2006年10月20日

◆ 少子化の数字


 少子化が進んでいることを統計的に示す数字として、出生率がある。この数字が非常に低下している。(1.3ぐらい。毎年どんどん低下している。)

 このことをそのまま信じると、統計の嘘にだまされる、という話がある。次の本に書いてある。
 → 統計数学を疑う なぜ実感とズレるのか? ( Amazon の書籍ページです。) ──

 これはどういうことかというと、晩婚化が進んでいる時点では、統計上の出生率が低下する、ということだ。
 晩婚化が進んでいる最中では、若い女性はなかなか結婚しないで、あとで出産するつもりでいるので、実際に出産する数が毎年減る。一方、30歳以上の女性は、すでに結婚して、すでに出産を終えているので、これ以上は出産しない。若い女性は「あとで出産するつもり」だし、30歳以上の女性は「もはや出産済み」だ。かくて、若い女性だけ見ても、30歳以上の女性だけ見ても、出産する数が減る。
 かといって、国全体で出産する量が減るわけではない。単に出産する年代が毎年上がるだけだ。それまでは24歳ぐらいで出産していたのが、30歳ぐらいで出産するようになる。それだけのことだ。とはいえ、統計数字だけを見ると、その過程では、毎年の出産数が減少する。
 だから、統計上に現れた「出生率の低下」は、「晩婚化が進んでいる途中」という時点では、実際よりも過大に表示される、ということだ。

 このことは、もっともである。
 実は、私も同じことを考えていたのだが、これほど明確には理解していなかった。漠然と同趣旨のことを理解していただけだった。ただ、同趣旨のことは理解していたから、どこかで書いた覚えもある。で、「泉の波立ち」を検索してみたが、どこにも書いていなかった。残念。  (^^);

 というわけで、このことを紹介ついでに、書き留めておく。

( ※ あとで思い直したのだが、もうちょっと定量的に考えた方がいいようだ。統計上の歪みがあるとしても、それを補正する量は少なめだろう。補正しても、1.3 が 1.4 に上昇するほどのことはないだろう。 1.3 が 1.31 〜 1.34 になるぐらいだろう。晩婚化の影響なんて、その程度である。たいしたことはない。少子化が進んでいるという大枠には、あまり関係しそうにない。……とすると、本書の説明も、ちょっと誇大すぎる感じだ。「統計の嘘」の嘘、という感じですかね。 (^^);

 ──

 [ 付記 ]

 上記で紹介した本は、そこそこ面白い。最初の方に、統計の嘘という話題があり、上記の少子化の話もその一例。他にもいくつか面白い話題があり、「これは買いだな」と思ったが……
 そのあと読んでみると、「統計の話」というので面白いのは、冒頭のあたりだけでした。全体の2割ぐらい。あとは、割と平凡な話が多い。

 後半には「景気回復の数字と実感はなぜズレるのか?」という面白い話題がある。内容はともかく、話題は面白い。
 この話題には、「ぎょっ」としましたね。というのは、私が今執筆中の本と、同じ話題だから。「先に書かれたらやばいな」と思った。 
 しかし、よく読んでみたら、問いだけがあって、答えがない。

 Q 景気回復の数字と実感はなぜズレるのか?
 A わかりません。

 という感じですね。本当は、「わかりません」とは書いていないが、まともに答えていなくて、はぐらかしていて、いつのまにか別の話題に移っている。どうせ書くなら、「わかりません」とはっきり書けばいいのに。
 つまり、「統計数字に嘘がある」という指摘はするのだが、「真実は何か」ということは書いていない。

 では、なぜ? それは当り前です。その真実は、統計の問題ではなくて、マクロ経済学の問題だから。この本の著者は、マクロ経済学を知っているわけではないから、マクロ経済学の真実を書くことはできない。

 というわけで、冒頭だけは面白いけれど、後半は羊頭狗肉。この本もまた、「統計数字でだます」わけではないにせよ、「タイトルでだます」タイプの本ですね。

 でもまあ、罪は浅い。内容を読んでみると、嘘は書いていない。たいていの経済学書は、嘘のオンパレードだが、この本は嘘がない。むしろ、他人の嘘をうまく指摘してもいる。なかなか良い本です。「優」ではないが、「良」です。
 とはいえ、嘘はないけれど、真実もない。「優」にはなれない。

 では、真実は? それは、私の次の本を読めばわかります。だから、今回の本を読むことは、「問題提起」という形で、そこそこ役立ちます。
 「景気回復の数字と実感はなぜズレるのか?」という話題をめぐって、今回の本を読んで、「ああでもない、こうでもない」と理屈をひねったすえ、「とうとうわからずじまいだ」という不消化感を、たっぷりと味わうといいでしょう。
 で、その後に、南堂の本を読むと、「なるほど、そうだったのか!」と膝を叩くでしょう。そのとき、「わかった! ユーレカ!」と叫びたくなるでしょう。
 その快感を味わうためには、今のうちにたっぷりと不消化感を味わっておくと良さそうです。「わからない、わからない、知りたい」という気持ちが強ければ強いほど、あとになって、「わかった!」と感じたときの喜びは強くなります。
posted by 管理人 at 19:17| Comment(0) | 科学トピック | 更新情報をチェックする
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