今回の漢字騒動では、「一点しんにょうの漢字が消えるか否か」ということが話題になっている。しかしこれは、根本的にピンボケの騒動だ。歴史的に見れば、論じるべきことは、正反対のことなのだ。 ──
歴史的に見よう。人々はこう騒いでいる。
「2004JIS(X0213:2004)が実施される」
しかし、本来ならば、このことはありえなかったのだ。なぜなら、2000年の時点で、こう決まるはずだったからだ。
「2000JIS(X0213:2000)が実施される」
この場合、どうなったか?
2000JIS では、新字体が追放されるのではない。正字体が追放されるはずだった。新字体の「辻」「樋」「榊」が追放されるのではなく、正字体の「辻」「樋」「榊」が追放されるはずだった。
その場合、どうなるか? 「正字を使えない文字コード」となる。つまり、漢和字典にあるような漢字は使えず、JISの規格委員会が勝手に作り上げた略字しか使えないようになる。すべてがそうだというわけではないが、「辻」「樋」「榊」を初めとして、多くの文字が追放されるはずだった。
その一覧は、たぶん、今回追放される新字体と同じだろう。すなわち、次のサイトの文字だ。
( → 参考サイト の「画像3」)
この冒頭の6字と用例を示すと、こうだ。
倦 (倦怠)
僅 (僅か)
儲 (儲け)
兎 (二兎を追う)
卿 (アーチャー卿の孫娘ダイアナ)
厩 (競馬の厩舎)
いずれも頻繁に使われる文字だ。これらが、正字とは異なる字体となる。当然、漢和字典では、これらの略字は掲載されていない。また、画数が変わるせいで、正しい正字を漢和字典で引くことも難しい。
要するに、「一国の漢字規格を破壊すること」である。それが 2000JIS の狙いだった。一種の「漢字テロ」である。
この漢字テロは、本来ならば、決定して、実施されるはずだった。なぜなら、反対者はほとんどいなかったからだ。本当は、いるにはいたが、いずれも文系の人ばかりで、コンピュータの知識が皆無だったため、「漢字を守れ」という声明を出す以外には、文字コードの規格決定の場で発言する人はほとんど皆無だった。
ただし、例外が、二名いた。(敬称略)
・ 「ほら貝」の加藤弘一
・ 「文字講堂」の南堂久史
この二名だ。あとのほとんど全部は、2000JISの擁護派だった。だから、本来なら、これに決まるはずだったのだ。漢字テロは、成功するはずだったのだ。権力の中枢を握っていたがゆえに。
しかるに、この二名だけが、獅子奮迅の努力をなした。そして、少しずつ共感者を広げていった。あげく、最終的には、次の妥協案に落着した。
「 2000JIS を決定する。正字を追放して、略字の支配する規格を定める。ただし、この規格を実施しない」
こうして、「略字優先の規格を名目的には決定するが、実質的には廃案と同じにする」という形で落着したのだ。そして、そのあとで、新たな「正字優先」の規格を模索することになった。
本来ならば、ここで、「正字優先のまともな規格」にするべきであった。その規格案は、ちゃんとあった。「南堂私案」である。ただし、これは私案である。これを採用するのは、略字派の名分が立たない。
そこで、「2000JIS を基本とした上で、部分的に正字を導入する」という形で、2004JISが制定された。このとき同時に、「空席がない」という問題も生じたわけだ。( → ブログの 2005年08月13日 )
──
以上が歴史的な経緯だ。
「一点しんにょうがない」なんていう騒ぎは、本来ならば、贅沢な悩みなのだ。ただの俗字が使えようが使えまいが、一国の国語にはほとんど影響がない。しかし、「多くの正字が使えない」という規格が定まったら、日本の国語は破壊されてしまう。そして、その漢字テロが、本来ならば決まるはずだったのだ。
たとえて言おう。「東京に原爆を落として、日本経済を破壊する」というテロリストがいた。そのテロリストを、加藤と南堂という二人の特殊工作員が、身を挺して妨害した。二人は心身ともクタクタになってしまったが、テロを妨害したおかげで、日本の安全は守られた。
ところが、事後に、文句を言う人が出てきた。「この二人が活動したとき、流れ弾が来て、おれの家のゴミ箱にボヤが出た。ゴミ箱に被害が出た。この莫大な被害を、どうしてくれる。みんなで声を上げよう。ゴミ箱にボヤを起こすような非道を、とっちめてやろう」
二人の特殊公務員は、「やってられんね」と嘆息した。しかし、「だったらテロリストの勝手にさせて、すべてを破壊してしまえば良かったのか」と反論したくなった。しかし、二人とも、そういうふうには言わなかった。もともと報われない仕事であることはわかっていたからだ。二人が求めていたのは、二人の栄誉ではなくて、社会の安全だったからだ。多くの人々から非難されようと、社会(国語)が守られれば、それでいいのだ。そこで二人は、多くの非難を甘受した。
──
※ 注釈。
ここでは「正字を擁護して立ち上がったのは、二人だけ」というふうに記した。これに対して、「いや、そんなことはないぞ。別の人もいたぞ」と言う人がいたら、どうぞ、名乗り出てほしい。
少なくとも、当時、加藤弘一と南堂久史という二人には、援護の手はまったく来なかった。批判の攻撃ならばさんざん来たが、「正字の擁護」の手はまったく来なかった。
なお、「正字の擁護」という感想を出した人なら、たくさんいる。多くは文系の人の感想だ。「正字が残った方がいいね」という感想だ。ただし、それは、文字の規格の決定には、まったく関係のない、ただの感想にすぎなかった。たとえて言うと、野球のチームで二つのチームが戦っている。一方のチームは選手が二人しかいなくて、他方のチームには選手が大勢いる。二人だけのチームには、観客席から応援はたくさん来たが、いっしょに戦ってくれる人は、一人もいなかった。
「いや、三人目に、おれがいたぞ」
という人がいたら、どうぞ、名乗り出てほしい。私には当時、まったく見えませんでしたけど。どこかにいたんでしょうかねえ。
→ 次項に続く
2005年08月16日
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過去ログ
以上の話を読んで、今日の人は不思議に思うかもしれない。
「漢字テロなんかが、どうして実施されかけたのか?」
しかし、この手のことは、珍しくも何ともない。非常に多くなされている。それは「粛正」だ。
・ ナチスによる、ユダヤ人の粛正
・ 毛沢東による、反共文化人の粛正
・ オウムによる、反対分子の粛清(ポア・坂本弁護士事件)
・ ブッシュによる、反民主主義者の粛正
いずれにせよ、自分の信じているものが絶対的に正しいと信じて、自分に反対する人々を粛正する。多数派が反対者なら、多数派を粛正する。とにかく、自分が権力を握っているのだから、自分の思うままだ。
この手の粛正が、正字に対してもなされたのだ。一回目は、1983JIS。二回目は、2000JIS。いずれも狂信的な略字主義者が権力を握り、正字をパソコンの世界から追放しようとした。自分の信じている理念のために。
もちろん、今現在だって、なされている。
「小泉による、反郵政改革者の粛正」
である。目の前でなされているではないか。誰もそれを不思議だとは思わない。「正しいことをやっているのだから当然だ」と思い込んで、権力者の独裁体質には目をつぶっている。
2000JISという漢字テロのときも、そうだったのだ。