フォルクスワーゲン・ゴルフの新車種が「高出力・省燃費」として話題になっている。では、本当にそうか? ──
前に TSIについて、「そんなことはない」と否定したことがあった。「高出力かつ省燃費」ではなくて、「高出力または省燃費」にすぎないし、性能向上も大したことはない、という趣旨。
→ 該当項目
さて。最近、新たにゴルフの新車種が出た。これは TSI トレンドラインというもの。
従来車種とどう違うかというと、次の通り。
(1)GT TSI,(2) TSI コンフォートライン,(3) TSI トレンドライン
燃費 , 出力 ,エンジン形式
(1) 14.0 km/L , 170ps ,ICターボ + Sチャージャー
(2) 14.2 km/L , 140ps ,ICターボ + Sチャージャー
(3) 15.4 km/L , 122ps ,ICターボ
※ ICターボ = インタークーラーつきターボ
※ Sチャージャー = スーパーチャージャー
※ 価格差はおおむね 50万円程度ずつの違い。
※ 排気量はいずれも 1.4リッター。
最初の (1)(2) は「高出力・省燃費」と宣伝されたが、今度出た (3) は対して高出力ではないが、省燃費になっている。「今度のはいっそう省燃費ですごい」とも言われている。
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なるほど、「省燃費」というのは、間違いではないだろう。実際、従来車種よりも、20%向上している。絶対値としてみても、15.4km/L の 10・15モード燃費は、このクラスの乗用車としては、なかなか立派な値である。燃費のいいので有名なプレミオの 15.6km/L と同じぐらいだ。まさしく「省燃費」と言えそうだ。
ただし、よく見ると、そうでもない。なぜなら、こいつはプレミアムガソリンを使っているからだ。その分(5%程度)を差し引くと、プレミオよりもかなり劣る。
シビック(10・15モード燃費は 17km/L )よりは、明らかに劣る。
また、省燃費で有名なフィットやデミオの 23km/L とは、およそ比べものにならない。
やはり、こいつも大したことはない、という結論になりそうだ。
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とはいえ、ここで話が終わってしまっては、詰まらない。今度の新エンジンは、フォルクスワーゲンのエンジンとしては、かなり優秀だ。では、どうしてだろう?
そこで、エンジン形式をよく見ると、次のことに気づく。
「圧縮比がいずれも高い。(1)は 9.7 で、(2)(3) は 10.0 である」
この圧縮比は、ターボとしてみると、非常に高い。ターボでない普通のエンジンと同じぐらいの圧縮比だ。とすれば、普通にやれば、ノッキクングが起こってしまうはずだ。ではどうして、このように高い圧縮比が可能なのか?
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調べてみたところ、「直噴技術」が理由であるようだ。次のサイトを参照。
→ BMW の直噴技術
これは BMW の直噴技術だが、ゴルフもだいたい似たような事情なのだろう。つまり、「高圧直噴による筒内冷却」である。
なるほど、これだと、冷却効果が高まり、圧縮比が高まる。すると当然、オットーサイクルの熱効率が向上するから、燃費はよくなる。原理的に当然の話。
ただし、である。以上の方法は、いずれも金を食う。
・ プレミアムガソリンは高い
・ 高圧直噴のシステムも高い。
・ ターボも高い。
・ インタークーラーも高い。
・ スーパーチャージャーも高い。
・ さらに言えば、7段AT も高い。
あれやこれやと、ものすごく金がかかる。それでいて、省エネによるガソリン代の節約は、たいしたことがない。これでは割に合わない。
上記の6点セットを実行して、「省エネを実現しました」という方針は、今後、世の中の主流にはならないだろう。
どちらかと言えば、上記のなかで有望なのは、「高圧直噴」だけだ。直噴エンジンは、現在でも有望な技術だが、それを発展させる形で、高圧直噴もしだいに普及していくことになりそうだ。
一方、それ以外のものは、「エンジンそのものの基本性能を向上させる」という方式ではなくて、「高価な付加装置を追加することで省燃費を実現する」というものなので、あまり普及することはないだろう。
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ちなみに、ホンダ・フリードだと、燃費は 16.4km/L である。重量はゴルフとほぼ同程度で、燃費はもっと良い。しかも、余計な付加装置を使わないし、ガソリンはレギュラーだ。……こっちの方が、ずっといいですね。
また、フィットやデミオは 23km/L 程度だし、近い将来に発売される予定のトヨタ iQ は 30km/L 以上らしい。ゴルフの値は、いくら省燃費だと言っても、霞んでしまう。
( ※ ただし、欧州では、「省燃費だ」と言うことで、バカ売れしているそうだ。だまされる人が多いんですね。……というか、「燃費」を口にしながら、本当は「パワー」の欲しい人が多いのかも。たしかに、フィットやデミオは省燃費だが、パワーがない。……結局、「省エネ」を口にしながら、本音は「浪エネ」をしてパワー全開を楽しみたいのかも。自動車ドライバーの建て前と本音。)
【 関連項目 】
→ 輸入車の燃費
( ※ 本項の続報。ゴルフ・ターボの燃費の実測値。)
→ ミラーサイクル
( ※ 「ミラーサイクル + バルブトロニック」が有望だ、という話。)
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《 参考サイト 》
→ 読売新聞のゴルフ賛美
( ※ 「ゴルフ・ターボはすばらしい省燃費だ」という嘘記事。
夕刊掲載日は 2008-09-25 )
2008年07月23日
過去ログ

と思うのですが、大型トラック等と並走する現在の道路事情
じゃ難しいのでしょうね。
現在の自動車が電気自動車に置き換わる際には、車重規制して
軽くて華奢な車になるようにしてもらいたいですね。