2008年05月28日

◆ 太陽光発電の是非

 太陽電池による太陽光発電が話題になっている。「炭酸ガスを出さないので地球環境に良い」という触れ込み。しかし、本当にそうか? ──

 これについては、「日本よりもドイツの方が進んでいる」という新聞記事がしばしばあふれる。たとえば、次のサイトにもある。
   → 日経エコノミー
   → 朝日社説朝日記事
 つまり、日本は2〜3年ほど前までは世界首位だったのに、ドイツが急伸して、ドイツが世界一の座を占めるようになった。日本は太陽光発電の分野で世界一の座を失った。それというのも、ドイツは補助金で太陽光発電を推進しているのに、日本は逆に補助金を廃止して推進をやめたからだ。
 「だから日本もドイツのように莫大な金を投じて、太陽光発電を推進するべきだ」

 という主張がしばしば出る。特に、朝日がそうだ。(上記以外にもたくさんの新聞記事がある。ネットには表示されないが。)
 朝日の試算では、一般の家庭でで、月に 500円。年に 6000円。それを国中から強制的に徴収する。これほどの巨額の金を、太陽光発電のために使うわけだ。

 ──

 ただし、朝日のような主張には、いくつか難点がある。それを示す。

 (1) 原発との対比

 単に「温暖化ガスの減少」をめざすだけなら、原発だって構わない。実際、フランスは、原発によって「温暖化ガスの減少」を実現している。
 一方、ドイツが太陽光発電をやたらと推進しているのは、「原発の廃止」を国の方針としているからだ。つまり、ドイツがやっているのは、「温暖化ガスの減少」ではなくて、ただの「原発廃止」である。朝日のような主張は、話の本質をずらしてしまっている。
 だから、この問題を解決する方法は、次のようにすればいい。
 「原発にするか太陽光発電をするかを、各家庭に選ばせる。原発を選んだ家庭は、そのまま。太陽光発電を選んだ家庭は、月に 500円の値上げ。その選択にしたがって、原発会社は発電量を決める」

 これなら誰からも文句は出ないはずだ。
 なお、私の予想では、「太陽光発電の推進」を書いた記者の家庭では、きっと「原発」を選択するだろう。なぜなら、他人の財布の金については正論を吐けるが、自分の財布の金については急にケチになるからだ。また、たとえ自分がケチでなくても、奥さんがケチになるに決まっている。  (^^);
 結局、きれいごとばかりを言っていても駄目だ、ということ。

 (2) コストと成果

 「このまま放置すると、太陽光発電の技術開発でドイツに後れを取る」
 という心配がありそうだ。だが、その心配はない。なぜか? 
 ドイツの補助金は、太陽電池にもたらされる。とすれば、内外無差別の原則から、日本の太陽電池メーカだって、その補助金をもらえるはずだ。つまり、ドイツでは太陽電池の市場が急に拡大しているとしても、その恩恵を受けるのは、ドイツの会社だけでなく、日本の会社もあるはずだ。サンヨーとかシャープとか。……だったら、ドイツの補助金をもらって、日本の会社が伸びればいい。それだけのことだ。別に、日本の会社が後れを取るわけじゃない。
 日本としては、むしろ、「技術開発援助」のために金を遣えばいい。たとえば、大学との産学協同とか、太陽電池開発協同組合への資金投入とか、太陽光発電の技術開発への委託金とか、プロジェクトの応募への資金投入とか。
 ともあれ、技術開発に直接金を投じればいいのだ。一方、ドイツのようなやり方は、生産に対する補助金だ。
 結局、次の二通り。
  ・ 技術開発への補助金 …… 日本
  ・ 商品販売への補助金 …… ドイツ

 どちらがいいか? 当然、日本の方がいい。
 一般に、次のことが言える。
 「すでに完成した技術を普及させるためには、商品販売への補助金を出せばいい。しかし、未完成の技術を開発するためには、技術開発に補助金を出せばいい」

 ドイツでは、莫大な補助金を出しているが、その補助金の大半は、無駄に消えてしまっている。それよりは、たとえ少額でも、技術開発のために補助金を出す方がいい。
 同じが金を出すにしても、有効な方法と無駄な方法との二通りがある。そして、朝日の推奨する方法(ドイツ流)は、金の垂れ流しである。これはまあ、公共事業のようなものだ。業者が潤うだけで、一般国民への還元はほとんどない。ただの無駄遣い。

 (3) もっと良い方法

 どうせ商品への補助金を出すのなら、もっと良い方法がある。それは、次のことだ。
 「日本やドイツではなく、アフリカにおいて、太陽光発電を推進する。その上で、排出権取引によって、自国の太陽光発電を増やしたのと同じ効果をもたらす」

 つまり、自国内において太陽光発電を推進するのではなく、地球規模の視点で、自国でない他国で太陽光発電を推進するわけだ。
 これには次の意味がある。
 (1) 高緯度ではなく低緯度で太陽光発電をするので効率的。
 (2) 曇りではなく晴れの地域で太陽光発電をするので効率的。
 (3) 広域の土地で送電線のない土地で発電することが容易。


 解説しよう。
 (1) ドイツというのは、欧州の最北部付近(北欧のすぐそば)にあり、太陽光発電の効率は非常に悪い。夏でも日本の冬ぐらいであり、冬には北極並みだ。そんな高緯度のところで太陽光発電をしても、効率が悪い。むしろ、低緯度のアフリカで太陽光発電をする方がいい。
 (2) ドイツというのは、曇りの多い土地だ。それよりは、アフリカの内陸部のように、晴れの多い土地で太陽光発電をする方が、効率的だ。
 (3) もともと送電線の普及した先進国で太陽光発電をしても、特にメリットはない。しかし、送電線の普及していないアフリカでなら、太陽光発電のメリットは大きい。なぜなら、送電線を敷設しないで済むからだ。
 アフリカというのは非常に広大であって、そこに人口がけっこう分散している。そんなところに送電線を敷設するのは、莫大な経費がかかり、とても非効率的だ。しかし、太陽光発電なら、送電線を敷設しなくても、現地で分散して発電をできる。たとえば、田舎の小学校に太陽光発電の小さな施設を作れば、それで済む。一方、田舎の小学校にまで送電線を敷設するとしたら、莫大な経費がかかる。
( ※ なお、臨時の発電設備としては、ディーゼルエンジンやガスタービンのエンジンがあってもいい。ただしこれらは、燃料が必要なので、いつも動かすわけには行かない。)

 ──

 結論。
 太陽光発電というのは、先進国よりも後進国でこそ、いっそうメリットが大きく現れる。だから、どうせ「太陽光発電を普及させよう」と唱えるのであれば、「先進国でなく後進国で」と唱えるべきだ。それなら、道理が通る。そして、そのあとは「排出権取引」の形で、自国の「炭酸ガス削減」に参入すればいい。
 一方、ドイツのような高緯度の曇った土地で太陽光発電をするのは、非常に非効率的である。無駄の極み。
 そして、そんな無駄を「すばらしい」と推奨する朝日のような方針は、まったく間違った方針である。



 [ 付記 ]
 教訓。
 良いことをなそうとするのはいい。しかし、善意だけがあって、知恵がないと、良いことをなしているつもりで、かえって馬鹿げたことをなす結果になる。
 何事であれ、善意だけでは足りない。善意を生かすだけの知恵が必要だ。そして、自分に知恵がないのであれば、せめて、インターネットで物事を調べようとするだけの「最小限の知恵」を身につけるべきだ。
 朝日はときどき、「ネットで調べるだけでは、考える力は身につかない」という記事を載せる。それはそのとおり。しかし、「ネットで調べることさえもしない」のでは、「考えることを拒否している」としか思えない。
 朝日のような発想は、「自分は正しい」とだけ信じて、自分の声だけを声高に唱えようとすることだ。しかし、その前に、他人の声を聞くべきだろう。そのために、ネットには莫大な情報が用意され、また、Google が情報整理をしてくれているのだから。
 「ネット時代のリテラシー」とは、「ネット情報を整理・獲得する能力」のことである。そして、それは、すべてではないが、必要最小限のことである。そんなイロハもできないで、ただ自分の思想だけを声高に主張するだけのような新聞は、ほとんど情報としての価値がない、と言える。
 


  【 追記 】
 あとで調べたら、前にも同趣旨の話を記していた。
  → 太陽電池
posted by 管理人 at 20:08| Comment(1) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
先日、秋田に行ったとき、国道沿いに延々と大きな太陽光発電パネルが並んでいました。

緯度も低いし、晴天率も低い、更には、雪がパネルに積もるような地域、地元の友人も不思議がっていました。

今、たくさん売りさばいているシリコン結晶タイプより、進んだ技術が5年ほど前に行った応用物理学会では盛んに議論されていたのに。
おそらく、(補助金狙いのせいで)今のタイプの太陽光発電装置が飽和するので、研究活動(予算配分)はだいぶ下火になっていると思います。
Posted by 磯崎ゆい at 2014年08月23日 22:39
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