2008年07月30日

◆ 河川の増水対策

 河川の増水で、水死者が出た。突発的な集中豪雨で水位が急上昇して、逃げ遅れた子供が水に流されてしまった。では、その対策は? ──

 この事故(都賀川の水難事故)は、各紙で大々的に報道された。
   → 朝日com
 この写真を見ると、次のことがわかる。

  ・ 全体として人工の河川である。(もともとは排水路)
  ・ 中央部は、平坦な水路。
  ・ 水路の脇に、遊歩道がある。
  ・ 遊歩道の脇は、急な斜面で、コンクリと石の護岸。
  ・ 護岸の一部に切れ目があって、階段がある。


 もっと詳しい話は、朝日および読売の特集(朝刊 2008-07-30 )にある。どちらも詳しい解説があるので、読むといいだろう。ネットにはない詳細情報がある。
 朝日の記事によると、豪雨のときには、水位が 1.3メートルもの高さにまで急上昇したという。子供たちは、石壁の切れ目にある階段に近づこうとしたが、あまりにも急激な増水だったため、階段に達する前に逃げ遅れたという。
 読売の記事によれば、増水までの時間は、数分ほどだったという。わずか2分間ほどで水位 数十センチの増水となり、遊歩道がいくらか冠水した。そして 10分後には水位 134センチになったという。

 なお、一般論で言えば、足元の水位が 10センチぐらいになると、足を取られて、歩きにくくなる。水位が 10センチぐらいのときに、(足を取られて)転んでしまうと、大変だ。そのまま下流にまでどんどん流されてしまい、最後は水死してしまう。……これが普通の増水事故だ。つまり、子供だけでなく大人でさえ、10センチぐらいの水位で流されてしまう。
( ※ 「そんな馬鹿な」と思うかもしれないが、この水は、静止した水ではなくて、急速に流れている水である。静止した水なら、どうってことはないが、急速に流れる水というのは、恐ろしいものだ。ちなみに、直径1センチの水道ホースから流れる水を浴びてみるがいい。すごい圧力を感じるはずだ。川の流れでは、もし倒れたあとでは、そのような圧力を全身に受ける。あっという間に流されてしまうはずだ。)

 ──

 では、どうしたらいいか? 
 現実には、「決め手となる対策がなかなか見つからない」(産経ニュース)ということらしい。
 なお、上記の朝日・特集面の記事では、「超巨額をかけて、地下トンネルを作る」という案も紹介されているが、これは駄目だ。もしそうすると、「それだったら、死者に見舞金を払う方が、はるかに安上がりだ」という発想も成り立つかもしれない。(非人道的ではあるが。しかしこの国では人命よりも金ですからね。  (^^); )

 とにかく、現状ではどうにもならない。そこで、私が提案しよう。

 ──

 まず、目的は何か? 増水をなくすことか? 違う。人命を救うことだ。
 朝日の特集にあるように、「増水そのものをなくす」という発想を取ると、ものすごい巨額の金がかかるが、これは目的を取り違えているからだ。
 ここで、目的を正しく理解しよう。「増水そのものをなくす」かわりに、「人命を救う」という目的を理解しよう。すると、なすべきことはわかる。
 「増水そのものをなくすかわりに、増水から人間が逃げられるようにする」


 一方、現状はどうか? こうだ。
 「増水が起こったときに、人間は逃げられない。なぜなら、水路の両脇を、急峻な石壁に囲まれているからだ」


 とすると、対策は次のことだとわかる。
 「水路の両脇の急峻な石壁に囲まれている、という状況を改める」


 では、具体的には、どうすればいいか? 簡単だ。次のいずれかだ。
  ・ 急峻な石壁を、ゆるやかな石壁にする。
  ・ 急峻な石壁の途中に、踊り場を作る。


 このうち、前者は、  |  を  /  にするということだ。しかしこれは、頭の悪い方法だ。(水量が減ってしまうので、排水路としての機能が損なわれてしまう。)
 そこで、後者の方法を取る。つまり、現状では、

      |

 というような急峻な斜面になっているから、その途中(斜面の真ん中へん)に、踊り場のような水平面を作る。(狭い通路のようなもの。)
 比喩的に言うと、風呂場の浴槽内の段だ。たいていの浴槽は、内側側面が垂直だが、大きな温泉では、内側側面に階段がついていることがある。階段を昇りながら、浴槽から出るわけだ。ここには、段がある。
 それと同じように、上記の水路の石壁にも、段を二つか三つ、作るといい。ただし、なるべく低い位置に。

 すると、増水したときに、その段の上に飛び乗ることができる。そのときはまだ、大幅には増水していないから、段の上(狭い通路のようなもの)を走って、目的の階段にまで達することができる。

 現状では、その段がない。だから、水位が10センチぐらい上昇しただけでも、石壁の切れ目にある階段にまで到達することができない。(冒頭記事の)写真を見ればわかるように、階段はすぐそこにあって目に見えているのに、増水した水に足を取られて、その階段に近づけないのだ。(遊歩道が冠水しているので。)

 しかし、遊歩道の脇に、小さな段があれば違う。その小さな段を駆け抜けて、石壁の切れ目にある階段にまで到達することができる。
 だから、そのような段を作ればいいのだ。たとえば、次のように。
  ・ 高さ 30センチの位置に段をつくる。
  ・ 高さ 70センチの位置に段をつくる。

 このようにすれば、水位が急激に 70センチ(プラス 30センチ)にまで増水しても、その段の上に逃げることができる。
 これよりももっと大幅な増水が急激にあったら……いや、そんなことはありえない。いくらなんでも、瞬間的に 70センチ(プラス 30センチ)以上の増水が起こるわけがない。どんな増水だって、最初は 30センチぐらいで済むはずだ。
 そして、その 30センチぐらいの増水に対して、「あれ、何だか変だな」と思うだけで、「これは非常に危険だ、もうすぐ死ぬ」という意識がないから、その気のゆるみが対処を遅らせて、死を招く。

 だから、増水事故の本当の理由は、気のゆるみである。
 本当なら、全然増水していなくても、夏に雨が降った時点で、すぐに川から立ち去るべきなのだ。にもかかわらず、「このくらい大したことはないだろう」と思って楽観していることが、事故の理由だ。……増水の事故というのは、すべてこのような「気のゆるみ」から発生する。

 そして、そのことへの対処は、「数百億円もの血税をかけて、地下トンネルを造ること」ではなくて、「愚か者の気のゆるみをなくすこと」であり、「そのための広報活動をすること」なのである。
 愚か者が死ぬことへの対処は、金を水路に捨てることではなくて、愚か者に知恵を付けることだ。
( ※ 特に、水路の脇のあちこちに、このような警告を記しておくべきだ。とりわけ、階段のそばに。)
( ※ 特に、増水の原理を教えることが大切だ。川はあちこちの平地の水を集める。平地の降水量がわずかでも、川には大量の水が集まる。とすれば、雨のときには、川にはたくさん水が集まるのだ。特に、集中豪雨のときには、ものすごい量の水が集まることもある。こういう原理を教えることが大切だ。)

 [ 注記 ]
 本項の意図は、人々に対して「愚か者」と詰ることではない。夏の増水事故の危険性を、人々が理解していない、という問題への警鐘だ。
 前に、玄倉川でも水難事故があったが、あのことをたいていの人が忘れてしまっている。今回のマスコミも、玄倉川との類似性を指摘しない。すっかり忘れてしまっているのだろう。
 こうして、人々は、相も変わらず無知の状態になっている。それゆえ、次々と人命が失われるのだ。……特に、親の無知のせいで子供が死ぬとしたら、これほど可哀想なことはない。
 マスコミというものは、「太陽光発電の省エネ」には気違いのように騒ぐくせに、「水難事故への警鐘」という点ではほとんど何も報道しないに等しい。朝日に至っては、「超巨額の金で地下の貯水タンクを」という暴論を示すほどだ。
 何よりも大切なのは知恵だ、ということを噛みしめよう。

( ※ 詳しくは、冒頭にリンクした朝日の記事を参照。今回の事故でも、事故の原因は、増水ではない。いったん川の外に出たあとで、また川のそばに戻ってしまったことだ。「どうせ安全だろう」と楽観したせいで。……こういう愚かさが事故をもたらす。その愚かさを理解することが大切だ。愚かな人々があえて危険な場所に飛び込むときには、なすべき対策は、決して巨額の金を投じることではないのだ。)



 【 関連項目 】
  → 豪雨の水害
 
 ※ ここでは増水の原理が少し説明されている。
   だんだん増水していくと、後の水が前の水に迫っていくせいで、下流では急激な増水が起こることがある、という原理。
posted by 管理人 at 19:08| Comment(0) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
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