2008年07月23日

◆ ゴルフ・ターボの省燃費

 フォルクスワーゲン・ゴルフの新車種が「高出力・省燃費」として話題になっている。では、本当にそうか? ──

 前に TSIについて、「そんなことはない」と否定したことがあった。「高出力かつ省燃費」ではなくて、「高出力または省燃費」にすぎないし、性能向上も大したことはない、という趣旨。
   → 該当項目

 さて。最近、新たにゴルフの新車種が出た。これは TSI トレンドラインというもの。
 従来車種とどう違うかというと、次の通り。

 (1)GT TSI,(2) TSI コンフォートライン,(3) TSI トレンドライン

      燃費 , 出力 ,エンジン形式
  (1) 14.0 km/L , 170ps ,ICターボ + Sチャージャー
  (2) 14.2 km/L , 140ps ,ICターボ + Sチャージャー
  (3) 15.4 km/L , 122ps ,ICターボ

  ※ ICターボ = インタークーラーつきターボ
  ※ Sチャージャー = スーパーチャージャー
  ※ 価格差はおおむね 50万円程度ずつの違い。
  ※ 排気量はいずれも 1.4リッター。

 最初の (1)(2) は「高出力・省燃費」と宣伝されたが、今度出た (3) は対して高出力ではないが、省燃費になっている。「今度のはいっそう省燃費ですごい」とも言われている。

 ──

 なるほど、「省燃費」というのは、間違いではないだろう。実際、従来車種よりも、20%向上している。絶対値としてみても、15.4km/L の 10・15モード燃費は、このクラスの乗用車としては、なかなか立派な値である。燃費のいいので有名なプレミオの 15.6km/L と同じぐらいだ。まさしく「省燃費」と言えそうだ。
 ただし、よく見ると、そうでもない。なぜなら、こいつはプレミアムガソリンを使っているからだ。その分(5%程度)を差し引くと、プレミオよりもかなり劣る。
 シビック(10・15モード燃費は 17km/L )よりは、明らかに劣る。
 また、省燃費で有名なフィットやデミオの 23km/L とは、およそ比べものにならない。
 やはり、こいつも大したことはない、という結論になりそうだ。

 ──

 とはいえ、ここで話が終わってしまっては、詰まらない。今度の新エンジンは、フォルクスワーゲンのエンジンとしては、かなり優秀だ。では、どうしてだろう? 
 そこで、エンジン形式をよく見ると、次のことに気づく。
 「圧縮比がいずれも高い。(1)は 9.7 で、(2)(3) は 10.0 である」


 この圧縮比は、ターボとしてみると、非常に高い。ターボでない普通のエンジンと同じぐらいの圧縮比だ。とすれば、普通にやれば、ノッキクングが起こってしまうはずだ。ではどうして、このように高い圧縮比が可能なのか?

 ──

 調べてみたところ、「直噴技術」が理由であるようだ。次のサイトを参照。
  → BMW の直噴技術

 これは BMW の直噴技術だが、ゴルフもだいたい似たような事情なのだろう。つまり、「高圧直噴による筒内冷却」である。
 なるほど、これだと、冷却効果が高まり、圧縮比が高まる。すると当然、オットーサイクルの熱効率が向上するから、燃費はよくなる。原理的に当然の話。

 ただし、である。以上の方法は、いずれも金を食う。
  ・ プレミアムガソリンは高い
  ・ 高圧直噴のシステムも高い。
  ・ ターボも高い。
  ・ インタークーラーも高い。
  ・ スーパーチャージャーも高い。
  ・ さらに言えば、7段AT も高い。


 あれやこれやと、ものすごく金がかかる。それでいて、省エネによるガソリン代の節約は、たいしたことがない。これでは割に合わない。

 上記の6点セットを実行して、「省エネを実現しました」という方針は、今後、世の中の主流にはならないだろう。
 どちらかと言えば、上記のなかで有望なのは、「高圧直噴」だけだ。直噴エンジンは、現在でも有望な技術だが、それを発展させる形で、高圧直噴もしだいに普及していくことになりそうだ。
 一方、それ以外のものは、「エンジンそのものの基本性能を向上させる」という方式ではなくて、「高価な付加装置を追加することで省燃費を実現する」というものなので、あまり普及することはないだろう。

 ──

 ちなみに、ホンダ・フリードだと、燃費は 16.4km/L である。重量はゴルフとほぼ同程度で、燃費はもっと良い。しかも、余計な付加装置を使わないし、ガソリンはレギュラーだ。……こっちの方が、ずっといいですね。
 また、フィットやデミオは 23km/L 程度だし、近い将来に発売される予定のトヨタ iQ は 30km/L 以上らしい。ゴルフの値は、いくら省燃費だと言っても、霞んでしまう。

( ※ ただし、欧州では、「省燃費だ」と言うことで、バカ売れしているそうだ。だまされる人が多いんですね。……というか、「燃費」を口にしながら、本当は「パワー」の欲しい人が多いのかも。たしかに、フィットやデミオは省燃費だが、パワーがない。……結局、「省エネ」を口にしながら、本音は「浪エネ」をしてパワー全開を楽しみたいのかも。自動車ドライバーの建て前と本音。)



  【 関連項目 】
 → 輸入車の燃費
 ( ※ 本項の続報。ゴルフ・ターボの燃費の実測値。)
 
 → ミラーサイクル
 ( ※ 「ミラーサイクル + バルブトロニック」が有望だ、という話。)

 ──

 《 参考サイト 》

 → 読売新聞のゴルフ賛美
 ( ※ 「ゴルフ・ターボはすばらしい省燃費だ」という嘘記事。
     夕刊掲載日は 2008-09-25 )
posted by 管理人 at 21:12 | Comment(3) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
燃費だけを考えるなら車重を減らすことが最も効果が大きい
と思うのですが、大型トラック等と並走する現在の道路事情
じゃ難しいのでしょうね。
現在の自動車が電気自動車に置き換わる際には、車重規制して
軽くて華奢な車になるようにしてもらいたいですね。
Posted by AI at 2008年08月11日 08:07
読売新聞の記事へのリンクを、末尾に加筆しました。
Posted by 管理人 at 2008年09月25日 19:12
俺のトレンドラインと友人のGT TSIはカタログデータ以上の燃費ですが…まぁ 田舎はストップandゴーが少ないですからね
Posted by たか at 2009年04月18日 07:19
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