2008年10月08日

◆ 対称性の自発的な破れ

 前項(ノーベル物理学賞) の続き。
 南部陽一郎の業績である「対称性の自発的な破れ」について、解説しておこう。世間ではけっこう誤解があるからだ。 ──

 「対称性の自発的な破れ」 or 「自発的な対称性の破れ」or 「自発的対称性の破れ」については、次のように説明する記事が散見される。
 「宇宙の最初は、粒子と反粒子が等量あったが、対称性の破れによって、粒子ばかりになり、反粒子がほとんどなくなった」
 こういう説明は、素人向けにはしばしばなされるが、妥当ではないだろう。

 むしろ、次のように説明するべきだ。
 「宇宙の最初は、粒子でも反粒子でもない状態の量子があったが、やがてどちらかに定まる時期が来た。そのとき、(自発的な)対称性の破れによって、粒子ばかりになり、反粒子がほとんどなくなった」

 直感的に言うと、「白と黒が同じ数だけあった」のではなく、「灰色のものばかりがあった」のである。この両者は、まったく別のことだ。

 ──
 
 「対称性の自発的な破れ」という原理については、朝日は次のように説明している。
 「たとえば底が盛り上がったワインの瓶は上から見ると左右対称なのに、そこに小さな玉を入れると、玉は瓶底の中央ではなく、へりに近いくぼみに落ち込むようなものだ。」( → 朝日コム ,朝刊 2008-10-08 )

 同様に、読売は次の趣旨の記事を掲載している。
 「丸いテーブル上にコップが並んでいて、そのそばに人々が腰掛けている。各人は自分の前の、右と左のどちらのコップを取ることもできる。一人が右のコップを取ると、次々と右側のコップを取るので、このテーブルでは『右のコップを取る』という状態が決まる」(朝刊 2008-10-08 )

 いずれも比喩としては妥当である。
 ともあれ、ここでは、「最初に両方の状態があった」のではなく、「最初はどちらでもない状態があった」ということに留意しよう。
 【 追記 】
 上記では比喩について「妥当である」と評価した。
 あとで 毎日jp の記事を読んで、意外なことが判明した。読売の比喩は、南部氏自身の語った比喩なのだ。それをほぼ丸写ししただけ。毎日では、完全な丸写しをした上で出典を示しているが、読売の方では、出典を示していない。「南部氏による比喩です」と示していない。……これじゃ、無断転載ないし盗用に当たる。ひどいものだ。
 マスコミからしてこんなことだと、「独創性の重視」なんて無理かも。マスコミが「独創性の重視」を唱えれば唱えるほど、「無断転載するおまえはどうなんだ」と批判されるだろう。   (^^); 
 ──

 なお、私なりに図示して示せば、次のようになる。

        →  ○  or  ●

 つまり、一つの灰色が、一つの白または一つの黒に転じる。粒子でも反粒子でもないものが、粒子または反粒子に転じる。……そのとき、どちらに転じるかは、その場その場で異なる。必然的ではなく、確率的だ。
 ここでは、左側の  が一つだけであることに注意。一つものが一つのまま、別の形に姿を変えるだけだ。この点では、数に違いの出る CP対称性とは異なる。
 ( → CP対称性



 [ 付記1 ]
 南部氏の業績について、物理学的に詳しい話は、本サイトの下記項目を参照。
  → インフラトン

 この話を読めばわかるだろうが、現代の物理学は「量子とは何か」をまだよく理解していないのである。そのせいで、「灰色の状態がある」とは思わず、「黒と白とが両方同時にあるのだ」つまり「重ね合わせ状態にあるのだ」というような奇妙奇天烈な理屈を出す。素直に「灰色の状態がある」と言えばいいのに、そう言うことができないので、混迷のさなかに落ち込んでしまう。
 そして、それを解決したのが、私の「超球理論」だ。

 [ 付記2 ]
 私なりに見解を言えば、「(自発的な)対称性の破れ」については、以下のようになる。
 そもそも「対称性がすべてに成立する」という前提が根本的に狂っている。なるほど、さまざまな粒子の性質については、対称性が成立する。しかしそれは、(出現した)粒子についての対称性だ。「粒子になるか否か」「粒子になるか反粒子になるか」については、対称性は成立しないのだ。

 比喩的に言うと、男と女は性質が対称的だが、だからといって、男と女とが誕生する割合が等しくなるとは言えない。事後的な対称性と事前の対称性とは、まったく別のことである。
 俗っぽい比喩で言うと、結婚の前と後だ。結婚の後に、夫と妻とが対等に金を稼ぐからといって、結婚の前に、男と女とが平等にデート代を払うわけではない。男ばかりがやたらと払うハメになる。   (^^); 
 事後と事前とでは、対称性の原理は別のことなのだ。そのことに気づいていない人が多すぎる。……恋人がほしければ、まずはデート代を貯めましょう。そのためには、オタク商品を買うのをやめましょう。  (^^)



 【 参考 】

 参考として、小林・益川理論についての話も述べておこう。
 小林・益川理論は、クォークの世代の実験とも関連するが、「粒子反粒子振動」と呼ばれる現象とも関連する。
 われわれが「粒子」とか「反粒子」とか呼ぶとき、それは固定的なものだと見なされているが、実は、「粒子」と「反粒子」は相互に変換している。その周期ないし頻度は、毎秒3兆回ぐらいであることが、2006年の実験で明らかにされた。(あまりにも高速であるため、これまでは実験できなかったようだが。)
 
 この件について詳しくは、次のページにある。
   → http://www.kek.jp/newskek/2006/mayjun/CDFBs.html

 ※ どうしてこういうことが起こるかは「超球理論」(超球と超ヒモ)を読めばわかる。
   ( 短い文章ではないので、時間をかけて読む必要があるが。)
posted by 管理人 at 18:11| Comment(3) | 物理・天文 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
南部洋一郎理論:対称性の自発的な破れに関して

貴ブログ記載では、下記
>「対称性の自発的な破れ」という原理については、朝日は次のように説明している。
>同様に、読売は次の趣旨の記事を掲載している。

>>新聞記者は科学部であろうとも物理学者ではないので、記事の引用で説明することは、だめです。新聞記者は本質的には、研究者ではないのです。

>>[ 付記2 ]
 私なりに見解を言えば、「(自発的な)対称性の破れ」については、以下のようになる。
 そもそも「対称性がすべてに成立する」という前提が根本的に狂っている。なるほど、さまざまな粒子の性質については、対称性が成立する。しかしそれは、(出現した)粒子についての対称性だ。「粒子になるか否か」「粒子になるか反粒子になるか」については、対称性は成立しないのだ。

>>これが我々が知りたい貴方の見解なのです。

>>>私が一番知りたいのは、”自発的”とは物理学的にどのような現象を意味しているのか、貴兄の”私なりに見解を言えば”をおしえてください。
   2012/01/22 01:12 Prof. Kubo
Posted by Prof. Kubo at 2012年01月22日 01:12
> 新聞記者は科学部であろうとも物理学者ではないので、記事の引用で説明することは、だめです。

 新聞記事は研究論文のレベルに達していない、なんていうイチャモンを付けるのは、新聞記事と論文を区別できない人だけです。そんな常識知らずの人は約1名以外、いません。
 そもそも、新聞記事は、南部さん本人の解説をまとめただけです。それが気に食わないのであれば、あなたが文句を言うべき相手は、新聞記事でもなく、私でもなく、南部さん本人です。南部さん本人に向かって、「あなたは自分の業績を理解していない」と文句を言えばいいでしょう。本サイトに書くのはお門違い。
 
> ”自発的”とは物理学的にどのような現象を意味しているのか

 質問の意味がわかりかねます。文字通りに受け止めるなら、それは南部氏が示した物理学常識ですから、いちいち私に質問することはないでしょう。もちろん私の独自の解釈などはありません。

 私なりの話を聞きたいのであれば、リンク先の「インフラトン」の話を読んでください。
 
 ついでですが、私は別に物理学現象のすべてを解明したわけじゃありません。本項で述べているような分野については、半分ぐらいの確信度で「こんなところだろう」と見当を付けているぐらいです。わかっていない点もたくさんあります。
 従って、すでに述べたこと以上、付け加えることはありません。私の話を読んで「よくわからないから教えてくれ」と言われても困ります。私は別に万能の天才じゃない。アインシュタインや南部氏ですらわからないことを、私に求めるのは、お門違いです。
Posted by 管理人 at 2012年01月22日 12:02
引用:
「南部理論の画期的なのは,真空には場が詰まっていて,そのために対称性が破れて見えると考えたことにある。それまでは真空には何もないと考えてきた。このように南部理論は,真空に対する概念の変更をもたらした。」
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/40/4/features/03.html
Posted by 管理人 at 2012年05月11日 10:18
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