2006年08月01日

◆ 安全の失敗学

 流水プールの吸水口に女児が吸い込まれて死亡する、という事故があった。
 ガス湯沸かし器の不完全燃焼で死者が出る、という事故も発覚した。
 これらの事故をなくすには、泥縄的に対処するよりは、IT技術で網羅的に対処する方がいい。 ──

 過去の例を見れば、似たような事故は、他にもいろいろとある。
 流水プールにせよ、ガスの不完全燃焼にせよ、類例は多い。
 また、子供の遊具がこわれたせいで死者が出たり、エレベーターが壊れたせいで死者が出たり、六本木のビルの回転ドアに子供が挟まれて死んだ事故もある。
 こういうのは、死者が出ると大騒ぎになるが、死者が出る前のケガ人程度の事故なら、その何倍も事故が発生している。
 で、毎度毎度、死亡事故が発生してから、大騒ぎになる。今回もそうだ。政府は大あわてで、「全国の流水プールを点検せよ」と指示した。しかし、指示するのなら、事故が起こったあとではなくて、事故が起こる前でなくてはならない。

 では、事故を未然に防ぐには、どうすればいいか? IT技術をうまく使えばよい。こうだ。
 「死亡には至らないが致死的な事故について、網羅的に事故のデータベースを作る。」
 つまり、何らかの小事故があったり、命の危険のある故障などが発見されたら、「将来の死亡事故」を専門家の指摘で予測して、事故が起こる前にいっせいに点検するように処置する。
 たとえば、「危険箇所のデータベース」を電子政府が公開する。
 「プールの吸水口は、フェイルセーフができていないプールがあります。柵は用意されていても、柵がはずれたり壊れたりすると、死者が出る危険があります。これらのプールでは、フェイルセーフの措置ができるまでは、ただちに営業を中止してください。」
 このような指令を出す。と同時に、学校にも、「危険な流水プールには行かないように」と指示を出す。

 ポイントは、何か? 
  ・ 情報のデータベースを作ること (IT技術で)
  ・ データベースに入れる情報を作ること (実地調査)

 この双方だ。

 ──

 こういうことは「安全の失敗学」とも言える。失敗学は、過去の失敗例を教訓とするが、それと同じように、過去の事故を教訓とする。特に重要なのは、事故のデータベースを作ることだ。
 今回の流水プールの事故も、実は、似たような例は何年か前にもあった。そこから少しも教訓を得ていないのだ。喉元過ぎれば熱さ忘れる、である。だからこそ、事故のデータベースが必要となる。忘れっぽい人間に対して、記憶のできる機械を有効利用するわけだ。

 [ 付記 ]
 実は、それとは別に、根源的な対策も必要だ。そのためのアイデアが「フェイルセーフ」である。
 たとえば、今回の流水プールにしても、「根源的に人が吸い込まれないような仕組み」にすることが可能であった。流水プールは、単に水を吸い込めばいいのであって、人間を丸ごと呑み込むような危険な形で水を吸い込む必要はない。危険性のない形で同等の機能を実現することは、十分に可能だ。
 社会において「フェイルセーフ」の発想が欠けているところに、問題がある。
 「これがあるから安全だ」
 と人は思い込みがちだが、それは、
 「これが壊れたら危険だ」
 というふうになりがちなのだ。そのことに気づかない例が多いので、上記の多様な事故例が、何度も何度も形を変えて発生するわけだ。そのうち、あなたの家族も、被害に巻き込まれるかも。
posted by 管理人 at 22:56| Comment(6) | 安全・事故 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
南堂様、

単純な誤字の指摘です。

六本木のビルの観点(誤)ドア ー 回転(正)ドア
発想が書(誤)けている − 欠(正)けている

と思いますが、

以上です。
Posted by 原田 at 2006年08月02日 01:18
いつの世も、コストと安全はトレードオフの関係にあるようです。
今回のプール事故も、格子をプール壁に直接ボルト止めするのではなく、壁に、コの字型の金具を向かい合わせに埋め込み、その中に、格子を上から挿し込むようにしてはめ込み、さらにボルトで固定するような多重固定構造であれば、事故にはならなかったでしょうに。

民間企業(中小以外)では、最近ようやく、万一の事故のときの「コスト」を考えるようになってきたようですが、
安全に一番鈍感なのは、コスト意識すらない「お役所」であり、そこから入札や随意契約で仕事を請けた業者は、とにかく安上がりにするために安全を無視する・・・どころか、手抜きが横行する・・・傾向にあるため、いつも悲劇の種になります。

たとえば、国土交通省では、自動車の不具合情報を集めて公開していますが、
各地の自治体、せっかくインターネットサイトを開設しているのですから、地方の施設などに関するこういう情報サイトを作る事など、予算的にも、手間の面でも、簡単な事だと思うのですが・・・。
コスト意識は抜け落ちていても、面子だけは人一倍なので、直接自分のところに責任が及ぶかもしれない情報公開は・・・はたしてできるんでしょうか・・・?。
Posted by 兼業主夫 at 2006年08月02日 08:40
推測
 最初はボルトで留めてあった。
プール開きに備えて掃除をした。何年か前の掃除の時かもしれない。邪魔くさいからはりがねにした。ボルトをなくしてしまった。以前は事故もなかった。針金でいいんじゃないの。
Posted by gull at 2006年08月02日 12:09
なんで柵がひとつ外れたらそれっきりなんて施設作ったのか。

補修工事なんかで機械いじるときは、誰かが間違ってスイッチ入れても一カ所だけなら通電しないように二重に切るもの。(もちろん「スイッチ入れるな」の札も。)

「二重切り」といい、二重切りの考え方では命綱・安全策は最低二重が当たり前。

そんな目の玉飛び出る費用じゃあるまいし。今回の補償は「目の玉飛び出る」費用になるのは間違いないのに。
Posted by えむ at 2006年08月02日 19:49
ハインリッヒの法則のようなものですね。
1つの重大事故の背後には29の軽微な事故があり、その背後には300の危険があるという。
労働災害防止のための法則なのですが、別に、労災に限る必要はありませんね。基本的な考えは同じでしょうから。
大企業ならば、事故例や改善策等々、労災防止のための膨大なデータを既にもっているでしょうから、それを一般化して公開するだけで、強力なデータベースになりそうなものですが…
特に、東芝と三菱の全面協力があれば、ほとんど全方面網羅できるように思えます。
Posted by 鈴木淳 at 2006年08月02日 23:37
小泉の波立ちを毎日楽しみにしております。

科学技術振興機構(JST)では、科学技術分野のみ(列車事故も含まれます)ではありますが事故や失敗の事例失敗知識データベースを提供しております。
http://shippai.jst.go.jp/fkd/Search

このデータベースを利用するのも一手かと思います。ただし、検索がしづらく、認知度が低いのが難です・・・。もっと一般的にならないとダメかな。

(JSTの回し者ではありません ^_^)
Posted by hokano at 2006年08月03日 00:25
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