天然林が日本では消失している。自然に消失しているのではなくて、人間が破壊しているからだ。特に、国が破壊している。 ──
朝日に興味深い記事が出た。( → 朝日・夕刊・特集 2008-08-06 )
これは、いつもの朝日の駄目記事とは違って、珍しくまともな記事だ。その趣旨は、「天然林が消失している」ということ。
私としては、批判するべきことはないので、記事の趣旨をそっくりそのまま紹介しておこう。
( ※ 以下は記事の大意。)
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天然林は国内の森林面積の半数を占めるが、毎年多大に消失している。それも、人為的に。しかも、そのために、「風倒木処理」という虚偽の名分を立てている。(つまり、悪を善に見せかけているわけですね。 (^^); )
たとえば、大雪山国立公園では、糠平湖付近で、トド松の森が消失していた。9ヘクタールの山肌が剥き出しになり、表土も剥がされ、石と砂利が散らばっていた。植物生態学の教授は「ひどすぎる」と憤り、環境省国立公園課の担当者は「これほどひどい皆伐は見たことがない」と驚いた。その近くでも 25ヘクタール以上の天然林が同様に乱伐されていた。
いずれも国立公園内で、普通は伐採は禁じられているのだが、特別な理由があれば伐採してもいいことになっている。そこで、「風倒木処理」というの名分で、皆伐してしまった。法によれば、「枯損または危険な木竹」のみは伐採していいことになっているのだが、その法を勝手に拡大解釈して、普通の天然林をごっそり皆伐してしまったわけだ。
( ※ 比喩的に言えば、「死体を運搬してもいい」という規定を利用して、正常な人間を勝手に斬り殺して、屠殺場に運搬するようなものだ。大量虐殺。それを森林に対して行なっているわけですね。 (^^); )
これほどひどいことが行なわれているわけだが、全国ではどのくらいの規模になるか? 実は、統計が取られていないので、どのくらいあるかは数値的に不明である。
( ※ ナチスがガス室に送った被害者の人数を取らないのと同様。数百万人とも言われるが、正確な数値は記録されていないので不明。 (^^); )
しかも、インチキがある。いったん天然林を皆伐しても、その後に種苗を飢えれば、やはり「天然林」と見なされてしまうのだ。
( ※ ユダヤ人を虐殺しても、その後に住んだドイツ人が赤ん坊を産めば、ユダヤ人虐殺はなかったことになる、というようなものか。 (^^); )
ともあれ、こうして、天然林の破壊が次々と進行している。
(記事の紹介、終わり。)
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このような林野庁の破壊行為には、民間からも多くの批判が上がっている。次のサイトなどだ。
→ http://www.news.janjan.jp/area/0612/0612166561/1.php
→ http://www.geocities.co.jp/tennenrin461/
(各種の記事の紹介リンクもある。)
しかし、ここでは「天然林を救え」という声があるばかりで、問題の根源が理解されていない。
なぜ国は天然林を次々と破壊していくのか? その理由を探らない限り、単に「反対だ」と言っても、無意味なのだ。
そこで、理由を以下に示す。
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この問題については、すでに次の箇所で述べてある。
→ 泉の波立ち・第2章 「林野庁改革」
天然林を次々と破壊しているのは、国である。ここで、国というのは、林野庁だ。ではなぜ、林野庁がそうしているかというと、「生きるためにはそうするしかない」ということが理由だ。
林野庁には莫大な人員(公務員)がいる。しかも、独立採算性である。彼らの職員の給料は、自分たちで稼がなくてはならない。とすれば、彼らにとって、自分たちの給料を得る方法は、ただ一つ。天然林を伐採して、それを現金化して、自分たちの給料にすることだ。それ以外にはない。
同様のことは、ロシアやブラジルでもなされている。彼らは、自分たちの現金収入のために、シベリアやアマゾンの森林を伐採する。それと同じことを日本の林野庁がやっているわけだ。
彼我の違いは何かというと、ロシアやブラジルでは民間人が勝手に森林を破壊しているのだが、日本では国家公務員がそれをやっている、ということだ。実は、ロシアやブラジルでなされていることは、(公共物の私物化や環境破壊という意味で)違法かもしれないが、逆に、日本でやっていることは(国のやっていることだという理由で)完全に合法化される。つまり、国自身が悪をなすから、悪が合法化されているのだ。
( ※ 民間人が国立公園を破壊すれば、国立公園の破壊という罪で逮捕されてしまうが、林野庁がやれば、上記のように法の拡大解釈をしても、ちっとも咎められない。常識的には違法行為だが、裁判所は政府の下僕にすぎないから、政府の犯罪を裁判所が咎めることはまずありえない。)
要するに、ポイントは、次の二点だ。
・ 林野庁は、やむにやまれず、悪をなす以外にはない。
・ たとえ悪であろうと、お上がやれば、悪とは見なされない。
この二点のうち、朝日や環境保護団体が指摘しているのは、後者の方だ。彼らは「こいつは悪だぞ」と声を上げて、悪をやめさせようとする。しかし、いくら声を上げても、国の悪を改めることはできない。(もう40年ぐらいずっとそうだ。)
一方、私が指摘するのは、前者のことだ。林野庁としては、自らが生き延びるためには、天然林を伐採するしかない。仮に、環境保護団体の声を聞いて、天然林の伐採をやめるとしたら、次のいずれかしかない。
(a)天然林は生き延びるが、自分たちが失業して餓死する。
(b)職員が失業しないで済むように、国が職を与える。
この二つのうち、私としては、(b) を推奨したい。
しかし、小泉行革は、「政府支出の縮減」「公務員の削減」「独立行政法人や独立採算」という方針を取り続けた。つまり、(b) とは正反対の方針を取り続けた。ゆえに林野庁としては、(a) の方針しか残されていない。しかし、(a) を取るわけには行かない。(誰だって餓死したくない。)
ゆえに、天然林の伐採をやめるわけには行かないのだ。(a)も (b)も駄目なのだから。
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結論。
林野庁に対して、「独立採算性にせよ。自分たちの給料は自分で稼げ」と言っておきながら、「天然林を伐採するな」というのは、自己矛盾である。そんな自己矛盾のこと(できるはずのないこと)を人々が主張するから、結果的に、林野庁による天然林の伐採が起こる。
つまり、悪いのは、天然林を伐採する林野庁ではなくて、林野庁をそういう状況に追い込んでいる国と国民なのだ。
われわれがなすべきことは、林野庁に向かって「天然林を生かすために、おまえたちは死んでしまえ」と言うことではなくて、林野庁に向かって「天然林を伐採しなくても給料を得られる方法を教えてあげますよ」と語ることなのだ。
そして、その方法とは、「転職の斡旋」みたいなものだが、国家公務員の範囲内で配置転換する、ということも可能だろう。ま、そんなにうまく、大量の職場が見つかるかどうかはともかく、何らかの形で職を与える必要がある。そして、それは、不可能ではあるまい。(どうせ林野庁の職員は高齢者がほとんどなのだから、いつまでも永続的に支出が続くわけでもない。)
( ※ なお、そういう正解を知っておけば、現在がどういう状況にあるかもわかる。林野庁の職員の人件費をまかなっているのは、天然林だ。つまり、われわれ国民が林野庁の人件費を払わないから、天然林がかわりに身を削って払ってくれているわけだ。……つまり、天然林を伐採する形で利益を得ているという悪の張本人は、林野庁ではなくて、国民なのだ。われわれが増税のコストをケチっているから、天然林が削られてしまうのだ。)
( ※ これに対して、「いや、国民が悪いんじゃない、林野庁が勝手に職員を増やすからいけないんだ」と思う人もいるかもしれないが、さにあらず。林野庁の職員が増えたのは、林野庁の職員のせいではない。職員は単に職に応募しただけだ。彼ら自身は職員の数を増やす権限をもたない。林野庁という無駄な組織を形成したのは、戦後の長い自民党政権であり、そしてその自民党政権を選んだのは、国民である。……愚かな国民が愚かな政府を選んだ、というのが諸悪の根源。当然、そのツケを払うべき。しかし、自分か勝手な国民が、そのツケを払わないから、天然林が犠牲になっていく。政府も国民も環境保護団体もマスコミも、すべてがエゴイスティックなせいで、天然林ばかりが犠牲になっていく。……これが「天然林の伐採」の本質だ。)
[ 付記 ]
朝日はかねて、人工林を推進する記事を書いてきた。
「林業振興のために、杉林をどんどん増やしましょう。それで環境によくなります」
というふうに。( → 泉の波立ち 2005年3月29日c などで紹介。)
しかし現実には、朝日自身が指摘しているように、それは森林を荒廃させる。( → 泉の波立ち 8月05日b などで紹介。)
ここでは、「人工林が優先され、天然林は次々と伐採されている」という問題がある。この件については、私も前から何度か指摘してきた。( → 泉の波立ち 2005年3月12日 ,6月28日 など。)
この延長に、本項(の本文)の話はある。
【 関連項目 】
実は、本項の話題は、「地球温暖化」とも関連する。というか、本題の前口上みたいなものだ。肝心の話は、次項でなされる。
→ 陸地温暖化説
2008年08月13日
過去ログ

一方、天然林の樹木は、高く売れるので、儲かります。
つまり、すべては金儲けなんです。
皆伐するのも同じ理由。生態系を破壊する皆伐が、一番儲かるから、そうするわけです。「破壊で金儲け」という悪の商法。スーパーマンや007に出てくる「悪の結社」みたいですね。
北海道でも大規模な皆伐が行われているのをニュースで取り上げていました。数年前の台風で支笏湖周辺でも森林が大きな被害が受けました。その後に近くを通った時、倒れた木を処分するにしては禿げ山にするのか?と思うくらい木がなくなっており、後からこういう事があったのかと分かりました。
それまで林野庁というのは木を育てて守る立場だとばかり思っていたのですが、これほど一生懸命に木の販売をしているとは知りませんでした。
一方で環境庁は温暖化防止に木を植えよう!なんて言ってるなんて同じ国の同じ政府が言ってるとは思えませんね。
007にスペクターという秘密結社がありますが、日本では政府こそが「悪の結社」なのかな。