2008年04月19日

◆ 老化と遺伝子


 老化の本質は何か? 老化を防ぐにはどうすればいいか?
 老化の意味を遺伝子的に考える。 ──

 「老化とは何か?」については、定説がないが、おおむね、次の三つの説がある。( → Wikipedia
  ・ 老廃物(リポフスチン等)が細胞に蓄積されて機能低下を起こす。
  ・ 遺伝子のエラーが蓄積する。
  ・ もともと遺伝子的にプログラミングされている。(テロメア)

 歴史的にはおおむね、この順序で説が登場したようだ。

 ──

 では、私の見解は?
 たぶん、上の三つのいずれも成立するのだろう、という気がする。いずれも間違いだとは思えない。つまり、それぞれ別個の理由で、「老化」という現象が起こる。逆に言えば、「老化」の原因は一通りではない。いわば「病気」の原因が一通りではない、というようなものだ。
 ただし、このくらいなら、誰にだって言える。本項でわざわざ書くほどのこともない。

 ──

 ここで、私は、新たな発想をなす。それは、前々々項のあたりで記述したことに基づく。
 “ 遺伝子は、個体の「誕生」のときに作用するだけでなく、個体の「生存」のときにも作用する。”
 “ 個体はたえず部分的に生み出されている”
 “ 生物の本質は、「生きること」である。「生きること」とは、「個体の各要素が絶えず部分的に誕生している」ということである。そのために、遺伝子は作用する。”

     ( → 生物と遺伝子 (その2)

 さて。このように「遺伝子によって部分的に誕生すること」が、永続的に続くわけではない。年齢の上昇とともに、しだいに衰えていくだろう。そして、そのことが、「老化」であると思える。
 だから、こう言える。
 「老化とは、『生きること』つまり、『遺伝子によって新たに誕生しつつあること』が、しだいに衰えていくことである」
 「老化とは、『生きる性質(または能力)』がしだいに衰えていくことである」
 「老化とは、死にしだいに近づきつつあることである」


 ──

 このことは、16歳ぐらいの若者と比べると、わかりやすい。16歳ぐらいの若者は、おおむね、第二次性徴が終わりかけつつあるころである。このころの肉体はとても若々しい。肌もピチピチだ。だが、よく考えてみると、このことは不思議だ。なぜなら、犬などの動物では、16歳ぐらいになると、ヨボヨボの老犬である。なのに、なぜ、人間は 16歳ぐらいでピチピチなのか?
 もし肉体というものが、生まれたときから同一ものであるとすれば、犬であれ人間であれ、16年もたてば、古びた肉体であるにすぎない。16年も使用した革ベルトのようなものだ。ボロボロであろう。
 しかし、現実には、そうではない。肉体というものは常に部分的に生まれ変わりつつある。(前出項目。)
 特に、第二次性徴の時期には、肉体が急速に生まれ変わる。このことは重要だ。そして、このとき作られた肉体は、ほとんど新たな肉体だ。新たな肉体だからこそ、ピチピチで新鮮なのだ。たとえ16年も経た肉体であっても、その実質は生まれたてなのだ。
 つまり、ここでは、「若さ」とは、「16年しかたっていない」ということではなくて、「生まれたてだ」ということだ。このことに着目しよう。(犬と比べるとよくわかる。)
 
 逆に言えば、それ以後の大人は違う。30歳の肉体は、「16歳の肉体に比べて倍の年齢を経ている」のではない。「16歳のころには生まれたての肉体だったが、30歳のころにはできてから14年ぐらいたっている」ということだ。意味がまるで違う。
 それでも、30歳のころでも、それなりに「部分的に生まれ変わる」ということは続いているから、それなりの若さを保てる。

 しかし、50歳や60歳になると、違う。「部分的に生まれ変わる」という能力が劇的に低下する。「年数が増える」のではなく、「部分的に生まれ変わる」という能力が低下するのだ。
 つまり、「老化」とは、「古びる」ということではなくて、「部分的に生まれる能力が低下すること」なのだ。……これは決定的に重要なことである。

 ──

 一昔前では、人々はかなり早く老けてしまった。60歳ぐらいでヨボヨボになり、腰が曲がることが多かった。しかし現代では、60歳ぐらいでは元気かくしゃくとしていることが多い。一方、江戸時代以前では、40歳ぐらいで早くも老けてしまうことが多かった。
 こういうことは、栄養状態で説明されることが多い。たしかに、栄養状態が悪いと、老化は進むものだ。なぜか? 組織が古びるからではなく、「生まれ変わる」能力が衰えるからだ。

 ──

 以上のことから、老化については、次のように結論できる。
 「老化とは、個体が部分的に生まれ変わる能力が全般的に衰えることである。それは、遺伝子そのものが損傷するからというよりは、遺伝子の作用の能力が全般的に低下するからだ」

 もちろん、遺伝子そのものがエラーを起こすこともある。たとえば、白髪とかシミとかはそうだろう。癌もそうだろう。しかし、それだけではない。遺伝子のエラーが起こらなくても、遺伝子の作用そのものが全般的に低下していく。そして、それは、全身的なものなのだ。特定の遺伝子が弱まったからその遺伝子の作用が低下するのではなく、全身の生命作用が徐々に弱まったから、それぞれの遺伝子はどれも働きが弱まっていく。
 白髪をなくすためなら、その白髪の毛根の遺伝子を修復するだけで元通りになるかもしれない。これは遺伝子エラーの修復だ。
 しかし、皮膚の単純な老化を防ぐには、皮膚の遺伝子だけを治そうとしても駄目だ。なぜなら皮膚の遺伝子はエラーを起こしていないからだ。また、テロメアなどの問題もあるまい。皮膚を若々しくするためには、むしろ、全身の生命力を活性化した方がいい。たとえば、運動をしたり、睡眠を取ったり、栄養をとったり。……これが私の説から出る帰結だ。

 ──

 結論。
 老化については、大別して、二通りの説がある。

 (A)局部説
 老化は局部的な異常だ。老化を起こしたその部位に、老化を起こす原因があった。その原因を探ればいい。何らかの原因が見出されるだろう。その原因を排除することで、老化を阻止することができる。

 (B)全身説
 老化は全身的な活性低下だ。全身的な活性低下ゆえに、各部位で「生まれ変わる能力」が低下して、老化となって現れる。特定の原因などはないのだから、特定の原因を排除しようとしても無駄だ。それよりは、全身の活力を高めるように、運動・睡眠・栄養を改善する方がいい。

 …… この二通りの説があるわけだ。そして、後者の説を出したことが、本項の意義だ。



 [ 付記 ]
 すぐ上に述べたこと(局部説と全身説)の違いは、「西洋医学と漢方医学」の違いに似ている。
 西洋医学では、悪化した部位を局所的に調べようとする。漢方医学は、全身的な機能低下を改善する。
 一般に、急性疾患には西洋医学が適し、慢性医学には漢方医学が適する。
 この違いは、経験的に走られてきたが、理由は判然としなかった。ただし、その理由は、本項を読めばわかるだろう。

 (どういうことかは、いちいち解説しない。自分で答えを出せるはず。)
 (ヒント:「老化」を「慢性疾患の機能低下」に置き換えるといい。)

 [ 余談 ]
 すぐ上のことを転用すると、老化防止のためには、漢方薬を服用するといいかもしれない。とは言っても、病気でもないのに、普通の漢方薬を服用しても、有害だろう。かえってバランスが崩れかねない。
 そこで、普通の人は、ちゃんとした健康的な食事を取ることが、漢方薬を服用することに相当する。これは「医食同源」という発想でもある。まともな食品は、まともな肉体を作るための構成要素である。とすれば、インスタント食品なんかを食べるべきではないのだ。まして、さまざまな食品添加物など、問題外だ。
 → 食品添加物
 → 最大無作用量
posted by 管理人 at 23:55 | Comment(0) |  生命とは何か | 更新情報をチェックする
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