そもそも、ミサイル防衛網という発想は、「矛盾」に満ちている。こちらが「盾」を発達させれば、相手は「矛」を発達させる。これは昔からわかっていたことだ。
では、迎撃ミサイルでは? こちらが相手のミサイルを迎撃しようとすれば、相手はこちらの迎撃ミサイルを迎撃しようとするだろう。これは自明の理。
では、迎撃ミサイルを迎撃するとは? 具体的には、次のようになる。
「攻撃ミサイルを二段式にする。飛行中、頭から2段目を前方に発射する。そこには火薬が入っている。いわば模擬弾だ」
「迎撃ミサイルは、攻撃ミサイルに衝突しようとする。だが、そのときには、攻撃ミサイルは二つに分離しているので、攻撃ミサイルの2段目(模擬弾)のほうに衝突する」
「結果的に、2段目(模擬弾)は破壊されるが、攻撃ミサイルの本体は破壊されない」
《 攻撃発射 》
━ 《 迎撃発射 》
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━ ・

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この話のミソは、二つある:
(1) 簡単
大切なのは、「攻撃側は、相手を攻撃しなくていい」ということだ。普通、戦闘では、相手を攻撃すれば、相手はこちらの攻撃から逃げ回る。弾を撃っても、弾がなかなか当たらない。
しかし迎撃ミサイルは違う。こちらが単純に爆弾を放り投げてやれば、向こうから勝手に衝突してくる。
比喩的に言うと、こちらが地雷を放り投げておくと、敵が勝手におびき寄せられて、あえて地雷を探し出して、その地雷の上に身を放り投げてくれる、というようなものだ。飛んで火にいる夏の虫。
これほどお馬鹿な敵はいない。「ミサイル防衛網の迎撃ミサイル」というのは、史上最もお馬鹿な兵器である。コストは最高値で、効果は最低。勝手に自爆する。
だから、こういうお馬鹿な兵器のために、餌(オトリ)を放り投げてやればいい。
比喩的に言えば、馬鹿な犬に、骨の形をした爆弾を放り投げてやるようなもの。犬は勝手に自爆する。(利口な犬ならば逃げるが、馬鹿な犬はどうしようもない。)
(2) コスト
もう一つ、大切なのは、
「コストが全然違う」
ということだ。
迎撃ミサイルは、ものすごく高度なシステムが必要となる。配備費は1兆円以上。それで守れるのは、ごく一部だけ。日本中を守ろうとするなら、百兆円ぐらいはかかる。それでいて、成功率は5割以下だろう。
攻撃側を二段ミサイルにするのはどうするか?
技術的には、単に二段ロケットにするだけだから、ごく簡単。タダというわけには行かないが、古い技術で簡単に実現できる。百兆円も必要ない。百億円で済むかも。
というわけで、百億円の攻撃で、百兆円の防衛網を、無効化できる。
日本の側から言えば、百兆円かけて防衛網を構築しても、相手のたった百億円のミサイルに、あっさり撃破されてしまう。
馬鹿丸出しとは、このことだ。
( ※ 米国は、ミサイル防衛網を構築して、その代わりに、ビッグ3を解体してしまうのかね。これは、大馬鹿と言うべきか。……仕方ないから、日本を道連れにするつもりだろう。で、馬鹿高い無駄遣いをさせる。日本を破滅させるのは、北朝鮮ではなく、米国だ。テポドンによる損害は 10億円。米国による損害は百兆円。)
[ 付記 ]
じゃ、日本はかわりに、どうすればいいか? 相手の攻撃を黙って受けるしかないのか?
この問題については、何度も述べたとおり。物事の本質を考えればいい。
そもそも、すでに発射されたミサイルを迎撃する、という発想が、根本的に狂っている。最も難度の高い方法を、あえて選ぶ必要はないのだ。
戦いにおいては、敵の最強の部分とまともに張り合おうとするべきではなく、敵の最弱の部分を突く。当り前でしょう。諸葛孔明の知恵。
ここまで考えれば、正解は簡単だ。こうだ。
「ステルス爆撃機で、敵のミサイル基地を撃破する」
これ、現代の常識。
※ 以下はオタク向けの話です。(特に読む必要はありません。)
【 追記 】
読者から、「多弾頭迎撃ミサイル」の情報を得た。
http://obiekt.seesaa.net/article/95471567.html
そこで、これについて、加筆しておく
「日本、多弾頭迎撃体MDシステムの導入決定」
ということだが、単純に数量だけを比較している。その発想の甘さに呆れてしまった。
(1)
相手の模擬弾(デコイ)はほとんどが空っぽである。重量は少ない。
一方、こちらの多弾頭は、すべて弾薬入りである必要がある。
相手が百発の模擬弾を出したとして、そのうちの5発ぐらいだけに爆弾があれば十分。
一方、迎撃側は、すべてに弾薬入りであることが必要だ。仮に、こちらの迎撃ミサイルが模擬弾だったら、出しても何にもならないでしょうが。 (^^);
以上の点で、迎撃側が圧倒的に不利。(ミサイル数が同じ場合。)
( ※ 多弾頭の模擬弾は、電波を反射すればいい。ただの小さなパチンコ玉でも十分。本物の弾頭は、ステルス化すれば、たぶん感知されない。その結果、迎撃ミサイルは模擬弾ばかりを撃墜する。)
(2)
さらに、ミサイル数の違いもある。相手が百発、二百発、五百発、とどんどん増やしていったら、どうか? ミサイルの量産は、そんなに金はかからない。ただの固体ロケットみたいなものだ。そのうち7割ぐらいは、本当に安物のオトリ・ロケットで構わない。途中で墜落することを前提とした粗悪品で、コストは十分の1か百分の1でいい。それでもオトリにはなる。
一方、防御側は大変だ。どれが粗悪品かわからないから、そのすべてに対して高額の迎撃ミサイルを発射する必要がある。相手が単弾頭のオトリ・ロケットだとしても、こちらは多弾頭の超高額なミサイルを発射する必要がある。で、オトリ・ロケットは、途中で燃料不足で、日本海に墜落する。すると、超高額の多弾頭ロケットは、オトリ・ロケットを追いかけて、いっしょに日本海に墜落する。
こういう超高額の多弾頭ロケットを日本中に配備するとしたら、……とんでもない高額になる。国民一人あたり、一千万円の負担? ベンツ一台分ですね。
( ※ 実は、テポドンのすべてが、日本海に墜落する粗悪品かもしれない。一つあたり一千万円ぐらい(?)。それに対して日本は超高性能の迎撃ミサイルを一つあたり十億円ぐらい(?)で配備する。……とすると、発射しなくても、テポドンは日本に莫大な損害を与えていることになる。日本経済を破壊するのは、テポドンではなくて、ミサイル防衛網だ。……だから日米は不況になった? 北朝鮮の作戦成功? 防衛省は北朝鮮の傀儡か? (^^); )
(3)
もっと問題なのは、命中精度だ。
ミサイル迎撃網が、曲がりなりにも半分ぐらいの命中精度を誇れるのは、相手が慣性運動しているからだ。慣性運動している場合には、ニュートン方程式から、進路が寸分の狂いもなく予測できる。
しかし、相手が多弾頭ミサイルになったら、そうは行かない。多弾頭が発散した時点で、もはや慣性運動ではなくなってしまう。となると、当てるのは至難のわざだ。
比喩的に言えば、20メートル先で走っている自動車の運転手に石を投げて当てる、というようなもの。(自動車と石の速度はほぼ同じ。) ……これは、相手が静止していれば、何とかなるが、相手が走っていれば、当てるのは大変だ。動と静で、全然レベルの異なる難しさだ。
要するに、そういう違いがある。
──
ついでだが、「多弾頭ミサイルで、本項のミサイル(= 迎撃ミサイルの迎撃)に対処する」というのは、無理です。
多弾頭ミサイルは、横にひろがるもの。
本項の「迎撃ミサイルの迎撃」は、前後に順序があるもの。防御側からは、攻撃側の本体が見えないんですよ。模擬弾の陰に隠れているから。撃破しようとしても、撃破できない。
可能な方法は、ただ一つ。「迎撃ミサイルの迎撃の迎撃」です。つまり、相手が二重なら、こっちも二重化する。それなら、大丈夫。
つまり、こちらは、まずは模擬弾を破壊する。その次に、模擬弾の奥に隠れている奴を、破壊する。
つまり、「盾と矛」ですね。
ただし、こんなことをどんどんやっていると、防衛側のコストが天文学的にのし上がる。(相手が多弾頭化して、迎撃の迎撃をして、……というふうになると、それに対処してこちらは、累乗的に弾薬量を増やさないといけない。相手のほとんどは空っぽの模擬弾だからだ。)
一方、攻撃側は、単なる多段化だけで済む。50年前の技術を使うだけで間に合う。圧倒的に有利。
※ 模擬弾を使う側は、相手をだます。そのだまし方を見破った時点で、双方は対等になる。そのだまし方を見破れない限りは、防衛側が圧倒的に不利。従って、ミサイル防衛網は、非常に不利。
※ ステルス爆撃機ならば、防衛側が攻撃側を見破れない。ゆえに、攻撃側が圧倒的に有利。
※ 要するに、現代の軍事力では、「だます方が有利」という原則が成立する。「弾薬量が多い方が有利」というのは、時代遅れなのだ。そのことに気づいていない人々が多すぎる。野球のバッターが「腕力の強い方が有利」と思って、変化球を空振りするのと、同じ。三振、アウト。
※ 要するに、戦いにおいて最も有効なのは、知恵なのである。諸葛孔明の知恵に学ぶべし。(今、映画をやっている。)
一方、「金をかければ勝つ」と思うのは無意味。そういう発想は、馬鹿の発想だ。つまり、日米の発想。その典型が、ミサイル防衛網だ。自分で自分の経済を破壊する馬鹿。
馬鹿は、頭を使うかわりに、金を使う。

※ 軍事オタクがうるさそうなので、本項はコメントの受付を停止します。