2006年09月17日

◆ ITバカ


 日産自動車が交通事故を激減させるための画期的な新技術を開発しているという。
 (1) 交差点で横から来る自動車をカーナビで警告する ( → ニュース
 (2) 酒を飲んだら運転できないようにする ( → ニュース
 
 なるほど、目的はすばらしい。しかし、馬鹿げた技術である。狙いが逸れているのだ。そもそも、「画期的な新技術を使う」というところが、根本的に狂っている。 ──

 では、どこが狂っているか? 

 (1) 交差点
 横から来る見えない自動車を、センサーで検知する、というところまではいい。しかし、カーナビなんかで警告したら、カーナビに目を取られたせいで、かえって事故が起こる可能性がある。これだったら、前方の凸面反射鏡をよく見ている方が、まだマシかもしれない。そもそも、こんな装置を装着していない車両が大半だから、ほとんど意味がない。
 まともな対案を示そう。それは、こうだ。
 「センサーで検知したら、交差点で赤ランプを点滅させて、双方の自動車を減速させる」
 これなら、カーナビへの無線通信なんていう高度なシステムは必要ない。単に赤ランプを点滅させるだけだ。コストだって大幅に低い。
 無駄なIT技術は不要だ。

 (2) 飲酒運転
 ストローで呼気を検知するということだが、ストローを使って検出を拒否したら、どうしようもない。まったくの無駄。
 比喩的に言えば、こうだ。
 銀行の入口に、泥棒チェック装置をつける。泥棒に、「あなたは泥棒ですか?」と尋ねて、泥棒は「はい」と答えたら、警報を鳴らす。 
 では、この泥棒チェック装置は、有効だろうか? 

 原則的に言おう。飲酒運転は、人間の意識による問題だ。つまりは「飲酒運転をしよう」「犯罪をしよう」という意識だ。この意識が問題となる。だから、いくら機械を設置しても無駄だし、罰則を高めてもほとんど無駄である。

 では、どうするべきか? 意識そのものを変えるべきだ。つまり、「飲酒運転なんかしたってどうってことないさ」という意識を変更させ、「飲酒運転はとんでもないことだ」というふうに実感させる。
 このことが目的となる。まずはこの目的を知ることが第一だ。この目的のために、さまざまな措置を取る。次のように。
  ・ 免許更新時や定期点検時には、飲酒運転の被害のビデオを聴取させる。
  ・ 料理店などでは、運転手に、同様のビデオの聴取を義務づける。(1分間程度)

 たとえば、被害者の肉体が裂けているビデオ。自動車が炎上しているビデオ。車が大破されたビデオ。妻や子供が悲しんでいるビデオ。……こういうのを見て、なおも「へっちゃらさ」と思う人はいないだろう。

 大事なのは、IT技術ではない。人間の心なのだ。人間の心を忘れて、技術の向上ばかりで対処しようとするのは、心なきわざである。

 ──

 ※ 本項は、タイトルに注意。「ITバカ」である。「日産はバカだ」ではない。
 この手のバカは、日産に限らず、多くの会社がやっている。技術のおもしろさばかりに目をとらわれて、自分が何をやっているか、わかっていないのだ。

 ※ 「ビデオ」というのは、「ビデオテープ」と限らず、「 Degital Video Disc 」を含む。

 ──

  【 追記 】

 飲酒の影響は意外に大きい。NHKの番組で、次の実験をやっていた。
 ビールをコップ一杯飲んで、三時間たって、実験する。本人は「まったくシラフと同様の感じです」と言って、酔っている自覚はない。で、模擬運転して見ると、……

 本人は正常に運転しているつもりだった。しかし、飲酒前と比較すると、チェックポイントを大幅に見落としていた。ちゃんと見ているつもりでも、ごく簡単に見える赤ランプを見えていない。

 なぜか? ここで興味深い結果がわかった。
 軽い飲酒後は、視野の中心部はよく見えるのだが、視野の周辺部は見えないのだ。つまり、前方の自動車に衝突することは避けられるが、横から近づくものが見えない。真っ正面に来るまで見えない。
 たとえば、横からバイクが割り込んだり、歩行者が入ってきたり、追い越しした車が前に来たり、というとき、真っ正面に来るまでわからない。で、真っ正面に来て、あわててブレーキを踏むが、後の祭り。……というわけだ。

 重度の飲酒のあとでは、もちろん、正面に来たものもよく見えない。反応が鈍くなる。そのせいで、カーブなどでは、事故を起こしやすい。
 しかし、それだけではないのだ。「視野の周辺部が見えなくなっている」という点が、はっきりとした問題となる。

 さて。
 これはなかなか、教訓的である。なぜなら、酔っぱらい運転に限らず、多くの出来事で同様のことが当てはまるからだ。
 たとえば、ライブドア事件では、検察や世論は「不正経理」という真っ正面のこと(法律的なこと)ばかり見ている。そのせいで、それにともなう周辺的なこと(経済的なこと)が見えなくなっている。……かくて、「法律違反だから大々的に摘発せよ」という、馬鹿げた結論が出てくる。
 一点だけを注視して、全体像を見ることができなくなっているのだ。本当は、中心の狭い一点よりも、周辺の大部分の方がずっと広大であるのだが。

 今の世論は酔っぱらい状態だ、とも言える。 ふらふら

むかっ(怒り) 車(セダン)         バス
posted by 管理人 at 15:28 | Comment(4) | コンピュータ_01 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Posted by おむろ at 2006年09月18日 00:16
日経の記事は日産への批判としてはピンボケだと私は思いますね。何にもわかっていない。

たしかにコストカットの弊害はたくさんありますが、日産が販売不振の理由は別にあります。新モデルがないことです。端境期。

次の新車は公開済みで、今年の秋から続々出ます。マキシマ、アルティマ、セントラ、スカイライン。これらによって米国では急激に伸びるでしょう。

新型になったフーガはすでに米国で大人気ですし。

一方、記事で誉めているデザインは、さえないですね。上記の新車があまり売れないとしたら、デザインのせいでしょう。特に、豚の鼻。(インフィニティならば豚の鼻でないので大丈夫だが。)
Posted by 管理人 at 2006年09月18日 07:55
巷に赤電話が多数設置されていた昔から、
自動機械があるところ、人はその裏をかこうと一所懸命になります。
(電電公社の赤電話は、何とかしてタダでかけようと皆が努力するため、故障率・・・破壊率か?がダントツに高かったそうです)

ハイウェイドカードができれば、偽造カードが横行し、
道路公団の利権とメンツと大金をかけたETCは、強行突破や、車種のごまかしなど、通行料収入の減少に多大な貢献をしています。

最近の車には、車間距離を感知して自動的にブレーキをかける仕掛けもあるそうですが、
万年渋滞の首都高なんかでこれをやられては、渋滞に拍車をかけるうえに、ドライバーのイライラを増幅するだけです。
大型車に義務付けられたの速度規制装置だって、不正改造でバイパスされているものがかなりあるとか。
飲酒検知装置だって、その気になれば、ごまかすなんぞ、いとも簡単です。
ごまかせないように厳格にすれば、装置の値段が跳ね上がる上に、結局、どこかの業者が、装置が働かないようにする不正改造で儲けるだけ。

日本車は、昔から、愚にもつかない電子オモチャのアクセサリーが大好きで、メーカーやディーラーを儲けさせています。
「安全」なんて、本気でやったら車が売れなくなる事は、当のメーカーが一番良く知っていますから、メーカーの言う「安全」なんて、所詮、クルマのアクセサリーのひとつに過ぎません。

新車に、「ETCを標準装備」するなんておせっかいな話もあるそうですが、
それもこれも、チャイルドシートのように「お上」に義務化してもらって、クルマの販売単価を上げたいのが、メーカーの本音かもしれません。
Posted by 兼業主夫 at 2006年09月18日 08:27
追記を書き加えました。
Posted by 管理人 at 2006年09月18日 09:00
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