2008年06月24日

◆ 省エネの指標は努力か?

 省エネの目標は何であろうか? 目標が「省エネ」そのものであるならば、エネルギーの節約が大切であるはずだ。一方、目標が「精神運動」であるならば、省エネの努力(だけ)が大切であるはずだ。 ──

 この観点からして現実を見ると、
   省エネの努力が大切である

 とわかる。つまり、
   省エネの目標は「精神運動」である

 とわかる。
 一方、
   エネルギーの使用量を減らすことは大切でない

 とわかる。つまり、
   省エネの目標は「エネルギーの節約」でない

 とわかる。

 いかにも皮肉なことだが、以上は事実である。そのことを例証する。

 ──

 (1) 地球温暖化防止

 洞爺湖サミットでは、地球温暖化防止のため、「野心的なシナリオを真剣に検討する」という妥協案に落ち着くことになったようだ。
( → 朝日のサイト
 その背景の事情については、朝日朝刊 2008-06-24 に詳しいが、例によって例のごとしである。つまり、米国が反対する。自国は大量に温暖化ガスを排出するが、努力したくない。そこで、「中国やインドだっていっぱい排出しているじゃないか。こっちもやるべきだ」と主張する。
 なるほど、「中国やインドも」という趣旨は正しい。が、だからといって、「それまで自国も免除してくれ」というのは、ご都合主義も甚だしい。
 とはいえ、それというのも、日本や欧州が及び腰だからだ。どこの国もまた、「自分の国が有利になりたい」と思い込んでいる。だから、「あらゆる国に一律の努力目標を据える」という欧州ふうの妥協案が成立した。(以前の京都条約)

 以上は事実だ。そして、その本質は? 
 「環境保護は、実効性ではなくて、努力が目標となっている」
 ということだ。つまり、
 「各国がどれだけ努力するか」
 という一律の目標ばかりが重視される。同じように努力するのであれば、誰にも可能だから、誰もが納得できる、という妥協案だ。
 しかし、その場合には、先進国の努力から除外された中国やインドが有利になる。そこで、米国の反発が出てくるわけだ。

 では、正しくは? こうだ。
 「環境保護は、努力でなく、実効性を目標とするべきだ」
 つまり、
 「各国がどれだけ努力するか」
 という一律の目標などは、どうでもいい。かわりに、
 「各国がどれだけ浪費しているか」
 という事実のみが重要となる。
 そして、この事実に基づけば、次のような対策が出る。
 「温暖化ガスに一律に課税する」

 これのみが正しい政策だ。

 具体的に言おう。
 現状では、「日本は5%減らす、欧州は6%減らす、米国は7%減らす」というような努力目標があるだけだ。(数字は一例にすぎない。)
 しかし、むしろ、こうするべきだ。
 「各国はその排出量に比例して、課徴金を払う」
 「払った課徴金を、人口に応じて、分配する」


 この結果は、次のようになる。
  ・ 日本 …… 高い生産高に比して、少量の排出量
  ・ 欧州 …… 高い生産高に比して、中度の排出量
  ・ 米国 …… 高い生産高に比して、多量の排出量
  ・ 中国 …… 少ない生産高であり、少ない排出量


 したがって、課徴金の額は、次の通り。
  ・ 日本 …… 少額の支払い
  ・ 欧州 …… 中額の支払い
  ・ 米国 …… 多額の支払い
  ・ 中国 …… 多額の受け取り(将来はそうではない)


 これは、もっともな状況だ。理由は、次の通り。
  ・ 日本 …… 省エネ優等生だから、少額の支払い
  ・ 欧州 …… 省エネの凡才だから、中額の支払い
  ・ 米国 …… 省エネ劣等生だから、多額の支払い
  ・ 中国 …… 今は途上国だから、もらう側でいられる。


 これは、省エネの実態に比例する形であり、きわめて合理的な分配だ。
 しかしながら、現実には、そうはしない。なぜか? 省エネはただの「努力目標」にすぎないからだ。「どれだけ努力するか」ということだけが大事であって、「現実に排ガスを減らす」ということは目標になっていないからだ。そして、それというのも、「省エネ優等生である日本を有利にするのは損だ」と欧米諸国が思っているからだ。そしてまた、日本自身、それに対して抗弁できず、「長いものに巻かれろ」と思っているからだ。
 
 要するに、「省エネをしよう」なんて、誰も思っていないのである。「省エネの努力をしよう」と思っているだけだ。つまり「省エネをしているフリをしよう」と思っているだけだ。他人から見て、省エネの努力をしていると見えれば、それでいい。現実に省エネをすることなんか、誰も考えていない。
 そのことが、世界の現実を見るとわかる。

 ──

 (2) 自動車のグリーン税制

 最新の自動車雑誌で指摘されていた内容を、転載する形で紹介する。(雑誌名は忘れた。済みません。ただし、周知の事実。)
 現在の自動車には、グリーン税制という環境保護税制がある。
    → 国土交通省のサイト ( PDF ファイルに詳細がある)

 この PDF ファイルを見ればわかるとおり、区分は重量ごとに区分されている。つまり、「ガソリンをどれだけ食うか」という絶対量ではない。「重量の重たいものにはハンディが付く」という形になっている。
 たとえば、1266 kg のところに境界があって、それ以上とそれ未満とで、基準が異なる。すると、次のことが起こる。
 「 1260 kg の自動車に、重りをつけて 1270 kg にする。すると、重りをつけた分、燃費は少し悪くなる。ところが、区分が上の区分になるので、以前に比べてガソリンを食わないと見なされて、優良な自動車と見なされ、グリーン税制で減税になる」
 たとえば、燃費が 15.8 だったとする。この値は、1260 kg の自動車としては、標準以下であり、優遇税制を受けられない。しかし、重りを 10 kg つけて、燃費が 15.7 になったとする。すると、燃費は悪くなるのだが、区分が上の区分になるので、「特別に燃費の優れた車」と見なされるようになる。

 比喩的に言おう。
 あなたは普段 1000カロリーの昼食を食べていたとする。「食べ過ぎだなあ」と思っていたとする。しかし、あなたがデブになって、1100カロリーの昼食を取ると、今度は「デブの割には小食ですね」と言われるようになる。なぜなら、食べる絶対量が問題ではなくて、「デブはもともとたくさん食べていい」というハンディがつけられるからだ。そして、こういうハンディに基づいて、国家らお金をプレゼントしてもらえる。 

 あまりにも馬鹿げたことだ、と思えるだろう。勝手にハンディをつけることで、エネルギーを浪費するものに、国のお金を勝手にプレゼントするのだから。
 この伝で言うと、リッターカーに乗って省エネしている人は、ガソリンを食わなくても、「おまえは省エネに不熱心だ」と詰られ、ワンボックスのハイブリッドに乗っている人は、ガソリンを馬鹿食いしても、「おまえは省エネに熱心だ」と褒められる。
 要するに、ガソリンを浪費するかどうかが問題なのではなくて、努力しているかどうかだけが問題なのだ。そして、その努力の程度に対して、国から交付金が与えられる。

 ──

 結論。

 こうして、冒頭で述べたことが、明らかになった。
 今の世の中では、省エネとは、ただの精神運動にすぎない。国もそうだし、マスコミもそうだし、世間もそうだ。(だから「レジ袋有料化」という無意味な精神運動をしたがる。)
 今の世の中では、「省エネをすること」「資源を節約すること」など、誰も考えていない。「省エネをする努力」「資源を節約する努力」だけが、大切なのだ。
 ま、パフォーマンスか宣伝みたいなものである。「私はこんなに善人ですよ」というパフォーマンスをしたがっているだけ。誰も真の省エネなんか実行しようとしない。

 人類というのは、気違いの集団なのだ、と思った方がいいかも。あるいは、「省エネ教」という宗教を信じて、単にそのお題目を唱えているだけなのかも。「アーメン」と唱えるように。「南無阿弥陀仏」と唱えるように。……そこでは、「省エネ」と唱えることだけが、救済されるための唯一の方法である。現実に省エネをすることなんか、誰も実行していないのだ。というか、実行しようとも思っていないのだ。
 あくまで、「省エネのフリ」だけである。

( ※ 「省エネのフリ」の典型が、「レジ袋の節約」だ。石油全体の 0.15% を節約することに血眼になって、残りの 99.85% の浪費をほったらかし。湯水のごとく石油を浪費しながら、一雫の節約をして、「ああ、あたしはなんて善人なのかしら」と自惚れる。ま、気分はいいでしょうけどね。有閑マダムの趣味でしょうか。)



 ※ 以下は、細かな注記。うるさい人以外、読む必要はありません。

 [ 補注1 ]
 「いや、ただの努力目標じゃないぞ。温暖化ガス削減の数値目標があるぞ。50%減だ」
 という声もあるかもしれない。だが、この数値目標は「できたらいいな」という願望であるにすぎない。ただの夢だ。つまり、「他人がやってくれたらいいな」と思うだけで、「自分がやります」という目標ではない。それが証拠に、達成しない場合の罰則がない。
 ここでも嘘をついて、人々をだましているわけだ。

 [ 補注2 ]
 自動車のグリーン税制については、いくらか補正が必要となりそうだ。
 というのは、もともと自動車重量税というのがあって、これは、重量が増えるほど、税額が増える。だから、「重量を増やすと減税になる」というのは、単純には成立しない。重量税の増税と、グリーン税制の減税とを、差し引きする必要がある。
 ちゃんとそれを計算するべきなんだが、面倒なので、自動車雑誌に任せることにして、私としてはいちいち計算しない。だいたい、税額の計算なんて、面倒で仕方がない。  (^^);
 ただ、ネットでざっと調べたところでは、グリーン税制の減税額の方が、かなり上回るようですよ。つまり、「燃費の悪い方が減税になる」と言うことは、ちゃんと成立するようだ。
( ※ 間違っていたら勘弁して。税にうるさい人は、実際に検証してみるといいだろう。……と書いただけで、ああ、頭が痛くなってきた。  (^^); )
posted by 管理人 at 20:29| Comment(0) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
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