2007年06月02日

◆ 人類の直立歩行:樹上説


 人類の直立歩行について、「樹上説」ともいうべきものが現れた。類人猿が樹上生活をしているうちに、直立するようになった、という説。根拠は、オランウータンの一部が、樹上で枝の上を歩いて生活している、というのが観察されたこと。 ──

 記事を一部、引用する。
 ヒトの特徴的な行動の二足歩行が、地上でなく樹上で始まった可能性があることを、英バーミンガム大などの研究チームが発見した。オランウータンの行動観察から突き止めた。
 研究チームは1年間、インドネシアの森に暮らす野生のオランウータンの行動を観察。断面積4平方センチ未満のたわみやすい枝の移動時には、腕でバランスを取りながら二足歩行していたのが約22%で、四足歩行の約16%を上回っていることが判明。残りは枝にぶらさがって移動していた。断面積20平方センチより太い枝では、四足歩行が移動手段の約80%を占めた。
 研究チームは「生活のほとんどを森の中で過ごすオランウータンにとっても、二足歩行は便利な方法だ」と指摘する。
 ▽濱田穣・京都大准教授(霊長類形態学)の話 「ヒトと類人猿の祖先は樹上で二足歩行を獲得した可能性が強まり、ヒトへの進化の過程の定説の見直しを求める意見が強まるのではないか。」(毎日新聞 2007-06-01
──

 私としては、この説を強く支持する。

 (1) 反・草原説
 草原説には、かねて反対してきた。「新たな環境に進出すると進化が起こる」ということはない。「新たな環境に進出すると、旧種は絶滅する」とうだけであって、「新たな環境に進出すると、新種が出現する」ということはありえない。魚が陸に上がれば、両生類になるのではなく、魚が死ぬだけだ。猿が草原に出れば、猿が直立するのではなく、猿が肉食獣に食い殺されるだけだ。

 (2) 樹上説
 樹上説の場合、旧種の環境で進化が起こった、ということになる。これについては、賛成する。
 実際、十分に、考えられることだ。というのは、大きくて重たい類人猿が、枝にぶら下がれば、自然に体は直立する。そのまま足を枝につける形で、直立が最適である。
   四足歩行 → 直立
 という移行が、なだらかになされるのは、樹上だけであろう。
 このようなことが長く続くと、骨盤も変化して、身体構造が変化し、直立が可能となる。
( ※ ここまでは報道の通り。)

 (3) 直立徐行説
 なお、樹上説のミソは、「直立」は「直立歩行」ではなく「直立徐行」を意味していた、ということだ。別に、速く歩く必要はない。樹上なのだから、徐行できるだけでいい。(ハトが地上を徐行するのと同様だ。)
 この点は、学説には記していなかったようだから、私としては、強く主張したい。「直立徐行」説。……これが私の説(南堂説)だ。
( ※ 記事では「(枝の上で)歩く」となっているが、「よちよち歩く」の意味だろう。これを私は「徐行」と呼ぶ。)
( ※ 「直立徐行」が記事の説と違うのは、「直立走行はしない」ということ。理由は、次の (4) )

 (4) 水生説
 水生説(アクア説)というのもある。これは「人類は水辺で進化した」というもの。十分に根拠がある。論理的には強い説得力がある。(ただし、トンデモ扱いされていて、学界では公認されない。学界は草原説にこだわる。草原説の方が、よほどトンデモなのだが、学界というのは頭が古い。)
 さて。水生説との関係はどうか? 私としては、今回の新説に基づいて、次のように主張したい。
 「樹上で直立徐行をしたあとで、水辺で直立歩行をするようになった」

 単に直立歩行をするだけなら、(樹上はちょっと無理だが)、別に水辺でなくてもいい。ただし、草原で直立歩行をすると、肉食獣に食われてしまう。そこで、対抗策が必要だ。それは、水辺でのみ、可能になる。
  (i) いざというときに、水中に逃れることが可能。多くの肉食獣は水が苦手である。(特に猫科は。猫科には怖い大型肉食獣が多い。だから、水が有効。)
 (ii)小型の肉食獣(オオカミ)には、道具(棍棒など)で対抗できる。ただし、そのためには、道具の使用が必要だ。道具は、草原では必要ないが、水辺では必要だ。貝を割って食べるとか、水生動物を採集するとか。また、水生動物を食べると、動物食になり、高脂肪になるので、(脂肪のかたまりである)脳を発達させるのに有利である。……というわけで、「道具の使用と脳の発達」は、いずれも水辺でなされたと考えられる。そして、その後、「棍棒の使用」を通じて、草原に進出できるようになった。しかも、その時点では、直立歩行もうまくできるようになっていた。
 
 まとめ。
 従来は、草原説だった。すなわち、
 「猿が草原に進出したから、猿が直立した。そのことで手が自由になったから、道具を使えるようになり、脳が発達した」
 と。……これは、「環境の変化が進化をもたらす」という説だった。
 しかしその説だと、「草原に進出した猿は肉食獣に食い殺される」というふうになるはずだ。だから、「環境の変化が進化をもたらす」ことはない。
 新たな環境は、不適者の滅亡をもたらすだけであり、適者の発生をもたらさない(はずだ)。

 そこで、新たに、次の二段構えの説が考えられる。
   ・ 樹上徐行説 (樹上で直立徐行するようになった。)
   ・ 水生説    (水辺で、直立徐行から、直立歩行へ。脳の発達も。)

 こうして直立歩行(直立走行)ができるようになったあとで、草原にも進出できるようになった。私はそう考える。

 [ 付記 ]
 私の説で一番肝心なのは、次のことだ。
 「人類の進化において、直立歩行はたいして重要性はない」

 直立歩行は、オランウータンでもゴリラでもチンパンジーでもできる。鳥だってできる。また、手を使えることなら、リスでもできる。つまり、
  「直立歩行 → 手の発達 → 道具の使用 → 脳の発達」
 というシナリオは、成立しない。
 進化の理由としては、直立歩行なんて、ほとんど意味はないのだ。正しくは、(直立したあと)腕を使ったから脳が発達したのではなく、脳が発達したから腕を器用に使えるようになったのだ。
   → 脳のホムンクルス

 ※ 論理的に考えてもわかる。「手を使うから脳が拡大する」というのだと、運動野ばかりが拡大して、感覚野(つまり思考する脳)は拡大しないはずだ。運動が得意だが思考力のないスポーツ選手みたいになるはずだ。
 ※ さらに言えば、「よく使う部分が進化する」というのは、ほとんどラマルク説に近い。非科学的。

 ──

[ 余談 ]
 鳥類を見よう。カラスは鳥類の中では抜群に脳が発達している。ただし、手をもたない。手なんかなくても、十分に脳を発達させることが可能だ。
 ひょっとしたら、人類が絶滅したあとで、カラスが鳥人となって、地上を支配するかもしれない。(百万年後にはあり得るかも。人類の歴史なんて、30万年ぐらいでしかないのだから。)



 私の進化論のサイトは、下記。
http://hp.vector.co.jp/authors/VA011700/biology/index.htm
posted by 管理人 at 18:43| Comment(1) | 生物・進化 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「樹上生活によって体の構造が二足歩行に適したものに進化した」という学説はこれまでもありましたが、二足歩行自体が樹上生活で作られたというのがこの新説の要ですね。

「樹上生活をしていた人類の祖先が気候変動によって草原に投げ出された」とする従来の説だとナックルウォークをする類人猿が四足歩行になるだけという気がします。現人類の体は四足歩行がほぼ不可能なくせに移動能力は四足歩行動物にまったくかないません。草原に出る前に他の哺乳類を圧倒できるだけの知能、コミュニケーション能力と道具を扱う能力を身に付けたということですね。

ただ二足直立を重視するのはどうでしょう?二足直立はクマやプレーリードッグなどかなり多くの動物が行います。ハムスターは二足で立って手を器用に使います。恒常的に二足で歩くことによって初めて「槍を構えて走る」ことが可能になるわけで、直立と歩行の壁は相当大きいのではないかと思います。

カラスの知能については、最新の日経サイエンスで「肉食動物が倒した獲物のおこぼれにあずかるためには肉食動物の行動を読まなければばならない。また彼らの特性を知るためにちょっかいをかけたりする好奇心旺盛で遊び好きの性格が形成された。」という内容が載っています。クジラ類の知能はコミュニケーション能力からきていると思いますが、さてホモ・ルーデンスはいかにして誕生したのでしょう。
Posted by tubird at 2007年06月02日 22:43
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ