅なコストダウンが起こるだろう


 説明しよう。
 発電コストが将来的に大幅に低下するのであれば、現在の高コストの太陽光発電を推進するべきではない。もちろん、大幅な高値で長期的(25年)も買い取り保証をする必要はない。
 大幅な高値で長期的(25年)も買い取り保証をする必要があるとしたら、発電コストが将来的に大幅に低下することはないからだ。だったら、「将来は太陽光発電が主流」という主張もまた成立しない。
 結局、上記の二つの主張のうち、一方を取ることはできるが、双方を取ることはできない。双方を取れば、矛盾する。

 ──

 では、正しくは?
 「将来的に発電コストが大幅に低下する」

 ということは、いつかは成立するだろう。それが3年先か、30年先か、100年先かはわからないが、いつかは成立するだろう。
 そして、それは、太陽電池の寿命(20年程度?)よりも、早くなりそうだ。そうだとしたら、今のところは、まだ太陽電池をあまり普及させない方が得策だ。そして、大幅なコストダウンが実現した時点で、そのとき一挙に太陽電池を普及させればいい。……これがベスト。
 要するに、いまだに実用化段階に達していない技術について、無駄に金をかけても仕方がない、ということだ。金をかければ技術が進歩する、と思うのは、浅はかすぎる。

 ──

 同じことは、歴史的に見出される。それは、ヒトゲノム計画だ。(ここでようやく、タイトルの話題に戻る。)
 ヒトゲノム計画とは、次のようなものだった。
  ・ 1990年以降、米国主導で推進。
  ・ 米国の予算は 30億ドルを 15年間で。
  ・ 2000年に概要版ができる。2003年に詳細版ができる。
  ・ 日本のかけた費用は 1264億円

 その一方で、今では同等のことが、ごく小額でできるようになった。というのは、「遺伝子解析装置」というのが急激に進歩したからだ。まるで CPU が急激に進歩するように、「遺伝子解析装置」もまた急激に進歩した。当初の何百倍もの性能のものが、ごく小額で販売されるようになった。性能あたりのコストで言うと、何万分の1以下にコストダウンしたことになる。
 結局、あの当時、世界全体で 5000億円ぐらいをかけたことが、今ではごく少額で実現できることになる。どのくらい少額かというと、下記では 999ドル(10万円)という値が示されている。(1年前の記事。)
    → 23andMe のDNA解析
 ここで計算を示すと、
      5000億円 ÷ 10万円 = 五百万
 である。( Google の電卓機能による → 計算
 つまり、コストは 500万分の1になったわけだ。 5000億円もかけたのは、ほとんど無意味に近かったわけだ。そんなに莫大な金をかけなくても、技術の進歩をちょっと待つだけで、同じことが可能だったわけだ。

 ──

 この点では、コンピュータの分野では、技術者はこれほど馬鹿ではなかった。コンピュータの世界では、「技術は日進月歩」「コストは毎年激減」ということを、誰もが知っていた。だから、その時点での技術において、できる範囲のことをしただけだった。数年先にはできるが、今の時点ではできないことを、あわてて無理やり実現しようとはしなかった。
 
 ただし、である。もし朝日のような連中が主導権を握っていたら、次のように主張しただろう。
 「米国がエニアックを開発した。だから日本も、エニアックと同じものを開発せよ。そのために、超巨額をつぎ込め。ビジコン社と嶋正利の 4004? そんなものはどうでもいい。パソコンなんて、知ったこっちゃない。大切なのは、メインフレームだ。メインフレームこそ将来のコンピュータの王道だ。ここに超巨額をつぎ込め。そのためには、パソコンなんていう技術はすべて捨ててしまえ」

 あるいは、次のように主張しただろう。
 「NEC と 富士通のスパコンは、クレイ社のスパコンとしのぎを削っている。ここで勝利を収める必要がある。だから、世界最高のスパコンで主導権を握るために、ここに国費を大々的に投じよ。スパコン開発のために、1兆円をつぎ込め。そのためには、ソフトもゲームも、すべてつぶしてしまえ。ニンテンドーも何も、そんな下らないものはすべてつぶして、スパコン開発に専念せよ」

 しかしながら、そんなに巨費をかけても、何にもならない。メインフレームもスパコンも、今日ではほとんど消滅同然だ。だいたい、あの当時のスパコンなど、今日のプレステ3と比べても、たいして優れていない。

 とにかく、コンピュータの分野では、技術の進歩は急激であった。だから、
 「ある年だけ、最先端のものをあわてて大量に配備する」
 という方針は取らず、
 「毎年毎年、その時点で最先端のものをいくらか配備する」
 という方針を取った。つまり、当り前の方針を。一点豪華主義でなく、ステップバイステップの方針を。……そしてそれで、ちゃんとうまく行った。

 ──

 ところが、太陽光発電については、そうではない。国中が発狂状態になっている。それは、比喩的に言えば、こうだ。
 「PC 9801 を大量に配備せよ。そのために国中で莫大な巨費を投じて、国民全員に、PC 9801 を一人一台配備せよ。これでコンピュータ立国が可能だ。世界最先端のコンピュータ国家になれる」
 しかし、そんな方針を取っても、技術の進歩に取り残されるだけだ。Windows95時代が来たときには、大量の PC 9801 がゴミになって残るだけだ。

 太陽電池は、確かに、技術の進歩がある。今はともかく、五年後、十年後には、技術の進歩により、画期的に抵抗ストで高能率のものが誕生する可能性がある。
 ただし、その技術は、今のところ開発されていない。なのに、今の時点で、大量の太陽電池を(高コストで)配備すれば、どうなるか? 莫大なコストをかけたあげく、旧式の製品(ゴミみたいなもの)が大量に余るだけだ。それでいて、ゴミを買うためになした借金だけは、大量に残っている。

 ──

 ヒトゲノム計画を思い出そう。
 人類は 5000億円もかける必要はなかった。それによってヒトゲノムの解析は、3〜5年ぐらい早まったようだ。しかし、そんなことの意味は、ほとんど何もない。3〜5年ぐらい遅れたからといって、別に、どうってことはなかったのだ。
 その一方で、 5000億円もかけたことの損失は、明らかにある。どうせ金をかけるならば、新薬開発にでもかけた方が、よほど効果的だった。 5000億円で新薬開発をすれば、どれほど多くの人命が救われたことだろう。百万〜千万の人命が救われたかもしれない。
 逆に言えば、ヒトゲノム計画に 5000億円もかけたせいで、百万〜千万の人命が失われたことになる。
 朝日などが大々的に推奨したヒトゲノム計画の結果は、これなのだ。

 ──

 そして、朝日は今また、同じことをやろうとしている。「太陽光発電」という無駄・無意味なことを推進しようとしている。それでいて、「救急医療や産婦人科医の不足」という点を、ほったらかしにする。(これを推進しているのは朝日でなく読売だ。こちらが正気。朝日は狂気。)

 愚かな科学主義は、国家を破壊し、国民を虐殺する。朝日の推進する「太陽光発電」という方針は、一見、「環境保護」をめざしているように見えるが、現実には「国民虐殺」の方針であるにすぎない。
 それはいわば、ヒトラーの「優生政策」のようなものだ。「ドイツ国民を優秀な民族にしよう」「世界に冠たるドイツを建設しよう」と大々的に主張して、国民の喝采を浴びながら、現実にやったのは、ユダヤ人の虐殺だった。彼らは狂信性ゆえに、善を夢見て、巨悪をなした。
 朝日とヒトラーとは、そっくりさんなのだ。その狂信性を、はっきりと見抜こう。
 彼らはわれわれを、地獄に引き込もうとしている。善なる夢を唱えながら。



 【 参考資料 】

 ヒトゲノム計画について、参考資料を引用する。二件。(読まなくてもよい。)

 (1) Wikipedia 「ヒトゲノム計画」

 このプロジェクトは1990年に米国のエネルギー省と厚生省によって30億ドルの予算が組まれて発足し、15年間での完了が計画されていた。……ゲノムの下書き版(ドラフトとも呼ばれる)を2000年に完成した。……2003年4月14日には完成版が公開された。


 (2) 毎日新聞 報道

《 10年間で1264億円投入 》
 ヒトゲノム計画は1980年代に提案され、米国を中心に国際協力で進められた。日本も90年代初めから参加し、98年にセンターが発足した。生物分野では初めて人材と資金を集中させた大規模研究機関で、10年間で約1264億円が投じられた。
 政府は02年度以降、遺伝子から作られるたんぱく質の立体構造を決めるプロジェクト「タンパク3000」に積極的に予算を計上した。センターを中心に約578億円をつぎこみ、4187個の構造を決定したが、期待されたほど医薬品開発に直結しなかった。成果は見えにくく、再び研究戦略が問われた。
 隅蔵(すみくら)康一・政策研究大学院大学准教授(科学技術政策)は「この分野の基盤は整備され、研究機関にとってゲノム解読装置やデータベースなどは普通のインフラになった。選択と集中の観点から発展的に研究体制を再編するのは妥当ではないか」と受け止める。
 確かに、解読装置の機能向上は著しい。00年ごろにはヒトゲノムを1台で解読するには4年以上かかった。それが今では25〜40日で可能となり、10年にはわずか約2分に短縮される見通しだ。
  毎日新聞 2008年3月23日 東京朝刊。
( → http://ameblo.jp/yanayuh/entry-10084091965.html
posted by 管理人 at 20:04| Comment(1) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
まぁしかし、少しでも読む気になるだけ朝日はマシなのでは。

たとえば、産経などは(略)
Posted by 山田 一郎 at 2008年11月27日 01:06
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