2007年01月22日

◆ 「康熙字典」の「熙」

 朝日の字体が康熙字典にもとづく文字になるという。ここで、「康熙字典」の「熙」には、「煕」という異体字もある。(前者は14画、後者は13画)
 どちらが正しいのか? ──

 もちろん、どちらか一方が正しいということは、本来はありえない。これは正しいか否かの問題ではない。ただの異体字の問題であるにすぎない。使われ方の問題だ。
 一般的には(日本でも中台でも)14画の「熙」が使われ、13画の「煕」はあまり使われないという。これはただの頻度の問題だ。ただし歴史的経緯から言うと、13画の「煕」は「現代標準」に対する「昔の標準」の位置を与えられて、「本字」というような扱いとなる。

 一方、パソコンではどうか? 最初は13画の「煕」だけがあって、のちに14画の「熙」が追加された。そのせいで、13画の「煕」の方が若い番号が割り振られて、標準的な扱いになっている。それに影響されたせいだろうが、ATOK でも MS-IME でも、「こうきじてん」は 13画の「康煕字典」と変換される。(つまり、現代の標準的な字体[14画]の方が表示されない。)
 これはちょっと困ったことだと言える。ま、普通は、見た目ではあまり差がないので、いちいち気にしなくてもいいだろうが、細かくこだわる人だと、14画の「康熙字典」を「こうきじてん」で単語登録しておいた方が良さそうだ。(13画の方は「こうき」から漢字変換することで出せる。)

 ただし、本来ならば、ATOK や MS-IME が「康熙字典」を「こうきじてん」で出せるようにするべきなんですけどね。ま、ATOK や MS-IME というのは、国語辞典のかわりにするには、あまりアテにならないものです。
 なお、ブックシェルフの国語大辞典や、大辞林でも、13画の方を使っている。これも、ATOK や MS-IME と同じ事情かな。……書籍版の方は未確認だが、たぶん 14画だろう。

 この問題は、辞書編集者を含めても、あまり広く知られてはいないようだ。一応、注意しておいた方がいいだろう。

 ※ 2006年までなら、こんな些末なことをいちいち気にするまでもなかった。略字か正字か、という大問題だけを気にすれば良かった。しかし 2007年になると、大問題の方は解決されたので、ここに述べる些末なことも話題となるわけだ。

 ※ 似たような些末な話題としては、人名漢字を略字体で書くか正字体で書くか、という問題もある。人名漢字には、JISに略字と正字の双方が含まれている場合もある。たとえば、「堯 槇 遙 瑤」など。これらを、略字体で書くか正字体で書くか? 法律的には、どっちでもいいんですけどね。現実的には、「名前では略字、普通の文章では正字」というのが妥当かも。例。「遥香ちゃん/遙かなる高峰」。(ただし名前でも、戦前の名前は、正字が当然。)
posted by 管理人 at 18:29 | Comment(3) |  文字規格 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
〉 書籍版の方は未確認だが、たぶん 14画だろう。

辞書とは異なりますが、高校の『世界史』の教科書や参考書では「煕」が使われています。
清の皇帝は「康煕帝」ですし、編纂したのも『康熙字典』です。
普段書くときは、面倒だと思いながらも教科書どおり「煕」を使っていましたが、「熙」の方が標準なんですね。
Posted by カミルス at 2007年01月28日 09:05
> 編纂したのも『康熙字典』です。

失礼しました。『康煕字典』ですね。
Posted by at 2007年01月28日 09:07
私が高校時代に使った世界史の教科書では、14画の方でした。昔の教科書を引っ張り出して調べてみた結果。(この教科書は山川出版社のもの。)

 ま、いろいろあるのでしょう。
Posted by 管理人 at 2007年01月28日 10:35
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