2006年11月10日
◆ バイオエタノール
バイオエタノールを推進せよ、という趣旨の記事があった。(朝日・朝刊・経済面 2006-11-10 )
「国内でも、コメでエタノールを生産すればいい。コメ余りでも、コメをエタノールにすることができる。ただし、コストが問題だ。だから政府は補助金を与えよ」
という趣旨。 ──
朝日というのは何につけ、やたらと「補助金を出せ」とばかり言う。まったく、コスト感覚がない。「金は天から降ってくる」という主義なのだろう。「その金は国民の財布から出ていく。たとえば、増税されるか、健保や年金などで給付される金が減らされる。そういうことに気づかない。経済面に記事を書く記者が、経済観念ゼロなのだから、呆れてしまう。
まず、穀物でエタノールを生産する、というのは、コスト的に割に合わないだけでなく、エネルギー的にも収支が良くない。下手をすると、穀物生産のために投入したエネルギーが、穀物生産から回収されるエネルギーを下回るかもしれない。アメリカでさえその危険があるのだし、日本ではいっそうひどいだろう。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/business/story/20050607106.html
それに比べて、他の方法では、コスト的にもエネルギー収支でも、割が合う。
たとえば、微生物やシロアリを使う方法。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20060216304.html
もっと有望なのは、セルロースによる方法。
http://hotwired.goo.ne.jp/news/technology/story/20060208304.html
セルロースとは、何か? 農業廃棄物の利用だ。
「トウモロコシの実を取ったあとの茎や葉、木くず、スイッチグラス[ロッキー山脈に自生する多年生植物]などの農業廃棄物」
「現在のエタノール製造コストは、原料がバイオマスの場合2〜3ドルだとすると、コーンスターチ(トウモロコシの澱粉)の場合1ドル7セントになるという。」
──
なお、政府や朝日は、「バイオエタノールの国内生産」にこだわるが、地球的に見れば、どこでバイオ燃料を生産しようと、効果はまったく同じである。正確に言えば、国内生産の方が、エネルギー収支が悪い。たとえば、ブラジルで燃料を生産して、日本に燃料を運ぶのは、タンカーで運ぶだけだから、効率がいい。一方、ブラジルで農業廃棄物を大量に集めて、その農業廃棄物を日本まで運んで、さらに工場まで陸送すると、そのエネルギーは莫大なものとなる。運送エネルギーの方が多くなりそうだ。
「バイオエタノールの国内生産」を主張する首相や新聞社は、エネルギー収支の観念がかけている。善意によって悪をなそうとしている。「愚者」という言葉がぴったり。
──
では、日本では、バイオ燃料の生産は、まったくメドが立たないか? そうでもない。日本にもともとある農産物を使う、という方法がある。
たとえば、サトウキビ滓や稲藁や雑草(草刈りの廃棄物)などがある。これらをゴミ工場で処理するよりは、バイオ燃料にする方がマシだろう。(小量ならば肥やしにしてもいいが、大量だと余る。)
特に有望なのは、アブラナのような植物だ。これを「連作障害の回避」のために使うと、いったん食用オイルを一番搾りで取ったあとに、二番絞りのオイルを工業的に取ることができる。(ヘキサン抽出という。ベンジンで残留オイルをきれいに抜き取るわけ。)最後に残った滓はセルロースとして利用して、ここからも燃料を取る。
この場合は、「連作障害の回避」が目的だから、アブラナの収益はゼロ同然でも構わない。その副産物としてバイオ燃料が取れるだけだ。
一方、「米からバイオ燃料を取る」というのは、多毛作(二毛作)になるので、連作障害が起こる。それを避けるためには、肥料や農薬を大量にぶちまける必要がある。有機農法とは正反対だ。国民の肉体が農薬まみれになるようなものだ。馬鹿げている。
また、多毛作でないただの転作だとしても、大量の肥料を投入する必要があるらしいので、コスト的にもエネルギー的にも割に合わない。莫大な肥料を投入してまでエタノールを作って、何かいいことがあるんでしょうかね? ただの官僚的な、数字のつじつま合わせでしょう。
結論。
バイオ燃料を得るには、エネルギー収支や農業生産などについての、多角的な視点が必要である。「コストが合わなければ補助金を出せばいい」というような単純な発想では済まないのだ。広範な科学的評価が必要なのだ。
素人がろくに調べもしないで「金を出せ」などと主張すると、金を出して環境を破壊するだけのことだ。その例が、上記の朝日の記事。
素人はいい加減な記事を書く前に、ちゃんと勉強しなさい。少なくとも、同じ新聞社にいる科学部の人に校閲してもらいなさい。すぐに指摘してもらえるはずだ。
──
[ 付記 ]
そもそも新聞記者は、「記事について無知ならば事前にネットで調べる」ということぐらいは、やってほしいものだ。最低限の常識。
たとえば Wikipedia で「バイオ燃料」や「バイオエタノール」の記事を読むと、これらの記事は短いが、「アルコール燃料」へのリンクがあるので、こちらを見る。そうすると、詳しい情報を得る。「エネルギー収支」などの概念も説明されている。
また、バイオエタノールよりは、「バイオディーゼル」の方が環境改善の効果が大きい、ということもわかるはずだ。ガソリンをエタノールにしても、たいして効果がない。1の悪が 0.1 の悪になるぐらいだ。一方、バイオディーゼルならば、1000 の悪が 100の悪に減るぐらいの、劇的な改善がある。率ではなくて絶対量で、劇的な改善がある。
もともときれいなものを、さらにきれいにしても、効果はあまりない。もともと汚いものをきれいにしてこそ、意義があるのだ。
例。きれいな水道水をさらに浄水器できれいにして飲んでも、気休めぐらいの効果しかない。しかし雑菌がウヨウヨしている泥水なら、簡易フィルターでちょっと浄水するだけで、劇的な効果がある。
朝日や政府がどちらに当てはまるか、わかりますね? 愚劣。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
《 洞察 》
マスコミはやたらと嘘ばかりを書く。その理由は? 彼らが悪意ゆえに国民を洗脳しようとしているのではない。単に無知だからだ。無知ゆえに、自分が嘘を書いていることに気づかないのだ。── ここでは「虚偽を真実と見なす」という錯覚がある。その錯覚ゆえに、虚偽を真実と述べて、世間に錯覚をふりまく。病原菌を振りまくように、おのれの無知・誤解を世間に伝染させようとする。
その根源は? おのれの無知を理解しないことだ。「無知の知」がないことだ。
そのまた根源は? 「自分は利口だ」と自惚れていることだ。自惚れゆえに、「自分は無知だ」と気づかない。……そのことは、朝日には顕著である。 (^^);
以上のようなことは、人間性の本質と関わる。ライブドア事件と同様ですね。おのれについての盲目。それが根源だ。
何事であれ、世間の狂気があるところでは、人間性の本質が関わる。そこを見抜くことが大切だ。
ひるがえって、たとえば、「検察の国策捜査が問題だ」というような主張は、あくまで利害関係などばかりにこだわっているせいで、物事の本質を見抜けない。検察は、単に組織的な利害ゆえにライブドアを摘発したのではなく、心理的な錯覚ゆえにライブドアを摘発したのだ。ここでは、人間性の本質が関わる。
こういうことを理解しないと、物事の本質を見抜けない。
( ※ ライブドア事件における人間性の本質は → 10月11日の説明(ブログ) )
【 関連項目 】
→ 第二世代バイオエタノール
この記事へのコメント
コメントを書く
過去ログ
