2005年08月16日

◆ 歴史(続き)

 ※ 前項の続きです。 ──

 前項の話を読むと、
 「2004JIS には空席がない」
 というふうに決まった理由もわかるはずだ。その理由は、こうだ。
 「もし空席があると、将来、正字が採用される可能性がある」
 たとえば、二点しんにょうの「辻」や「樋」など。さらには、上記の例で示した「 倦 僅 儲 兎 卿 厩 」など。これらが追加される可能性がある。
 すると、どうなるか? 
 「正字を追放する」
 という漢字テロが失敗に終わってしまう。と同時に、「過去の漢字テロで削減されたものを復活する」という形で、漢字テロを歴史的に断罪されてしまう。
 一方、空席を排除しておけば、漢字テロを批判することはできない。使用中である満杯の規格を使うしかないからだ。かくして、漢字テロは、修正されることもなく、支配者の位置を維持して、絶対的に君臨できる。

 というわけで、「漢字テロ」の成功と、「空席をなくすこと」とは、表裏一体のことなのだ。「漢字テロ」を成功させるためには、何が何でも、「空席をなくすこと」にこだわる必要があったのだ。いわば、「他の意見を封殺する」という形で。

 一方、私の提案(南堂私案)は、どうか? 「空席をなくすこと」には、こだわらない。なぜか? もともと問題のない提案だから、他の意見を封殺する必要はないからだ。他の意見を封殺する必要がないから、空席を残しておいても大丈夫なのだ。
 他の意見を封殺する必要があるのは、それ自体が問題だらけの規格である場合だ。そして、2000JISは、そうだった。欠陥だらけだからこそ、選択肢なしに強制する必要があり、そのために、「空席なし」という方針を取ったのだ。

 【 追記 】

 この漢字テロの規格(2000JIS)は、ほとんど採用寸前にまでいった。日本アップルは「2000JISを採用する」という方針さえ示した。日本アップルの言葉を引用すると、こうだ。

    「プロフェッショナルなDTPユーザー……そういうプロのユーザーと
    一般ユーザーの間は、ちょっと分けたいなと思っています。」
    「普通のユーザー…(は)…2000JIS。だけれど、プロ…小説家…(は)
    …広い範囲(17,000字形の独自規格)」

 こういうふうにしてアップルは、一般ユーザには 2000JIS だけを押しつけようとした。
 しかし、実際には、その方針の通りにはならなかった。なぜ? 「そんな馬鹿なことはやめろ。倒産するぞ」と私が強く警告したからだ。その文書は、下記だ。
   → http://hp.vector.co.jp/authors/VA011700/moji/code2002.lzh
     (圧縮ファイル)

 かくて、変人である南堂久史の勧告を受けて、アップルは「 2000JIS を採用する」という方針をくつがえし、CID フォントのヒラギノを提供することにした。こうして、「略字だけ」という漢字テロ派の主張は通らずに、「正字のある体系」であるヒラギノが一般ユーザーにも提供されたわけだ。

 ※ 今、アップルのユーザーは「ヒラギノフォントはすばらしい」なんて言っているが、本当は、そうはならないはずだったのだ。なぜなら、ヒラギノフォントには、正字も含まれていたからだ。一方、アップルとJIS規格委員会の方針は、「正字の撲滅」だったのである。
 ※ ゆえに、「アップルはヒラギノフォントを使えて、マイクロソフトよりもすばらしい。アップルはすばらしい」なんて唱えるのは、天に向かって唾をするようなものだ。アップルは、本当は、「略字しか使えない」という変な規格を採用するはずだったのだから。すばらしい規格どころか、とんでもない規格を採用するはずだったのだ。
 ※ つまり、本当ならば、アップルのユーザーは、(高価なヒラギノフォントを別売で買うプロユーザーを除けば)正字のない 2000JIS を使うはずだったのだ。そして、アップルがいったん 2000JISを採用したら、マイクロソフトがあとで 2004JIS を採用したときに、互換性のない二つの規格が並存して、猛烈な文字化けが起こるはずだった。それが本来の歴史の流れだったのだ。……しかるに、どこかの変人が、この流れに異を立てて、この流れを阻止したのだ。上記の文書によって。
posted by 管理人 at 20:23 | Comment(1) | TrackBack(3) |  文字規格 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
大変お世話になっております。
3年か4年ほど前、「つかむ」を漢字で書こうとして「掴む」と変換され、あれ、これは変だぞと思い、ネットで調べているうちに「文字講堂」にたどり着き、さらに「小泉の波立ち」にまでたどり着いてから愛読しております。
そして略字の事を知り、「こんな字が使えるか!辞書が引けなくなるではないか!」とばかりに可能な限り略字を使わずに今日まで文章を書いています(なので、「辿る」と漢字で書けません)。
「進陟」のように書き換えできる幸運な例以外は、どうすれば略字を使わなくてすむ言葉に言い換えられるか、悩み続けていました。「枢機卿」のような、書き換えも言い換えもできないし、カナにもできない場合だけ、仕方なく使っていました。カージナルとしてしまうのは、さすがに躊躇します。
そんな、これはどういう意味があるのかと時々考え込んでしまうような苦労が、あと数年、新フォントが普及するまでかと思うと、大変嬉しく思います。
どれほどの苦労があったのか想像もできませんが、本当にありがとうございました。
さらに言うと、私は今はMacユーザーです(買ったのは3年前)。本当に危なかったのだなと…もう、言葉もありません。
Appleは新フォントを採用しないかも知れませんが、まぁ、自分の書いた文章が大多数の目には普通の文字として見えるなら、仕方ありません。
Posted by 鈴木 淳 at 2005年08月16日 20:50
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