→ 恐鳥類と走鳥類
→ 走鳥類の位置づけ[修正]
→ 走鳥類とドードー
→ 鳥類の本質
→ 鳥類の系統樹
※ 上記の項目を書いたのにともなって、本項冒頭の記述を改めた。
以下では、走鳥類の進化について、余談ふうの話題を扱う。──
《 以下では、本項独自の話題を扱う。 》
読売の夕刊 2006-04-15 に「走鳥類の進化」という話が出ている。趣旨は、
「オーストラリアでは、地上には天敵がいなかった。だから、空を飛ぶ鳥が、地上に降りることができた。その後、体が大きい方が有利なので、体を大きくして、ダチョウのような大きな走鳥類になった」
という趣旨。
これはまあ、標準理論ではあるが、論理的には矛盾だらけである。
──
これは「走鳥類では翼が退化した」という標準理論だ。その矛盾を示そう。
(1)
「地上には天敵がいなかった」というのは、誤り。記事では、「大型肉食獣がいなかった」と述べているが、大型ではなくても肉食獣はいた。フクロオオカミ(タスマニアタイガー)、タスマニアン・デビル、キラーカンガルーなどである。
したがって、鳥が地上に降りたら、鳥はただちに食い殺されてしまう。「地上には天敵がいなかった」というのは、誤り。
(2)
「ダチョウなどの大型走鳥類ならば、小型の肉食獣に対抗できる」
という趣旨でならば、かろうじて、上記の誤りを避けることができる。しかし、そのかわり、「逐次的な進化」という説が破綻する。かわりに、
「小型の空を飛ぶ鳥 → 大型の走鳥類」
というふうに、一挙に進化の大ジャンプを生じることになる。自己矛盾。
かといって、
「小型の空を飛ぶ鳥 → 小型の走鳥類 → 大型の走鳥類」
という順を選べば、 (1) に矛盾する。
(3)
記事では「(翼を支えるための)竜骨突起がない」というのを、「進化」と呼んでいるが、そのような進化があったとすれば、少なくとも、竜骨突起の痕跡器官が残っているはずだ。しかしながら現実には、そのような痕跡器官はない。
ちなみに、「空を飛ぶ鳥 → 地上の鳥」という順でまさしく進化した実例は、別にある。それはペンギンだ。ペンギンは、竜骨突起がしっかり残っている。こんなものはペンギンには無用なのだが、痕跡器官のように退化することもなく、しっかり残っている。つまり、いったん形成された骨は、容易には消失しない。
( ※ 実を言うと、「翼の退化した鳥」というのは、まさしくある。ツル科のヤンバルクイナだ。地上性で暮らすので、足は発達しているが、翼は退化している。では、竜骨突起は? 竜骨突起は不要なので縮小しているが、しかし、それでもちゃんと竜骨突起は残っている。翼は退化しても、竜骨突起は消えないのだ。
→ ヤンバルクイナの骨格 )
──
以上のことは、
「空を飛ぶ鳥 → 走鳥類」
という順に矛盾があったことを示す。他にも、いくつかの理由で、この順は正しくない、と推論できる。
正しくは? 逆順である。つまり、
「走鳥類 → 空を飛ぶ鳥」
という順だ。最近の分子生物学(DNAによる進化の系統樹の順序)も、この順を裏付けている。また、トサカや足の形状なども、この順を裏付けている。
たとえば、走鳥類は、恐竜によく似た形状をしている。これはつまり、
「恐竜 → 走鳥類 → 空を飛ぶ鳥」
という順の進化があったことを裏付ける。
詳しくは、次のページを参照。
http://hp.vector.co.jp/authors/VA011700/biology/class_01.htm#30
【 追記 】 ( 2008-07-28 )
朝日新聞(朝刊・第三社会面 2008-07-28 )に、「鳥類の系統に新説」というタイトルの記事がある。そこでは、次の記述がある。
「遺伝子の塩基配列を比較することで、鳥類の系統関係にまつわる新たな考え方が明らかになった。米国を中心とする大規模な研究の結果が、米科学誌サイエンスに発表された。教科書やガイド本が書き換えられる可能性もある。以上は、朝日新聞の記事だが、実は1カ月前に、ほぼ同趣旨のことがネット上で報道されている。引用しよう。
鳥類の系統をめぐっては、共通祖先から最初にダチョウのような走鳥類が分かれ、次にカモやキジに近い仲間が分岐したことは、ほぼはっきりしている。
だが、その後は多くの種類が一気に分かれたらしく、……複数の説が混在している。(以下、略。)」
鳥の進化について、これまで科学的真実とされてきた通説を覆す研究結果が26日、明らかになった。米研究チームによる5年にわたる鳥類のゲノム解析で分かったもので、教科書の修正も必要になるとみられる。──
現在当然と思われている鳥類の分類や進化に関する認識の大半が誤りだった。
( → AFP BB News 2008-06-27 )
ともあれ、肝心なのは、朝日の記事である。その記事の趣旨は、「以下、略」の部分に書いてあるように、ハヤブサやハチどりやキツツキなどの進化の系統の話だが、それは本項とは別の話題だ。
本項の話題と関連するのは、記事の着色部である。つまり、
「共通祖先から最初にダチョウのような走鳥類が分かれ、次にカモやキジに近い仲間が分岐した」
という箇所だ。ここで示されたように、
共通祖先 → 走鳥類 → カモやキジに近い仲間 → 一般の鳥
ということが成立する。このことは、私が先に仮説として提出していたが、そのことがもはや学界で事実だとしっかり認定されている、ということになる。
なお、記事では、「カモやキジに近い仲間」というふうに記されているが、私の仮説では、さらに細分される。
走鳥類 → キジ → カモ → 一般の鳥
である。なぜか? キジにはトサカがあるが、カモにはトサカがないからだ。
この意味で、上記の順序は正しいとしても、次のように区分される。
走鳥類 → キジ → (カモ → 一般の鳥)
カモは、一般の鳥と同じ仲間であって、特に大きく区別されることはない。カモは、一般の鳥の仲間のうちで最初のものであるにすぎず、キジとはまったく別の仲間なのだ。
一方、キジとカモは明白に区別される。また、キジと走鳥類も明白に区別される。
なお、上記の記事では「共通祖先」という言葉が使われているが、これは「恐鳥類」であると私は推定している。その代表は、ディアトリマなどだ。
なお、恐鳥類の祖先は、恐竜の獣脚類であるらしい。
こうして、次のようにまとめることができる。
獣脚類 → 恐鳥類 → 走鳥類 → キジ → (カモ → 一般の鳥)
[ 補足 ]
初心者向けに、本項のポイントを指摘しておこう。ポイントは、次のことだ。
「鳥類の翼が退化して、鳥類から走鳥類が生じたのではない。恐竜の腕が退化して、走鳥類が生じた。その後、いったん退化した腕が、翼に発展することで、走鳥類から鳥類が生じた」
さらに細かく言うと、次のようになる。
「走鳥類からあとでは、最初、少しだけ飛べるキジ(ニワトリを含む)が生じた。だが、キジはまだ地上で歩行する方が主だった。その後、カモは、水上で泳ぐようになり、同時に、翼も発展させていった。こうしてカモから、さまざまな鳥類が誕生した」
【 関連サイト 】
本項は、下記ページの要点にすぎない。詳しい話は、下記。
→ http://hp.vector.co.jp/authors/VA011700/biology/class_01.htm#30
【 関連項目 】
基本は上記ページに記してあるが、その後に補足的な情報(新たな化石の発見など)を追加して整理したのが、下記項目。こちらもついでに参照してほしい。
→ 鳥類の進化
「〜〜の方が有利なので、○○を△△して〜〜〜」という説明がなされます。
適者生存という意味で、いろいろある中から有利なものが生き残っていくということは言えますが、もともと存在しない形質が、有利だからと言う理由で新たに生じることの説明がほとんどなされません。
そういう意味でも、「標準理論」には難点がありますね。
また、形状の類似を主たる根拠として系統樹が作成されるのですが、管理人様の書かれたように分子生物学的根拠や、更には実際に化石となっては残ることの少ない内臓その他のはたらき、生活様式などの要素も加味すべきではないかと思われます。
「学習」を行うことのない種の生物が生来持っている行動様式も、「本能」の一言で片付けられてしまいますが、その情報がなぜ生じたのか、どのように後代に伝達されているのか、系統的な理論が望まれます。
現代のニワトリ
http://img.x0.com/tori/photo/img144.jpg
最後のころの恐竜
http://www5f.biglobe.ne.jp/~takaki1/TEREX/newdino/newdinobanngai.htm
(前から6割目あたりにある、オビラプトルの画像)
──
※ ニワトリは走鳥類の仲間と見なせなくもない。
走鳥類 → ニワトリ → 空を飛ぶ鳥(特に、カモ類)
というふうに、かなりなめらかにつながる。
──
p.s.
けろ さんへの返事。
本能は物質と脳(心理)との関連があるので、ちょっと難しいかも。
でも、物質的にはホルモンだし、ホルモンと脳の関連だから、ある意味では単純。性ホルモンで発情する、というような具合。
人間はいつも発情しているようですけど。いつも性ホルモンが分泌されているのかな?
タイムスタンプは下記。 ↓