2008年06月25日

◆ 太陽光発電と補助金1

 太陽光発電のために政府は莫大な補助金を投じる。
 しかし私は、これは時期尚早と考える。 ──

 「ドイツは太陽光発電に熱心だから、日本もそうせよ」
 というキャンペーンを朝日はやっていた。そのせいか、最近、政府はその方針を取るようになった。つまり、
 「太陽光発電のために莫大な補助金を投じる」
 という方針である。

 参考記事を示そう。
 提言案によると、平均約230万円の設置費用を半額にするため、「思い切った支援措置」が必要と指摘。経産省は、屋根や壁と一体の太陽光パネルなど、大幅なコスト削減につながる製品への補助金を検討中で、来年度から支給する方針。集合住宅も対象となる。補助額は発電設備1キロワットあたり2万円だった過去の額を上回る見通し。
 大規模な「メガソーラー発電」を全国展開するための支援も打ち出す。現在は事業費の3分の1の補助率を引き上げることを検討している。
( → 朝日新聞 )(関連記事: 毎日新聞
 ──

 政府は太陽光発電をドイツ以上に大幅に普及させる狙いのようだ。そのためには、補助金の額は大幅になる。ま、3割前後になるだろう。(1割以下では、普及させる効果はほとんどないので。)

 しかし、である。そのためには、莫大な金がかかる。一般に、3割前後という補助金は、途方もない額だ。福祉分野ならいざ知らず、産業分野でこれほどの補助金を出すことは、(農業を除けば)まず、ありえない。国内メーカー限定でやれば、「不公正貿易」とたちまち糾弾される。これは「呼び水」となるような補助金ではなくて、「資金援助」に近い巨額の金である。ほとんどメチャクチャだ。

 これほどの途方もない巨額の金を投じて、いったい、何ができるというのか? 実は、「開発期間を1年短縮する」というぐらいの効果しかない。だったら、一年待てばいい。それだけのことだ。

 ──

 実を言うと、もっといい方法がある。それは、
 「数年ぐらい待つ」
 ということだ。そのことで、次のメリットが生じる。
 「石油価格や天然ガスの価格が上昇する。だから、太陽光発電の価格競争力が付く」
 「数年間の間に、技術革新が進み、太陽光発電のコストが3割ぐらいは下がる」

 以上のことから、次の事態が発生する。
 「石油価格や天然ガスに比べて、太陽光発電のコストは、1割高ぐらいでしかない」

 この時点で、補助金を投入すればいい。コストの差は、たったの1割。しかも、この差は、さらに縮む見通しが強い。石油価格はどんどん上昇するだろうし、太陽光発電のコストは一定だ。となると、「太陽光発電の方が有利かも」と思うユーザーがたくさん出る。(特に企業は。)
 その時点で、補助金を5%ぐらいだす。すると、価格差はたったの5%になるので、とても多くの企業が太陽光発電に乗り換えるだろう。だから、補助金は、そのときのために取っておけばいいのだ。

 では、現実には?
 価格差が5%になっても、出すべき補助金がない! たとえ5%であっても、国中で大量に太陽光発電をやりたがる企業が続出したら、その全員に補助金を出すには、たくさんの金がかかる。それゆえ、企業が「太陽光発電を」と思っても、5%の補助金がないので、普及させることができなくなるのだ。

 実は、これは、冗談ではない。以前、国が太陽光発電に5割ぐらいの補助金を出していたら、あまりにも人気が出て、数カ月で補助金がなくなってしまった。(補助金の枠を使い切ってしまった。)
 そのせいで、以後、「太陽光発電をやりたい」と思う家庭が出ても、「補助金はもうありません。補助金を出せません」ということになった。それゆえ、年度の初めには、大量の太陽光発電設備が売れたが、年度の途中からは太陽光発電の設備が売れなくなった。メーカーとしては、稼働率が激変したので、踏んだり蹴ったりである。おまけに、こういう馬鹿げたことが起こったせいで(……かどうかはともかく)、翌年からは補助金の枠がなくなってしまった。  (^^);

 ──

 結論。

 現在は太陽光発電の普及の黎明期である。黎明期には、やたらとスタートダッシュしようとしても、息切れしてしまうだけだ。そんなことはしない方がいい。むしろ、今はしっかりとエネルギーを溜めて(つまり補助金を貯めて)、数年後に、普及期が来たら(夜が明けて朝が来たら)、そこで一挙に太陽光発電(の太陽電池)の大量生産をすればいい。
 そして、それまで、数年ぐらいのあいだは、お馬鹿なドイツの補助金を食い物にしていればいいのだ。メーカー各社は、欧州でドイツの補助金をもらって、少しずつ食いつなげばいい。一方、日本は、生産よりも技術開発のために、補助金を投じればいい。すぐに時代遅れになる生産設備に、大量の資金を投じても、ゴミを建設するようなもので、無駄である。
 今はまだ、生産設備に金を投じるべきではない。数年後に、大量生産の時期が来たら、そのときに莫大な金を投じればいいのだ。そうすれば、世界市場を制覇できる。



 [ 付記 ]
 本項のことは、私としては日本メーカにお勧めしているのだが、現実には、これを実行するのは、日本メーカーではなく、韓国メーカーだろう。
 韓国メーカーは、あと数年ぐらいは、日本政府の補助金をもらって、他人のフンドシで利益を上げるだろう。そして、数年後に、大量生産の時期が来たら、韓国政府はここぞとばかり、補助金を大量に投じて、一挙に世界市場を制覇する。(今のRAMや液晶みたいなものですね。)
 そして、そのとき、日本メーカーが日本政府に「補助金を出してくれ」と頼んでも、手遅れです。日本政府はたぶん、けんもほろろだろう。「これまで数年間、補助金を出してやったんだ。今さら出せないね。もう大量生産の時期なんだから、おまえたちが勝手にやれ」
 こうして日本企業は、太陽光発電(太陽電池)の市場をみすみす失ってしまう。せっかく開発しても、その大量生産はすべて韓国メーカーにさらわれてしまう。
 しかし、それは、自業自得なのである。目先の富にばかり目を奪われて、将来を見通せなかったからなのだ。ちゃんと本項に、「そんなことじゃ駄目だぞ」と書いてあるのに、それを無視して、目先の補助金ばかりを欲しがっていたからなのだ。
 で、結局、彼らには、何が残るか? 臨海部にある、太陽光電池パネルだけだろう。鳥のだらけの。



  【 追記 】
 私としては、最善の方法として、次のことをお勧めする。
 目的は、大量生産技術ではなく、新技術の開発である。とはいえ、新技術の開発に補助金を出すのは、容易ではない。どうやって将来の新技術を評価するかは、未来を評価するのと同様で、難しいからだ。そこで、かわりに、こうする。
 「既存の太陽光発電技術(特許権)を、高額で政府が買い取り、日本企業全般で共有する」
 この場合、企業は「自社の特許権を奪われて損だ」と思うかもしれない。しかし、各社がみんな特許権を奪われるのであれば、かえって得をする。なぜなら、自社が奪われる分は1だが、各社からもらえる分はその何倍か何十倍にもなるからだ。
 しかも、奪われるといっても、無料で奪われるのではなく、お金をもらえる。つまり「買い取ってもらえる」ということだ。要するに、ここにあるのは、「補助金」というよりは、「特許権の買い上げ制度」である。そして、買い上げられた特許権を、国は各企業に渡す。(タダで渡すのも何だからごく低価格で渡す。)
 ここでは、国の補助金は、各企業に行き渡るのではない。優秀な特許を開発した企業に行き渡る。そのことを狙って、各企業は自社で効率的に技術開発をすればいい。そして、国が各企業に渡すのは、補助金ではなくて、開発された技術なのである。金そのものは、優れた技術を開発した企業に渡る。(買い取り。)
 結局、こうすれば、国の金は「技術開発」のために使われることになる。しかも、「LSI開発協同組合」みたいな、組合方式とは違って、各企業が独自に開発体制を取れる。しかも、現状とは違って、他社の技術を安価に利用できるようになるので、国全体の技術開発が急激に進む。たとえば、現状では、シャープの技術を使ってさらに開発するのは、シャープ自身に限られるだろうが、これからは、シャープの技術を使って開発するのは、日本中のどの企業でもいい、というふうになる。国全体が技術を持ち寄って、国全体が一つの巨大企業になるようなものだ。こうして技術開発は急激に進むようになる。



 【 関連項目 】

  → 太陽電池
  → 太陽光発電
  → 太陽光発電の問題

  → 燃料電池の補助金
posted by 管理人 at 19:25| Comment(2) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
韓国メーカーですか?
以前の「有機ELは韓国メーカーが独占する」っていう話はどうなりました?
Posted by はる2 at 2008年06月26日 03:57
イヤミにマジレスされても・・・
Posted by 管理人 at 2008年06月26日 05:09
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