2006年10月07日
◆ ソニーの充電池
ソニーの充電池に欠陥がある、ということが話題になった。では、なぜ、ソニーの商品にひどい欠陥が生じたのか?
「ものづくりの能力が落ちているからだ」という意見もある。では、本当にそうか? 韓国や中国のメーカーはこんな事故は起こしていないのだから、ソニーのものづくりの能力は韓国や中国のメーカーよりも劣るレベル(旧ソ連のレベル)まで落ちてしまったのだろうか? ──
もちろん、そんなはずはない。ソニーの技術水準が、韓国・中国・旧ソ連のレベル以下に落ちてしまった、ということはない。とすれば、「ものづくりの能力が落ちたから」という推定は、間違っていたことになる。
では、なぜ?
私見を言えば、技術のせいではなくて、経営のせいである。技術者の技術力が落ちたのではなく、経営者の経営方針が間違っているのだ。
その経営方針とは? 無理なコストダウンである。
かねて知られているように、ソニーは、優秀な製品を作る技術はあるが、コストダウンの技術はろくにない。すると、どうなる? 不況のさなかで、利益確保のために、無理にコストダウンをする。すると、コストダウンの皺寄せで、いい加減な工場生産をするようになる。
ここで、「現場の工員の質が落ちたからだ」と述べても駄目だ。現場の工員の質は、企業に所属するのではなくて、経営に所属するからだ。そもそも、現場の工員の質というのは、(薄給ゆえに)もともと劣る連中が多い。だから、そういうふうに質の劣る連中でもちゃんと生産できるようにするのが、経営の役割なのだ。
つまり、ここでは、経営の質が悪い。
多くの企業では、長時間残業やら、派遣社員やら、擬装請負やら、労働環境はどんどん悪化している。こういう状況で、「工員の質」云々を述べても、仕方ない。まずは、労働環境をまともにすることが先決だろう。そうしなければ、現場の生産の質が落ちるのは、やむを得ない。
となると、ソニーの問題は、ソニーに限ったことではなく、他者にも当てはまることになる。何しろ、キヤノンや他者だって、派遣や擬装請負がある(あった)からだ。
ソニーは、ことさら技術水準が低下したのではなくて、無理なコストダウンの歪みが現れた例の典型にすぎない。他社の場合、コストダウンの技術の蓄積が豊富なので、歪みが現れにくいだけだ。かろうじて、セーフになっている。しかし、このままずっとセーフになると思ったら、大間違いだ。質の悪い労働環境で働く人が多ければ、そこからは生産のミスが多く生じやすい。
ソニーの欠陥商品は、先触れに過ぎまい。このあと、また何度か、欠陥商品が話題になるだろう。そして、それは、無理なコストダウンがなくなるまで続く。つまりは、景気が真に回復するまで。──では、具体的には、何年後まで? ……ひょっとしたら、あなたが定年退職するころまで。
(あなたが契約社員や派遣社員なら、そもそも定年という概念もないかもしれないが。定年があるだけ、まだマシかもね。)
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