しかし、そういう記事のほとんどすべては、嘘八百である。(たとえば、ゴルフGT TSI を「高出力・低燃費だ」と推奨する記事。) ──
こういう嘘記事の典型的な例は、前にも示した。
http://openblog.meblog.biz/article/45391.html#comment
(「ディーゼル」という項目のコメント欄。)
引用すると、次の通り。
「ベンツのディーゼルはすばらしいから、みんなでこれを買おう」なんていうふうに書く記事が出るだろうが、とんでもないことだ。ベンツなんて、しょせんは図体がデカくて重たいから、こんな物を買うと、かえって炭酸ガスは増えてしまう。ベンツなんて、いくら新技術を使っても、図体がデカいから、燃費は悪い。一方、最新型の軽自動車だと、図体が小さいから、実用燃費がリッター 17キロぐらいのものがある。(数年前の軽自動車はもっと悪いが、最新型のミラなどだと燃費がよい。)
ネットで調べるとわかるが、ベンツのガソリン車がリッター7キロぐらいで、ディーゼルが9キロぐらい。
これが事実なのだが、マスコミは、「ベンツは新技術だから燃費がいい。だからベンツに乗りましょう」などと勧める。嘘八百。
──
もう一つ、気づかれていないが、指摘しておこう。それは、ゴルフGT TSI というやつだ。これは、マスコミで大変もてはやされている。次のように。
「小排気量のエンジンで、ターボチャージャーとスーパーチャージャーを双方使ったことで、燃費と高出力の双方を両立させた」
こういう記事が、山のようにあふれている。下記を参照。
→ Google 検索「ゴルフGT TSI」
あるいはまた、自動車雑誌では、名だたる自動車評論家(徳大寺某やその他有名評論家)が、有名自動車雑誌で、大々的に称賛している。専門家やメーカーは、みなゴルフのエンジンを称賛している。
しかし、これは嘘である。「真っ赤な嘘」ではないが、「上手な嘘」だ。実質的には「真っ赤な嘘」と同然なのだが、形式的にはうまく罪を言い逃れている。(上手なペテン師。……決して正直者ではない。)
そのわけを、以下に示す。
──
そもそも、「燃費と高出力の双方を両立させる」ということは、原理的に非常に難しい。よほど高効率になる技術を使わないと駄目だ。
しかるに、「ターボチャージャー」という方法は、昔から知られているが、あまり有効な方法ではない。おおむね、次のことが経験的に知られている。
「ターボーチャージャーだと、カタログ燃費は少し良くなるが、実用燃費は悪くなる」
「スーパーチャージャーだと、ロスが新たに発生するので、燃費はかえって悪化することが多い」
要するに、昔からある技術を使った使ったぐらいで、燃費がどんどんよくなるのなら、どこのメーカーだって、どんどんそれを採用しているはずだ。だから、常識的に言って、これで燃費が急によくなるなんていうはずはありえない。……ま、ちょっとはよくなる可能性もあるが、たいして差はないはずだ。
この点についてかねて疑問に思っていたので、私の友人に問い質してみた。彼はまさしく、上記の宣伝に載せられた口である。つまり、もともとゴルフを持っていたのだが、ゴルフの新車に1〜2年乗ったあとで、メーカーの大々的な宣伝に載せられて、すぐに GT TSI に買い換えた。そして私に自慢した。「燃費と高出力の両立」と。
で、最近また会って、彼に訊いてみたら、返事はこうだった。
「ちょっと馬力を楽しめるが、燃費はほとんど変わらない」
つまり、少しは燃費がよくなったのかもしれないが、加速を楽しむから、その分、燃費が悪化する。結果的には、燃費は前とほとんど変わらない。
彼の場合は、まったく同じルートを通勤のために使っていて、同じくゴルフに乗っているから、燃費の比較にはうってつけだ。その結果が、こうである。
( ※ つまり、「燃費も出力も、ともに向上する」というようなことはない。たしかに前よりは少しだけ効率は向上しているが、出力を楽しめば、燃費は良くならない。燃費を良くすれば、出力は良くならない。両立ではなく、片方だけ。また、目立った差はない。ちょっと良くなっただけ。しかも、この点については、留保が必要だ。 → 後述 ★ を参照。)
──
さて。以上ではただ一つの例であるから、もっとサンプル数を増やすことにしよう。そこで、ネットで次の語で検索する。
「ゴルフ ユーザー」
すると、最初に出るのが「carview」というサイトのユーザー報告だ。これによると、ゴルフGT TSI は、リッターあたり、おおむね 12キロ程度らしい。
一方、ノンターボのゴルフだと、もうちょっと悪いようだ。(10キロ程度。)
この意味で、「従来タイプよりは燃費がよくなった」というのは、あながち嘘ではない。(その意味で、真っ赤な嘘ではない。)
しかし、である。比較のために、次の語で検索する。
「プレミオ ユーザー」
すると、最初に出るのがやはり「carview」というサイトのユーザー報告だ。これによると、プレミオの燃費は、リッターあたり、おおむね 14キロ程度らしい。だったら、ゴルフよりもずっと燃費はいい。
では、その意味は? こうだ。
「ゴルフGT TSI は、従来型のゴルフよりは、燃費が向上している。しかし、その理由は、ツインチャージャーという新技術を使ったからではなく、古いゴルフの燃費が悪すぎただけだからだ」
比喩的に言おう。
これまでテストで 30点ばかり取っていた鈍才が、あるとき急に、テストで 50点取れるようになった。そこで「私はこんなに頭がよくなりました」と自慢する。しかし、それは、その人が頭がいいということを意味せず、それまでが馬鹿すぎたということを意味するだけだ。
私が思うに、ゴルフGT TSI の燃費がよくなったのは、新技術を使ったからではなく、エンジン設計全体が新しいからだ、と思う。新しいエンジンならば、燃費がよくなって当然だ。そうなるように設計するのだから。
つまり、燃費がよくなったのは、ターボなんかは何の関係もないわけだ。単に新世代になったから、効率が向上しただけである。自社の旧製品よりは良くなったが、他社の新製品と比べれば、さして向上はしていない。 …… ★
──
上記の見解を補強するために、さらに次のことを示しておこう。
(1) プレミアム・ガソリン
ゴルフGT TSI は、燃費がよいといっても、プレミアム・ガソリンを使っている。これでは、ちょっとインチキをやっているようなものだ。
一般に、レギュラーからプレミアムガソリンに変えると、燃費が5%ぐらいよくなって、値段が 10%ぐらい高くなる。で、プレミアムガソリンを使うという条件で、「燃費がよいです」と自慢しても、それはちょっとインチキだろう。
ちなみに、プレミオは、レギュラーガソリンです。燃費の金額で言ったら、ゴルフよりはずっと節約できる。
(2) 乗り心地
友人の説明によると、ゴルフGT TSI は、従来型に比べて、乗り心地が悪いという。(高出力のせいか、省エネのせいかは、定かでないが。)
一般に、乗り心地を悪化させてもいいのであれば、燃費をよくすることは可能だ。そのためには、転がり抵抗を少なくするために、固いタイヤを使えばいい。いわゆる「省エネタイヤ」というのを使うと、固くて空気圧の高いタイヤになる。すると、乗り心地は悪化するが、燃費が5%ぐらい改善する。
だったら、ゴルフGT TSI にしなくても、単に「省エネタイヤ」にするだけで、燃費向上の効果が出る、とさえ言える。いちいちウン十万円の金を払って、ターボとスーパーチャージャーをつける必要なんかないのだ。
さらに言えば、燃費改善の効果は、年間でせいぜい2万円ぐらい、という人が普通だ。だったら、初期投資のウン十万円の金を回収するのは、とても無理だろう。
──
まとめ。
「新技術で燃費改善」
という言葉をメーカーは唱えるし、自動車評論家も唱える。それを丸写しした新聞記事もあふれている。しかし、それはみんな、嘘八百である。ディーゼルも、ツインチャージャーも、燃費改善の効果はたいしてない、と思ってよい。(燃費よりも出力の効果があるだけ。)
特に、「高出力と高燃費」というふうに謳っているのは、真っ赤な嘘に近い。たいていは、「自社のひどい車に比べれば、マシになっています」というだけのことだ。「馬鹿に比べれば利口です」というふうに言っているだけだ。ほとんどペテンである。
( ※ では、何が正しいか? 真に「省燃費」と言えるのは、トヨタのハイブリッド車の「プリウス」だけである。それ以外のほとんどすべては、いくら低燃費だといっても、たかが知れている。……たとえば、マーチやヴィッツはたいして燃費がよくないし、リッターカーで最善のフィットだって 17キロぐらいだ。軽自動車で最善らしいミラも同程度。……ま、お金があればプリウス、お金がなければフィットかミラ、というのが、普通の選択だろう。ゴルフやベンツなんて、とんでもない選択だ。少なくとも「燃費」を目的とするのであれば。……ま、「高級感のため」という選択ならば、意味はある。ただし、「燃費のため」「省エネのため」なんていう嘘をつくのは、やめてほしいですね。……自動車評論家は「自動車オタク」向けに嘘八百を並べて、自動車オタクの金を奪い取ろうとしているだけだ。業者ともちつもたれつ。業界内の論理。被害者は、客の方。)
【 参考記事 】
(1) 本田のハイブリッド
本田は 2009年にガソリン車との価格差を20万円以下に抑えた小型ハイブリッド専用車を世界で発売する予定。
→ http://www.nikkei.co.jp/news/main/20071219AT1D1907W19122007.html
※ ホンダはこれで「打倒トヨタ」をめざす、と大口をたたいている。
だが、現状についても、数年前には「うちが勝つ」と言っていた。
結果は惨敗でしたけどね。今度もそうなる? ……とはいえ、
勝っても負けても、ハイブリッドで頑張るのはいいことだ。
(2) GTR 対 911 ターボ
「GTR 対 911 ターボ」という話題では、雑誌記事があふれているが、外国の記事もある。下記。
http://www.edmunds.com/insideline/do/Features/articleId=123940#28
要旨:
「私はポルシェターボを持っている。ポルシェはあらゆる点で最高のスポーツカーだ。だが、GTR に比べると、時代遅れに見えてしまう。あれこれと少しずつアラが見えてくるし、少し遅い」
この記事、なかなか有益だった。日本の自動車雑誌の記事だと、「300キロを出したのがすごい。ポルシェだけだったのに、GTR もやった」というふうな、スピード競争みたいな記事ばかりで、それ以上のことはほとんど書いていなかったが、上記の英文記事だと、ポルシェとの比較がよくわかる。
【 関連項目 】
→ ゴルフ・ターボの省燃費
http://openblog.meblog.biz/article/1194299.html
→ 輸入車の燃費
http://openblog.meblog.biz/article/1205533.html

学生時代に乗っていたアルト(エアコン無し)は、
リッター当り23〜25km走りましたし、
先日まで乗っていたユーノスロードスターは、
リッター当り14km走りました。
結局、軽くないとダメって事なんでしょうね。
みんな買い替えのコストって度外視しますからねえ。
確かにタイヤの転がり抵抗低減やエンジン単体の出力一定での燃費向上、空力向上、駆動系摩擦低減で、燃費を良くすることは出来ます。その中でも、対開発努力=コストという点では、軽量化が一番影響するのです。
極端な例ですが、(特に日本ユーザの重要度が高い)車内騒音にユーザが寛大になってくれれば、車内騒音対策をしないことによる軽量化→燃費向上が図られ、それによるコストダウンも得ることが出来ます。
また道路状況や、ドライバーの運転の仕方も大きく燃費に関わってきます。実はこちらの方が絶対効果量は非常に大きい物だと思います。
アメリカの田舎道など直線道路がひたすら数十Kmも続く道で、定常速度運転をすれば、劇的に燃費は良くなります。
東南アジア諸国でよくやられているような加減速が激しい運転をすると、燃費は劇的に悪くなります。日本のドライバーでも、高速道路で私が定常運転をしているのに、抜きつ抜かれつで私の前後を行き来する車や、無駄にブレーキを踏む車(事故されるよりはマシですが)によく遭遇しますが、それも燃費には悪いです。マナーの良い長距離トラック運転手などは、燃費向上はもとより自身の体力低減も含め、定常運転をしていますよね。
自動車業界の技術に携わる私としては、技術向上による燃費貢献は続けていかなければと思います。しかし、現状では、マクロで見たユーザ側の努力が、一番手っ取り早く、低コストで、劇的に世界全体の実際の燃料消費量の低減が図られるはずです。そのあたりに政府ももっとお金を使い、世に広めてくれたら良いと思う今日この頃です。
そうですね。といっても、口で言ってもわからないのが普通の人ですから、ここは一発、「燃費メーターの搭載」を義務づけるのが一番いいかも。プリウスについているやつ。
これを見て燃費を減らす運転を努力するので、プリウスはどんどん燃費が良くなる。
燃費メーターがプリウスの秘密だった?
http://allabout.co.jp/auto/japanesecar/closeup/CU20051123A/index.htm
日産の可変クランクは燃費と高出力を両立させそうですが。
次のシルビアで使う噂ですね。
誤;ゴルフGTI TSI
正:ゴルフGT TSI
上記ではないかと思います。ご確認をお願いいたします。
また、燃費バカには、プリウスよりも”普通の”軽自動車が一番ではないかと私は思っています。
小さい、軽い、我慢すれば4人乗れますので。
ご指摘ありがとうございました。修正しました。
半分ずつの両立という意味ですね。それは、おっしゃるとおりですけれど、メーカーは最初からそう言えばいいのに、「ターボの方がかえって燃費が良くなる」なんていう嘘をつくから、まぎらわしくなる。燃費だけなら、ターボなしの方が上です。
なお、コスト的には、ターボは割に合わないと思います。同じ形式のV6なら、2リッターも3.5リッターも、エンジンの製造コストはほぼ同じだから。(売値は違いますが、製造コストはほぼ同じ。自動車業界の内輪話ですけれど。……これをバラすと、自動車会社に恨まれるかも。 (^^); )
なお、「大排気量のエンジンの方が重い」とは言えなくて、同じ形式なら小排気量のエンジンの方が重いことも多々あります。ボアが小さいと、エンジンブロックが厚くなるので。
だけど直4なら、ターボもありでしょうね。高出力を狙うなら、V6にするわけにも行かないので。(ただしその場合、ちゃんと「高出力」と言ってほしい。「省燃費」なんて言わないでほしい。)