《 本項は、私の意見ではなく、読売新聞の記事( 2008-08-11 朝刊・コラム)をまとめる形で、整理して述べる。》
高血圧の薬には、何がいいか? 通常、次の選択肢がある。
・ 安価な利尿薬
・ 高価な最新の薬(ACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬など)
「後者の(高価な最新の薬)のおかげで、治療効果が急激に向上したから、後者の方がいい」というのが、従来の常識であった。実際、日本の高血圧治療では、そういうガイドラインがある。( → ガイドライン )
しかし、最近の米国の調査によると、「どちらも差はない」という結果が得られている。こちらが新しい常識となっている。( → 該当サイト ,Wikipedia )
ではなぜ、「最近の薬の方がいい」というガイドラインが取られているか? それは、「最近の薬の方がいい」という統計調査(疫学調査)が得られているからだ。
しかし、これは奇妙である。米国のように「どちらも差がない」という調査結果があちこちに出ているのに、日本ではどういうわけかまったく矛盾する調査結果が出ている。事実は一つのはずなのに、まったく異なる結果が出ている。
そこで、読売新聞社が調べた見たところ、次のことが判明した。
「最近の薬の方がいい」という統計調査を出した研究者の資金を調べてみると、そこには該当の製薬会社から資金援助が出ていた。改めてあちこちを調べると、製薬会社から資金援助をしてもらった研究者ほど、「最近の薬の方がいい」という統計調査を出している。金と調査結果とが関連している。
つまり、「調査を金で買収している(歪めている)」というわけだ。実際には「差はない」という結果が得られるのだが、それでは製薬会社に顔向けができない。そんな結果を出したら、翌年の資金援助を切られてしまう。それではまずい。そこで、うまく統計をいじくって、他の薬と組み合わせたりして、「最近の薬の方がずっと効果がある」という歪んだ結果を出すわけだ。(データの捏造に近いですね、これは。)
──
実は、この件は、前にも「タミフル」をめぐる話題でも、言及したことがある。次のように。
新聞続報によると、この統計調査をしたチームの主任教授は、薬剤会社から金をもらっていたらしい。つまり、グルである。これじゃ、まともな統計調査をする前提すら満たされていないことになる。……これほどひどいとは思ってもいなかった。口あんぐり。この項目では、読者からのコメントもいろいろとある。(「金」という語で検索するといい。)
( → 統計の嘘(タミフル) )
ともあれ、「金で研究が左右される」ということについて、上記項目で懸念を表明していた。そして、まさしくその懸念どおりに、研究者は製薬会社に買収されていた、ということが判明したわけだ。高血圧の薬で。
( ※ 買収は「あうん」の呼吸だろう。はっきりと買収を明示せず、「下手をすると来年の研究費は出しませんよ」という形での暗黙の了解。)
[ 付記1 ]
細かな話は、ここでは記さない。本項はあくまで、「金で研究が買収された」ということのみを指摘する。具体的な医学的な内容は、読者が読売の記事を読んでほしい。
なお、ネットにはありません。ネットにあるのは、よそでも得られる平凡な情報だけ。価値のある情報は、金を払わなくては得られません。
[ 付記2 ]
本項で述べたのは、高血圧の薬のことだが、タミフルについても次のことが判明している。
・ タミフルについて「異常行動はない」という報告が出た。
・ その報告を出した研究者は、タミフルの製薬会社から金をもらっている。
・ その報告は、統計的に間違っている。統計数値を歪めて処理して、
異常行動の数値を実際よりもずっと低く見積もっている。( ★ )
ここでも、金で調査が歪められているわけだ。
( ※ タミフルの統計の件については、「タミフルと異常行動」で述べた。)
( ※ ★ の件については、私ではなくて別の人が説明している。すぐ上の項目にもリンクを示したが、改めて示せば次のサイト。
→ http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20080117 )