2008年07月24日

◆ 小翼(ウィングレット)と省燃費

 飛行機の省燃費の方法として、翼の両端に小翼(ウィングレット)をつける、という方法がある。
 ではなぜ、小翼を付けると、省燃費になるのか? ──

 飛行機の省燃費のために、翼の端に小翼(ウィングレット Winglet)をつける、というニュースがあった。
  → ニュースANA公式サイト

 小翼(ウィングレット)というのは、主翼の端に、垂直または斜めの小さな翼を付け足すものだ。上記サイトの写真を参照。
 ではなぜ、小翼を付けると、省燃費になるのか? 

 ──

 これについては、次の説明がなされる。
 「飛行機の翼の先からは、翼端渦という渦が生じる。小翼は、その渦をなくすことで、渦ゆえに生じる抵抗をなくす」


 ここで、翼端渦(wingtip vortices)というものは、次の写真で見て取れる。実際に渦が、白い雲を作っているのがわかる。
  → http://en.wikipedia.org/wiki/Wingtip_vortices

 ──

 なるほど、小翼で渦を減らせば抵抗が減る、ということはわかった。しかし、これは、説明としては十分ではない。まだ次の問題が残る。
  ・ なぜ翼端渦が生じるのか?
  ・ なぜ小翼は翼端渦をなくすのか?


 これらが新たな問題となる。そして、その答えは? こうだ。
 「現在のところ、どうしてかはよくわかっていない」


 ただし、「言葉を別の言葉に置き換える」というふうにして、「説明をしたフリをする」ということならば、できる。次のように。
 「翼端渦を減少あるいは発生方向を上方に移動させることで、空気抵抗(誘導抗力)を減らし、結果として燃費を向上させる効果がある」


 ここでは、「翼端渦を減少あるいは発生方向を上方に移動させる」と述べているが、どうしてそうなるのかは、全然わかっていない。単に「そうなるのさ」と述べているだけだ。
 他にも、いろいろと説明はあるが、大同小異である。(翼の長さと幅のアスペクト比、というような経験則もあるが、これも理由を直接説明したわけではない。)

 ──

 そこで、以下では私なりに、説明をすることにする。(航空学界の公式見解ではないが、さまざまな物理法則にはうまく合致している。)

 まず、「飛行機はなぜ飛ぶのか?」という問題がある。これについては、先に説明した。
   → http://openblog.meblog.biz/article/83916.html
 ここでは、次のように説明した。
 「飛行機が飛ぶのは、なぜか? それは、ベルヌーイの定理によるのではない。飛行機が空気を下に押し下げるからだ」


 このことは重要だ。このことは、次のようにも説明できる。
 「飛行機が飛んでいるとき、渦は飛行機の後方に流れているように見えるが、それは正しくない。渦は飛行機の上方に流れているのだ」


 仮に、ベルヌーイの定理を信じるのであれば、飛行機が飛んでいるとき、空気は前から後方に流れていることになる。
 しかし私の説明では、飛行機が飛んでいるとき、空気は下方に押し下げられていることになる。ここでは、空気の前後方向の流れは無視してよく、空気が下方に押し下げられているということだけが大事だ。(なぜ飛ぶのかを考えるならば。)
 では、なぜ、空気は下方に押し下げられるのか? 次の二つだ。
   ・ 翼の下方の空気は、主翼の仰角の効果で押し下げられる。
   ・ 翼の上方の空気は、コアンダ効果で引き下げられる。

 このうち、前者が重要である。(翼端渦を考えるときには。)

 ──

 翼の下方の空気は、主翼の仰角の効果で押し下げられる。(上記。)
 これはどういうことかというと、空気が翼の下面にぶつかることで、空気が下方に押し下げられるということだ。(そのとき主翼に圧力を与える。)
 ここで、前後方向の成分を無視すると、上下方向の成分だけが残る。すると、
 「空気が翼の下面にぶつかることで、空気が下方に押し下げられる」
 ということは、次のように図示できる。(飛行機の正面から見た断面図)

  主翼  ───
  空気  ↑↑↑↑

 この図を見ればわかるだろうが、主翼の端にぶつかったところで、境界ができるので、空気は渦をなすだろう。

 ──

 さて。ここで、垂直の小翼を付けると、次の図のようになる。

  主翼  └──┘
  空気  ↑↑↑↑

 端に垂直の壁のようなものが立っていることで、渦の発生がやわらげられるはずだ。
 さらに  という形の角を丸めると、渦の発生はいっそうやわらげられるはずだ。
 このことは、次の二つの形の物体を落下させた場合を考えるとわかる。

   凵     

 この二つを比べよう。これらを空気中で落下させたとする。すると下方から空気がぶつかる。
 凵 の方では、底にぶつかった空気は、角のところでいくらか渦を作る。
 の方では、底にぶつかった空気は、丸まったところで渦の発生が抑制される。

 ──

 以上が私の説明だ。つまり、こうだ。
 「主翼の下方にぶつかった空気は、主翼の角で渦を生じる。ただし小翼があると、角をやわらげる効果があるので、渦の発生を抑えられる」


 そして、この説明の背景にあるのは、次のことだ。
 「飛行機が飛ぶのは、ベルヌーイの定理によるのではない。飛行機が空気を押し下げるからだ。このとき、渦があると抵抗が生じるが、渦がないと抵抗が生じにくい。そのためにあるのが小翼だ」

 ──

 なお、この説明が正しいかどうかは、次のことから検証される。
 「小翼をつけるときは、角を丸めるようにした方が、渦をなくす効果は高い」
 これが事実であれば、私の説明は正しいはずだ。これが事実でなければ、私の説明は間違っていることになる。

 そこで、ネットを検索してみたところ、私の提案(角を丸めること)はすでに実現している、とわかった。
 これは、次の名称で呼ばれる。
  「ブレンデッド・ウィングレット」Blended Winglet(融合的〜)
 その写真は、次の通り。
   → ボーイング 737-700
   → ボーイング 737-400
   → ボーイング 757-200
   → ボーイング 767-300ER (全日空のはこれだ)

 なお、ブレンデッド・ウィングレットを開発したのは Aviation Partners社であり、米国特許( USP5348253 )を取得している。
  → 出典

 結局、角を丸めたブレンデッド・ウィングレットが最善であり、そのことから、私の説明が妥当である、と検証されたことになる。一応は。


( ※ 上記の会社が角を丸めたのはどうしてかというと、私の理論にしたがったのではなくて、たぶん、経験則だろう。空力計算をして、その方が効果的だ、とわかったのだろう。……ただし、いちいち莫大な手間をかけて空力計算をしなくても、同じ結論が本項から導き出される。頭を使えばいいのだ。)

( ※ 同様にして、「小翼の先端は、三角または丸形にして、細くなるようにした方がいい」と結論できる。長方形は駄目だ。理由は、先に述べたことからわかる。)

( ※ 以上の観点からすると、全日空の導入する 767-300ER の小翼は、あまり理想的な形状とは言えない。737-400 の小翼の方がいい。)

( ※ エアバスA380 では、上向きだけでなく下向きの小翼も付けられているが、これはかえってよくない、というのが私の見解だ。渦は減らせるかもしれないが、空気抵抗はかえって増えてしまうだろう。)

( ※ なお、角を丸めることは、渦を減らす効果はあるが、揚力もまた減らしてしまう。だから、やたらと渦を減らすことばかり考えていればいい、というものでもないようだ。両者のかねあいをうまく探る必要がある。……現実には、次の形状がベストだろう。「角を丸めるかわりに、斜めにする。かつ、鈍角の角部分のみを小さく丸める」……それがすなわち、ブレンデッド・ウィングレットだ。)



 【 ポイント 】


 本項のポイントを言うと、次の通り。
 「小翼があると渦を減らせる。それは、前方から後方に生じる渦をなくすからではなく、下方から上方に生じる渦をなくすからだ。見かけ上は、渦は前方から後方に生じているように見えるので、小翼が渦をなくすというのがどうしてだか、わかりにくい。しかし、前後成分をなくして考えれば、渦は下方から上方に生じている、とわかる。そこに渦の理由がある」
 「そして、そのことを知るには、『飛行機はなぜ飛ぶのか』という問題の本質を理解しておくことが必要だ」
( ※ 注。「下方から上方に生じている」と述べたが、現実の三次元空間で下方から上方に生じている、というわけではない。見かけ上では、渦はまさしく水平方向に伸びている。ただし、主翼には仰角があるから、その仰角の分、理論上では、飛行機には上下方向の成分があることになる。)
( ※ このことを理解するには、仰角を極端にして、    という形の翼を考えるといい。その翼の後方で、渦は水平に伸びている。しかし、この翼が前方に移動しているとき、翼は 45度の角度で落下していることに相当する。というのは、翼の下面に、空気がぶつかるからだ。ちょうど、落下する物体の底部に空気がぶつかるように。だから、実際の空間では渦は水平に流れるが、翼に対しては 45度の角度で、下方から上方に空気が流れていることになる。と同時に、渦は翼に対して 45度の角度で、下方から上方に伸びていることになる。)

 【 補足 】
 翼端渦の発生原理は、次のように言えるだろう。
 翼には仰角があり、そこにぶつかった空気は下方に押し下げられる。その背後は、気圧が低下し、真空状態に近くなる。
 ( → 飛行機はなぜ飛ぶのか? の 【 追記 】 にある、水色の図を参照。
    翼の後方で空気が下方に流れている図。)

 このことは、主翼の幅の全体で生じるが、その幅を超えた先(主翼のないところ)では生じない。
 結果的に、その境界部(翼端部)では、段差が生じる。翼端の外側では、空気はまっすぐ(前から後に)流れるが、翼端の内側では、空気は下方に流れて気圧が低下する。
 これを後方から見ると、次の図のようになる。
  ( ※ これは右翼のみ。右翼の左は胴体だが、図では省略。)

      主翼  ━━━━━━━ ・・・
      空気 ↓↓↓↓↓↓↓↓・・・

 このように、主翼の幅の内側では、空気は下方に押し下げられるが、主翼の幅の外側では、空気は下方に押し下げられない。そして、その境界部では、渦が生じる。
 この渦は、図では、「左巻きの図」となる。「↓・」という流れからわかるように、左では ↓ の流れがあるからだ。

 だから、この渦を斜め横の方から見ると、らせん形になっているのがわかるはずだ。つまり、主翼の翼端の後方で左巻きの渦が発生して、それがどんどん後方に流れていくから、全体としては、らせん形になる。
 このらせん形の渦は、実際に観測されている。次のページの一番最後の写真を参照。いくつかの写真が見られる。

 → Wikipedia 英語版

  ( ※ 写真をクリックすると拡大される。)

 ※ なお、写真の一つ(wind tunnel model)を見ると、次のことがわかる。
  「翼端の内側では、空気は下方に流れる。逆に、翼端の外側では、空気は上方に流れる」
   これも不思議ではあるまい。理由は、ちょっと考えれば、わかるはずだ。(わからなければ、下記の Wikipedia の引用を参照。)



 【 参考情報 】


 他のサイトからの引用。
 「ウイングレットとは:
 主翼端に立てられた小さな小翼で、上方だけのものと上下に延ばされたものがあるが、基本的な効果は同じ。飛行中に主翼端から発生する誘導抵抗を押さえることで航続性能を向上させる。主翼端を延長したのと同じ効果が得られる。」

  → http://www.geocities.jp/navy_aircraft/jiten/yougo3.html

 「ウイングレットとは:
 主翼翼端に、主翼に対していくらかの角度をつけて装着する小翼。翼端部の気流の逃げを防止し、誘導抵抗を抑える働きがあると言われているが、実際のところよく分かっていない。」

  → http://www.geocities.jp/torinani/spec.html

 Cause and effects of the wingtip vortices
「A wing generates aerodynamic lift by creating a region of lower air pressure above the wing of an aircraft than beneath it. Fluids are forced to flow from high to low pressure and the air below the wing tends to migrate towards the top of the wing, via the wingtips. The air does not escape around the leading or trailing edge of the wing due to airspeed, but it can flow around the tip. Consequently, air flows from below the wing and out around the tip to the top of the wing in a circular fashion. 」

  → Wikipedia

( ※ この説明をわかるが、本項で述べたことは、Wikipedia [英語版]の説明に非常によく似ている。ただし、別に Wikipedia を真似したわけじゃない。本項を書いたあとで、ネットを調べてみたら、 Wikipedia にも本項とよく似た趣旨のことが書いてある、とわかっただけだ。)
( ※ ただし、すぐ上の【 補足 】の箇所だけは、Wikipedia を読んでから加筆した。そのせいで、内容は、Wikipedia の内容とかなりダブっている。)



  【 関連項目 】
  → 飛行機はなぜ飛ぶのか

※ 飛行機が飛ぶのはベルヌーイの定理によるのではない、ということを示している。
 なお、「飛行機が飛ぶのはベルヌーイの定理による」という俗説は、今日では、航空力学ではほぼ否定されている。「ベルヌーイの定理による」と思っている人は、勘違いしているので、上記項目やネットなどを調べて、誤解を正してほしい。
 通常は、「飛行機がなぜ飛ぶのは、ベルヌーイの定理によるのではないが、どうしてかはよくわかっていない。渦の力で飛ぶ、という仮説がある。コアンダ効果による仮説もある」などと説明されている。
 ともあれ、詳しくは、上記項目を参照。
posted by 管理人 at 21:59 | Comment(1) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後のあたりにいろいろと加筆しました。
 タイムスタンプは 下記  ↓
Posted by 管理人 at 2008年07月24日 23:38
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