これを全国一斉に同時に行なう方針を固めたという。この問題について考える。 ──
このことは朝日新聞で報道された。
地上アナログ放送は全国一斉に停止する方針を、総務省などが固めた。予期できない問題の発生をチェックするため、一部地域での「先行停波」を検討したが、時間的な余裕がなく地デジの普及が遅れている地方が混乱すると判断した。この問題については、「延期するしかない」という見解が識者のあいだには強い。短期間でそんなに普及させることは無理だ、というのが理由だ。生産体制からして、それほど急激に生産することはできそうにない。
先行停波する場合は、視聴者数が都市より少ない地方での実施が想定された。しかし、地方ではデジタル中継局の設置時期が遅く、具体的なデータは公表されていないものの「受信機の普及も大都市ほど進んでいない」(総務省幹部)。その状況での先行停波には地方の自治体に反発があり、協議会は「特定の地域を対象にすれば地域間の不公平感が高まる」として、先行停波を断念した。
一斉に停波すれば地域間の公平性は保たれ、視聴者にも「11年7月24日にアナログ放送は一斉に終わる」と周知しやすい。しかし、予期できなかったトラブルが全国的に起きる恐れもある。
このため、地デジへの完全移行まで3年となる今夏から、総務省と放送業界は地デジ受信機の普及率アップに向けた取り組みを抜本的に強化する。NHK・全民放の放送で文字スーパーやロゴを挿入するほか、毎日の番組終了時には「お知らせ」画面を放映する予定だ。
地デジを見るには、現在2万円程度のチューナーを買うなどの必要がある。生活保護世帯などへの普及をどう進めるのか。総務省は今夏までに支援策をまとめるが、どの程度の所得水準の視聴者を対象にするのか、議論は分かれそうだ。対象者に配るものも、現金、クーポン券、チューナーの現物などの案が浮上しているが、財源が必要になる。
( → 朝日新聞 2008-04-20 A )
( → 朝日新聞 2008-04-20 B )
だいたい、メーカー自身、そんなに生産するつもりはないはずだ。たったの三年間だけ、毎年 千万台を生産して、その後は、需要が一挙に縮小して、売上げがほとんどない、という状況になる。巨額の生産設備が、たったの数年で無駄になってしまう。そんな馬鹿なことをする経営者はいないだろう。
となると、多大な生産設備を投入することは無理で、そこそこの生産しかしないはずだ。仮に、多大な生産設備を投入した会社があれば、HDでぽしゃった東芝のように、あとで多額の減価償却費の負担を迫られ、多額の赤字を生み出すことになる。馬鹿げている。だったら、何も生産しないでいる方がマシだ。(東芝のHDと同様。)
だから、結局、多大な生産設備が投入されることはありえず、したがって、わずか3年で全世帯に普及させることは無理だろう。生産設備そのものがないのだから。
こうして、「3年後に全世帯への普及はしない」ということが判明した。
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さて。それでも政府は建前にこだわるので、「3年後にアナログ停波」という方針にこだわるだろう。
ただし、それでも、問題はないはずだった。これまでは「地方で部分停波」という方針だったから、その時点で、混乱が起こり、「全国停波は無理だ」と判明したはずだからだ。
しかるに、今回の方針により、混乱は「一部の地方都市」でなく「全国いっせい」という形で混乱が起こることになった。これが今回の方針の意味だ。
ま、毎度のことながら、政府というものは、こういうものである。
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ただし、悪口ばかりを言っていても、仕方ない。そこで、
「お利口な方法」(アナログ停波を大幅に遅らせること)
をお勧めしたいのだが、すでに提案されているし、どうせバカに言っても無理だろう。だからかわりに、バカ向けに、それなりの策を提案する。二つある。次の(1)(2)だ。
(1) 補助金投入による、地方の部分停波
特定地方で先行実施する。ここまでは以前の方針と同じ。ただし、チューナー台の補助金を与えることにする。たとえば、こうだ。
「3カ月早く実施してください。そうすると、その地方では、チューナー代の補助金をたくさん上げますよ。どうせ3カ月後には停波なんだから、3カ月ぐらい早くてもどうってことないでしょう? いやなら、いやでもいいですよ。そのかわり、チューナー代は上げませんよ」
私が知事だったら、この提案に乗りますね。というか、応募する県が殺到するはずだ。ま、3カ月でなく、2カ月か1カ月でもいいですけどね。どうせ、混乱が起こることを確認するだけなんだから。それで多額の金が入るのなら、こんなにありがたいことはない。
( ※ 金は、生活保護世帯などのチューナー代になる。)
(2) (地方別ではなく)局別の部分停波
上の(1)の提案は、当り前ふうだった。もうちょっと、独自の提案をしよう。こうだ。
「(地方別ではなく)局別に部分停波する。たとえば、日本テレビ系とフジテレビ系だけを先行して停波する。その分、その局には、お金をたくさん上げる。(あるいはCM枠を増やす。その分、他局のCM枠を減らす。)」
この方法だと、(1)と違って、「チューナー代の補助金」というコストがかからない。また、実行も容易である。
もうちょっとひねくれた案だと、次のこともある。
「民放全体を先行して停波する。ただし、期間は1週間のうち3日間だけ」
期間の設定は、別でもいい。「1週間のうち3日間だけ」でなく「1週間のうち2日間だけ」でもいいし、「1カ月のうち1週間だけ」でもいい。とにかく、こうやって、先行的に実施する。
で、「駄目だ」と判明したら、停波をずっと延期する。(どうせ延期するに決まっているのだが。そのための手順を設定するわけだ。 (^^); )
ともあれ、以上の(1)(2) のようにすれば、混乱は回避できるだろう。(「延期」が可能になるからだ。)
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さて。もし「延期」ができなかったら、どうなるか? 「テレビが見えない」という問題が起こるが、それだけではない。次の問題が起こる。
1.「NHKテレビを見ていない人々がNHK受信料を取られる。国家規模の詐欺」
2.「もしNHK受信料を取られないとしたら、NHKの方は収入が大幅減で、NHKの経営が揺らぐ」
3.「地震や台風などの災害放送が届かない世帯(高齢者世帯)が大幅に増えることで、ほとんど大量殺人に近いことを政府が行なうことになる、という非倫理的な問題が起こる」
このうち、最後の問題が、最も切実だ。仮に台風の接近などの警報を知らない高齢者が死んだりしたら、どうするのか? また、地震や津波の警報が届かないようにするという状態を放置して、平気でいられるのか?
ま、「高齢者が大量に死んでもいいんです」という方針なら、それはそれで一案だ。しかしそれは、政府がオウムの麻原よりもひどいということだ。国民の精神は荒廃して、日本そのものが荒廃する。政府そのものが犯罪政府だからだ。
その結果、倫理を失った日本は暴走状態になりかねない。昔のニューヨークのハーレム街のように、秩序のなくなったメチャクチャ社会。……そうなってもいいんですかね?
「破れ窓」理論によると、小さな秩序の崩壊が進むと、街全体が荒廃する。日本がそうなってもいいんですかね?
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で、何が言いたいかというと・・・・
民放なんて、どうせくだらない番組ばかりだから、見られなくなってもちっとも構わない。だけど、NHKだけは、見られないと困る。受信料も取られるし。
だから、NHK総合だけは、アナログをずっと残すべし。ほぼ永続的に(あと50年ぐらい)残すべし。これが私の主張だ。
どうせ、1局分の電波なら、どうってことはないはずだ。このくらい、残しておいてほしいですね。私はそう強く主張したい。
( これが認められないのなら、みんなで受信料の不払いをしよう!

【 追記 】
興味深い参考記事があった。以下、引用。
“ 停波を予定している 2011年7月の時点は、全部で1億台強のアナログテレビ機をデジタル機に買換えるサイクルの中間点(最盛期)近くに位置しており、”
( ※ つまり、2011年7月の普及率は半分にしかならない、ということ。)
→ http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITs2000007042008&cp=2
“「一方で兆円単位の電波資源を創出し、その無期限使用権を無償に近い代価で事業者に割当てるために、他方で国民の一部あるいは全部が数千億円の一時支出を負担する」という不公平を生ずることになる。”
→ http://it.nikkei.co.jp/business/news/index.aspx?n=MMITs2000007042008&cp=4
( ※ だけど、後者の見解は、いかにもセンセーショナルだが、嘘である。事業者[テレビ局]だけが利益を得るのではなくて、デジタルテレビを見る視聴者もデジタルテレビによる利便性という利益を得る。ケータイの利便性もある。……だから、問題は、その利便性を強制的に購入させることの是非だ。たとえば、「パソコンは便利だから強制的に買わせる」とか、「自動車は便利だから強制的に買わせる」という形で、無免許の高齢者にも否応なく全員一律で購入させる。そして、「百万円の価値のものを 80万円で買わせたのだから、国民は全員、20万円の利益を得たことになる」……というのが、上記の経済学者の試算。で、そのせいで、医療費負担がまかなえなくなって、死亡するハメになっても、「そんなの関係ねえ」とほざくわけだ。……いやですねえ。経済学者の試算って。)
( ※ だから、大事なのは、経済的な損得ではなくて、「強制的に押しつける」ということの是非なのだ。そこの本質をわかっていないで損得計算する経済学者が多すぎる。……私はこれに命名しておこう。「押し売りの論理」だ。)
( ※ だいたいね。日本の成人男子の大半は、帰宅したってテレビを見る暇なんかないんですよ。デジタルテレビはあくまで女・子供向け。こんなもの、強制的に買わせないでほしいね。)
【 蛇足 】
今後の見通しを述べておこう。
まず、次のことが起こると予想される。
「2009年の2月17日、アメリカの地上波アナログテレビ放送が停波することが予定されているが、実現不可能とわかり、再延期する」(実は 2006年に設定されていたのが、すでに延期済み。今度また再延期するわけだ。)
これを見て、何でも「米国にならえ」の日本政府は、さっそく真似をする。「自分が最初にやるのはやだ。米国のあとでなくっちゃ」と思って、「米国が実施するのを見守る」ということにして、2011年の実施を延期する。
これが私の見通し。これなら政府も名分が立つ。「米国の真似」と言えば、錦の御旗だ。読売新聞あたりが「米国の真似をしよう」とキャンペーンを張るだろう。 (^^);
つまりね。「大量アナログ破壊」という旗を振ってから、あとになって、「あれは間違いでした。米国が認めたから、私も認めます」というふうに、方向転換するわけだ。日本政府のお得意技。 (^^);
[ 補足 ]
※ 特に読まなくてもよい。
そもそも、アナログ廃止の目的は何か? それは、【 追記 】 でも述べたように、「利便性の向上」である。あいた電波枠を使って、デジタルテレビやケータイで利便性を高めることだ。
しかし、この名分は、かなり眉唾である。
2011年〜 2017年のデジタルテレビやケータイの利用率は、急激に上昇するはずがない。電波が急激に足りなくなるわけでもない。アナログが永続するのは困るだろうが、アナログの電波枠があくのが 5年ぐらい遅れたって、どうってことはない。いきなり電波をすべて使い切るはずがないからだ。
どうも、実施論者は、「アナログ廃止を5年遅らせる」というのを、「アナログ廃止を永続的にやめる」と勘違いして、インチキ計算をしているようだ。(「アナログ廃止をしなくても、すでに地デジはかなり実現している」ということを忘れて、地デジの利便性を計算しているようだ。)
アナログ放送の完全停止を延期するのが最善の方法だと思っています。
2011年7月24日にアナログ放送は一斉停止を目指すというのは、無意味な背水の陣をしいているように見えてしまいます。
タイムスタンプは下記。 ↓