自動車で「ルーフに太陽電池を乗せる」という案がある。しかしこれは、省エネのように見えても、ただの無駄だ。 ──
「ルーフに太陽電池を乗せる」という自動車は、容易に発想できる。実際、BMWやトヨタは、そういう試作車をすでに制作している。
→ 英語情報1 ,英語情報2 (BMW)
→ ITmedia (トヨタ)
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しかし、である。通常の太陽電池ならば、「補助金をもらうことで 20年で元を取る」(ペイする)ということが曲がりなりにも成立しそうだが、自動車ではまったく成立しない。なぜなら、たいていの自動車は、青空駐車ではないからだ。
たいていの高級車は、(車庫の)屋根の下にひそんでいて、陰のなかにある。とすれば、いくら太陽電池パネルのあるルーフがあっても、宝の持ち腐れだ。
かといって、車庫の外に出して、青空駐車にして、野ざらしにすれば、どうなるか? 太陽光で室内の素材が傷んでしまう。本革などのシートはボロボロになってしまうかもしれない。高級車には致命的。(20年落ちのBMWなどをときどき見ると、シートもプラスチックパネルも、ボロボロである。 (^^); )
それでいて、高級車でないと、太陽電池ルーフなんていう馬鹿高いものを購入できない。(パネルだけで百万円近くになりそうだ。) かくて、わずかなガソリンを節約して、高価な自動車を台無しにしてしまうことになる。
そして、そういうわけには行かないから、高級車を野ざらしにすることはできない。とすれば、太陽電池が働く期間は、ごく短い。ゆえに、ペイしない。
なお、仮に野ざらしにしたとしても、太陽電池のコストの回収には 30年ぐらいかかるから、自動車の寿命(10年ぐらい)の方が早く来てしまう。そうなると、せっかくの太陽電池を、無駄に捨ててしまうことになる。太陽電池そのものが無駄なゴミに化けてしまう。
結局、太陽光発電の自動車ルールというのは、ただの無駄である。百万円近くをかけて、発電量はスズメの涙にしかならない。簡単に言えば、巨額のゴミを作っているようなものだ。こんなことで「地球に優しい」と言えるんですかね?
「やたらと太陽電池を増やそう」という発想は、これほどにも馬鹿げているのだ。にもかかわらず、BMW もトヨタも、馬鹿なことをやっている。……ひょっとしたら、彼ら自身は馬鹿ではないのかもしれないが、「太陽電池で馬鹿な大衆をだましてやろう」という宣伝効果を狙ったものだろう。
見くびられたものだ。
[ 付記 ]
なお、この太陽電池つきルーフによって、直接的にガソリンが節約されることはない。なぜなら、太陽電池で発電された分は、走行には使われず、エアコンなどの補器類の駆動に使われるだけだからだ。
ま、間接的には、ガソリンが節約されている、とは言える。しかし、どうせなら、「エアコンのかわりに、窓を開けるだけで我慢する」というふうにするだけで、同じ効果が得られる。
あるいは、「屋根を白っぽくする」ということだけでもいい。
→ 省エネ・カラー
こっちの方がはるかに効果的な省エネだ。日本中の車がこれを実行すれば、ごく限られた一部車種が太陽電池つきルーフにするより、圧倒的に多くの省エネ効果を得られる。
2008年07月30日
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