2008年10月09日

◆ CP対称性の破れ

 CP対称性の破れについて考える。この概念によって、「宇宙には反粒子よりも粒子が多い」ということが説明される。
 しかし、この論議には問題がある。 ──

 CP対称性の破れとは何か? これについて、いろいろと述べる。

 まず、パリティ対称性というものがある。ここでは、粒子における鏡像ふうの対称性が要請される。このことは、多くの場合について成立するのだが、部分的に例外があることが判明した。つまり、「パリティ対称性の破れ」があると判明した。
 
 次に、CP対称性というものが提唱された。Cは電荷(チャージ)で、Pはパリティだ。P(パリティ)だけの対称性には例外が見つかったが、CとPを組み合わせた CP についての対称性を考えると、これはいっそう広い意味の対称性となる。P だけの対称性は成立しなくても、CP の対称性が成立すれば、大きな意味での対称性が成立することになるので、問題は拡張的に解決されたことになる。物理学者は「CP対称性で解決がつきそうだ」と喜んだ。
 だが、これについても例外が見つかった。それが「CP対称性の破れ」である。

 では、なぜ CP対称性の破れがあるか? 小林・益川理論はそれを解明した。クォークが3世代(6種類)以上存在すると考えれば、うまく説明できる、と。
 こうして CP対称性の破れというものは、はっきりと認定されることになった。

 さて。宇宙論では、次の疑問があった。
 「粒子と反粒子がぶつかると、どちらも消滅して、エネルギー(光)だけが残る。もし粒子と反粒子が等量で存在していたら、この宇宙には何も残らなかっただろう。しかし現実には、粒子ばかりが圧倒的に多い。これは、なぜか?」
 ( ※ 「粒子と反粒子」は「物質と反物質」と呼び替えてもよい。)


 この疑問には、CP対称性の破れという概念を利用して、次のように説明する解釈が生じた。
 「もともとは粒子と反粒子が同じだけあった。ただし、粒子と反粒子がぶつつかって消滅してエネルギーとなり、そのあとでまたエネルギーから粒子と反粒子が生じる。こういう過程が無限に起こるが、その過程で、CP対称性の破れによって、わずかなズレができる。そのズレのせいで、粒子の生成が反粒子の生成よりも、少しだけ多くなる。このことがたくさん積み重なって、粒子の方が多くできるようになったのだ」
( 参考 → Wikipedia

 ────────────

 以上は、紹介。以下は、私の見解。

 なるほど、CP対称性の破れという概念があれば、宇宙に粒子ばかりがあることは上記のように説明される。とはいえ、そのことは特に必要だとも言えない。
 上記の考えでは、
 「宇宙の初期には、粒子と反粒子が等量で存在していた」
 ということが仮定される。そして、
 「たとえ最初は等量で存在してても、やがて等量でなくなる」
 というふうに結論する。そのための説明をするのが CP対称性の破れだ。

 しかし、次のように考えることもできるはずだ。
 「宇宙の初期には、粒子と反粒子が等量で存在していなかった
 これは何を意味するかというと、
 「粒子と反粒子が等量でなく存在していた」(不均等だった)
 のではなく、
 「粒子と反粒子も、どちらも存在していなかった」
 のである。ではどうだったかというと、
 「粒子でもなく反粒子でもない状態(回転する超球状態)で量子は存在していた」
 のである。

 比喩的に言えば、宇宙の初期には、白と黒とが半々で生じていたのではなく、もともと灰色の状態だったのだ。わかりやすく言うと、次の通り。
 
 説1……「もともとは白黒半々だったが、白黒をぶつけあううちに、黒が減って、白ばかりが残った。だから、白ばかりになった」
 説2……「もともとは灰色だった。ただし、灰色から白黒になる過程で、白の生じる割合の方が多かった。だから、白ばかりになった」


 【 図示 】

 《 説1 》


    ○○○○○○○○○○○
                  →  ○
    ●●●●●●●●●●● 

  (大量の ○ と ● が同じ量だけあったが、少量の ○ だけが残った。)

 《 説2 》


    ●●●●●●●●●●●
                  →  ○
    ●●●●●●●●●●● 

  (大量の があったが、それらが ○ と ● とに少しずつ転換していったあとで、少量の ○ だけが残った。)

 理論的には、この「説1」と「説2」は、どっちにしても、「CP対称性の破れ」や「自発的な対称性の破れ(対称性の自発的な破れ)」を適用できる。つまり、どっちの説を取っても、理論には合致する。

 つまり、「説1」と「説2」は、(いずれも仮説段階であるので)どちらかが正しいと検証されたわけでもない。どの仮説を採るかは、人それぞれだ。
 したがって、マスコミその他の解説が「説1」だけを示しているのは、間違いとは言えないまでも、妥当ではない。本当は「説2」の方が正しいかもしれないのだ。そして、私個人としては、「説2」の方が正しいと確信している。「説1」は実験結果に合致しないが、「説2」は実験結果に合致するからだ。
( → 実験結果との合致については、このページ



 ※ 以下は、オマケふうの話。

 [ 付記1 ]
 「説2」(私の説)のミソは、次のことだ。
 「量子の基本的な状態は、粒子でもなく反粒子でもない状態だ」

 これは、比喩的には、「白でも黒でもない状態(灰色の状態)」のことだ。そういう状態が基本としてあり、そのあとで、白または黒になる、と見なすわけだ。

 ここでは、「白または黒だけ」という発想を捨てて、「白でも黒でもない状態(灰色の状態)」というのを認定している。つまり、「粒子または反粒子だけ」という発想を捨てて、「粒子でも反粒子でもない状態」というのを認定している。

 このことは、シュレーディンガーの猫で言えば、
 「生きている状態と死んでいる状態の二通りの状態だけが考えられるので、その両者が半々にあると見なす(同時成立)」
 のではなく、
 「生きている状態と死んでいる状態の二通りの状態のほかに、中間的な状態(『未定』の状態)を考える」
 ということだ。

 このことは、モデル的に言えば、次のようになる。
 回転するコインがある。これを見たとき、次の二通りの考え方がある。
 「『表』と『裏』という二つの状態だけがあると見なして、回転するコインを『表と裏とが半々にある』(同時成立)と見なす」(白黒の同時成立。半々で。)
 「『未定』(つまり『回転中』)という状態だと見なす」(灰色の成立)

 回転するコインを見たとき、次の二つの立場がある。
 「コインの裏表はすでに決まっている。裏と表はどちらも成立している。ただし、観測したときに、一方の世界が排除される」
 「コインの裏表は決まっていない。コインが倒れたときに、裏表が決まるだけだ」

 普通の人は、後者の考え方を取るだろう。しかしながら、物理学者ならば、前者の考え方を取るだろう。「馬鹿じゃないの?」と言うなかれ。本人はそれを正しいと思っているんですから。  (^^); 

 [ 付記2 ]
 「対称性の自発的な破れ」との違いについては、前項の図を参照。

        →  ○  or  ●

 これが「対称性の自発的な破れ」だ。ここでは、一つの灰色が、一つの白または一つの黒に転じる。一つものが一つのまま、別の形に姿を変えるだけだ。
 一方、「CP対称性の破れ」では、数に違いが出る。たとえば、100個の  があるとき、50個の ○ と 50個の ● が生じるはずだ。だが、どういうわけかぴたりとバランスが取れるわけではない。51個の ○ と 49個の ● になったり、あるいは逆に、49個の ○ と 51個の ● になったりする。(全体としての帳尻は合う。合計は 100個。)
 このようにバランスが崩れることが 「CP対称性の破れ」だ。結果として、100個の  から、2個の ○ または2個の ● が生じることになる。こうして、粒子または反粒子だけの世界が誕生することが説明される。
( ※ 「じゃ、どうして反粒子にならず、粒子になったんだ?」という質問も来るかもしれない。「そのわけはわかっていません」と答えて逃げたいところだが、実は、説明は簡単だ。どっちが残ってもいいのである。ただし、残った方を「粒子」と呼んでいるだけだ。仮に、逆の側が残ったら、そういう宇宙のなかで、その残ったものを「粒子」と呼ぶ。それだけのことだ。……比喩的に言おう。日本とアメリカは、たがいに地球の裏側にある。では、どっちが表か? どっちでも、自分のいる方を「表」と呼び、相手を「裏」と呼べばいい。日本にいればにアメリカを「地球の裏」と呼び、アメリカにいれば日本を「地球の裏」と呼ぶ。どっちだって、「自分の方が表だ」と言っていいのだ。)



 【 関連項目 】
  → Open ブログ 「対称性の自発的な破れ」

  → Open ブログ 「ヒッグス粒子」
posted by 管理人 at 19:15| Comment(4) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
後半は不正確なところがあったので、かなり書き換えました。
タイムスタンプは下記 ↓
Posted by 管理人 at 2008年10月10日 05:49
読売(朝刊・特集面 2008-10-12 )の解説記事に、「対称性の自発的な破れ」について、次の説明があった。

 (1)
 “ 回っているコマの勢いがだんだんと弱まり、ぱたんと倒れてしまう。その瞬間、左右対称だったコマの対称性が失われる。……「自発的対称性の破れ」の身近なたとえだ。”
 これは妥当である。ただ、
   回っているコマ → 回っているコイン
 の方が、いっそう妥当だ。なぜなら、コインには裏表という二つの状態(粒子と反粒子の状態)があるからだ。そのどちらか一方になることが、うまく説明される。
 なお、これは、標準理論の比喩ではなく、超球理論の比喩だ。主流派の解釈では、「裏と表の状態が併存している」というふうになる。(コペンハーゲン解釈。)

 (2)
“ 対称性を失った真空が、粒子にまとわりつくことで、物質の質量が生まれる。”
 おおむね妥当だが、ちょっと不正確だ。正確には、次のようになる。
 「対称性を失った粒子(=超球)に、真空がまとわりつくことで、物質の質量が生まれる。」
 または
 「対称性を失った真空(=超球)に、ヒッグス粒子がまとわりつくことで、物質の質量が生まれる。」
 この二つはどちらでも同じことだが、その前の引用文は趣旨が違う。
 なぜか? 「対称性を失うもの」は、「まとわりつくもの」か「まとわりつかれるものか」という違いだ。
 引用文では、「対称性を失うもの」は、「まとわりつくもの」になっているが、正しくは、「まとわりつかれるもの」である。引用文は、主語と目的語との関係が反対になってしまっている。その意味で、引用文は、正しくない。
Posted by 管理人 at 2008年10月12日 12:20
灰色が転換してって話ですが、対消滅以外に何があるって言うんですか?それ以降の物理機構をきちんと示す必要があると思います。白黒を、そうじゃない灰色だ、というだけの論でしたら何の変わりも無いじゃありませんか。
Posted by at 2008年10月16日 14:57
> 対消滅以外に何があるって言うんですか?

イチャモンを付けたいだけなら、2ちゃんねるにでも行ってください。

真面目に質問する気があるなら、本ブログをちゃんと読んでください。読めば「すでに書いてある」とすぐにわかるはずです。

いちいち教えれば、 【 関連項目 】をふたつたどって、「インフラトン」の項目へ。

なお、他にも、あちこちの項目で詳しく記されています。カテゴリページから、該当の説明を探してください。
Posted by 管理人 at 2008年10月16日 16:04
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